The Cure:Album07(ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head on the Door)
たぶん私がはじめてキュアーを見たのは、ローカル局(テレビ神奈川とか)の深夜の音楽番組で曲は『クロース・トゥ・ミー:Close To Me』だった。見ようと思って見たんではなくて、なんか偶然テレビを点けたら向こうからこっちに流れてきた。
イギリスのバンドの曲だと紹介されて、なんだか今まで見たことのない価値観のものがそこにあって、曲といい映像といいなにもかもがなんだか怖かった。音が不安になるほど少なくて、クシの歯を鳴らすような音を出したみたいな、こんな呪いの子守唄みたいな奇妙な曲を聞いたことがなかった。アメリカのビルボートトップ10 なんかの明るかったり、覚えやすいメロディーみたいな方向ではない、こんな音楽がこの世にあることをはじめて知った。
●クロース・トゥ・ミー:Close To Me
前のアルバム『ザ・トップ:The Top』のポップな方向をより進めたように見えて、はじめて聞いた感想は「別の世界が広がってる感じ」でした。頭の中で作った架空の世界ではなくて、生々しく現実に生きている感じがする。実際に動いて喜んだり泣いたり叫んだりしている感じがする。
それまで私の中では、甘いキャンディーというのがポップソングのイメージだったのが、口の中でピチピチと動き回るような奇妙な得体の知れない感じの、今まで持っていたポップソングのイメージを全く書き換えてしまったような曲が入ったアルバム。
「これぞキュアーっていう曲を一曲おしえて」と言われれば、私は『クロース・トゥ・ミー:Close To Me』をおしえる。閉塞感や危うい危機感があって、それを踊ってしまうようなポップソングに昇華している大好きな曲。
『クロース・トゥ・ミー:Close To Me』の歌詞には、アルバムタイトルの『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head on the Door』が出てきています。
●インビトゥイーン・デイズ:In Between Days
このアルバムのチャートをみてみると、オーストラリア(6位)、オランダ(3位)、ドイツ(15位)、イタリア(24位)、ニュージーランド(11位)、スウェーデン(24位)、スイス(14位)、フランス(6位)、イギリス(7位)、アメリカ(59位)でヨーロッパとアメリカで上位入り。
フランスとイギリスで10万枚以上売り上げでゴールドディスク。アメリカでは50万枚以上売り上げでゴールドディスクになってます。
この時期のキュアーのすべてのPVはティム・ポープであり、映像も恐ろしいほどにノリに乗っている。
この時期はキュアーの音楽ビデオ集の『Staring at the Sea: The Images』(アルバム1枚目から今作までの13曲のPVを収録)が出るタイミングで、なんとファーストアルバムのPVを3曲もあらためて作ったりしたのでした。
このアルバムからのPVは以下の太字の3曲です。
●ア・ナイト・ライク・ジス:A Night Like This
前作『ザ・トップ:The Top』はバンドとしての演奏がこなれてなかったが、今作ではメンバーそれぞれ持っているものが曲に出て、グルーヴ感(音楽を聴いて身体を動かしたくなる感覚=音楽を演奏する人が、本来のリズムから意図的にずらすときの「ズレ」)が出ている感じがする。
それでいて、音の層は増えていても引くとこはしっかり引いていて、楽曲としての鋭さは増している感じがする。この時のこのメンバーにしか出せない音を見事に形にした、奇跡的なアルバムと思う。
私が最初にキュアーを聴く人におすすめするのは、このアルバム『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head on the Door』(または『ウィッシュ:Wish(1992)』)です。
逆に言えば、大変残念ではありますが「このアルバムの曲を聞いてもDNAが躍動しない人は、きっとキュアーに向かない」と思われます。
『プッシュ:Push』という曲は、ライブで大盛り上がりの曲。
最後にこの曲のライブを、ティム・ポープが監督した『The Cure in Orange(1987)』の映像からどうぞ。