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11月1日-11月25日|イシイアツコ銅版画展

パリより、白昼夢の景色のような、夢と現実を行き来するどこか浮遊感のある銅版画作品が届きました。
こちらはフランス在住の版画家・イシイアツコさんの作品です。
此度ご縁をいただきまして11月1日より、書店売り場にてイシイアツコさんの銅版画作品の展示販売をいたします。

イシイアツコさんは文化人類学者である石井美保さんのお姉さん。
美保さんの著作の表紙や挿絵としてもおなじみで、随想に寄り添う素晴らしい作品を発表してこられました。

ふるえながらめぐりながれ、この世に現れては過ぎ去っていくもの。
ささやかで覚束なく、どこか不可思議でわりきれないもの。
『めぐりながれるものの人類学』
フランスのアトリエ
床板を剥ぐと美しいタイルがでてきたとのこと。
制作の銅版たち。小さいものは指先ほど。

また、非常に多作な作家さんでありまして、年間100点以上の版画を制作、フランス・パリを中心に、日本、オランダ、台湾、ベルギーなどで個展やグループ展など国を跨いでコンスタントに活動されています。

FRENCH TOUCHE というセレクトショップのクリスマス用のペインティング

これらの作品はエッチング、それにヘイター技法と呼ばれるローラーを使用する一版多色刷りなる技法で制作された銅版画。
アツコさんの銅版画の特徴としては、ベースにシンコレと言われる和紙をコラージュする技法を用いており、使用する和紙にも色を加えてカットしたり、印刷を施したりと過程を施されております。
また、エディションのついているエッチング作品ではありますが、それぞれの調子が微妙に違い、手仕事とシンコレが織りなした唯一無二の作品とも言えましょう。

此度の展示では、葉書サイズの小作品や新作交え多数揃います。
作品はその場でお売りしているものがほとんどですので、来る日により展示風景はさまざまに変化していきます。
それぞれの作品が、壁面で浮かび漂う様も楽しんでいただけましたら幸いです。


イシイアツコさんより、コメントをいただいております。

photo by lyndie Dourthe

パリで、銅版画。
1995年1月には、パリに引っ越すことも銅版画をすることも、全く知りませんでした。
神戸の真珠会社に勤めて2年が過ぎようとする頃で、静かに変化のきっかけをうかがってはいたものの、それがどんな形をとるのかは見当もつかなかったのです。でも、その変化が阪神淡路大震災という形で現れるとは、さらに想像外でした。
被災のショックとその後の混沌の数か月をなんだか解らないまま潜り抜け、気が付くと
「知らない場所で、したことのないことをしてみよう」と、「どこ」に行って「何」をするのかを探していました。そして、同じ年の11月にはスーツケースと鞄を持ってパリにいました。なぜフランスかといえば、大学でフランス哲学専攻だったためで、銅版画に関しては偶然出会ったとしか思えません。
無意識で不用意の怖いもの知らずが、準備体操もせず、プールに飛び込んだつもりが海で泳いでいることに気づいて、あららとびっくりしつつもどんどん泳ぎ続けて今に至ります。
幸いなことに、海はまだまだ広いので、どこまでいけるか泳ぎながら探検してみたいと思っています。
イシイアツコ

 

担当:原口


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