依頼形
とある企業のコールセンターに電話をかけたときの体験談です。
「~でよろしいでしょうか」と言われて「いえ、それでは困ります」と答えると、びっくりされてしまいました。
「~でよろしいでしょうか」と質問されているのですから、答えは「はい」か「いいえ」です。そして私は質問されているのですから、どちらを答えてもいいはずです。
それなのにびっくりされる。これは非常におかしな話ではないでしょうか。
コールセンターあるある
実はこれ、コールセンターではよくある話です。
コールセンターでは「依頼形を使いなさい」と教わります。「~してください」では丁寧とはいえ、命令であることに変わりがないため、「~していただけますでしょうか」と言いなさいというのです。
※コールセンターによっては、「依頼形」という名称を使わないかもしれません。
そこで、そのように教わったオペレーターは、命令形の代わりに依頼形を使います。つまり、言葉上の形は依頼だけれども、意味としては命令のつもりで言っているので、「いいえ」と言われると、「えっ、そんなこと、教わっていない……!」とびっくりすることになるのです。
依頼形とは
依頼形とは、人にお願いをするときの言い方です。
人にお願いをするとき、相手が絶対に引き受けてくれないだろうことをお願いする人はあまりいません。さらに、これぐらいだったら引き受けてくれるだろうと思っても、相手が断りやすいように「~してもらえる?」と言う人が多いと思います。これが依頼形です。
その言葉に敬語をプラスして「~していただけますか?」「~していただけますでしょうか。」などとビジネスにふさわしい言葉づかいにします。
依頼形の本来の意味は
依頼形を使う本来の意味は、相手の主体性を重んじて相手の要望に沿うサービスを提供することです。
そういう想いで依頼形を使っていたならば、答えがYesであれNoであれ、考えを聞けてよかったと、まずは感謝の念が湧くはずです。しかし、感謝どころか言葉の意味も忘れるほど表面上の対応になってしまう人が、残念ながら中にはいます。
言葉の意味を考えることもなく条件反射のように話している人は、相手が同意できるはずがないようなことでも平気で言ったりします。
マナー講師を名乗る人のサイトを見ても、「依頼形を使うと柔らかくなる」「断られづらくなる」などと書かれていることがあります。
しかし、断られづらくなるのは結果であって、「こう言っておけば断られないはず」という目的で依頼形を使うのは、本末転倒です。
二通りの想定を
質問は、道で言えば分かれ道。大通りを99%の人が行こうと、そこに道があるなら小道を選ぶ人もいて当然です。質問したなら、答えは少なくとも「はい」「いいえ」の2種類を想定しておくべきです。
予め想定をしておくことで、どんな状況でも心にもゆとりを持って対応できます。
では、また。
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。