恵文社一乗寺店 6月の本の話 2024
こんにちは。書籍フロアの韓です。
6月の書籍売上ランキングと、おまけの本の話。
今月もよろしければどうぞお付き合いください。
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形づくられてしまった社会システムに縛られず、新しい生き方を探求する人々の問いと実践の物語を紹介するインディペンデント誌『新百姓』の編集長が語る歴史とプロセスをおさめた『新百姓宣言』が今月1位に。
さまざまな場面で資本主義の限界が垣間見える今、個々の人間が根本的に秘めている「つくる喜び」を大切にする創造性主義に注視し、新たな社会の仕組みや物事の見つめ方を提示します。現在、あらゆる場面や状況で勝手に組み立てられてしまった物事の位置づけと意味。生き方、暮らし方、働き方、世間に定められた枠組みにはまらず、ひとりひとりがより自由に「つくる」ことを楽しむために。
身近な範囲から生まれる創造の豊かさをあじわうための手引きとなれば幸いです。
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“おとうたん”のえちがわのりゆきさんと、愛娘にちちゃん、そして家族みんなの日常が、やわらかくやさしいタッチで描かれてた『センチメンタルおとうたん』が2位にランクイン。
にちちゃんの成長やおとうたんの愛情がたっぷりつまったエピソードは、ささやかだけどどれも大切な宝物。愛おしくて、思わずほろりとしてしまう素敵なエピソードは、読む人みんなをあたたかい気持ちにしてくれます。
書店フロアにて開催されている原画展も引き続き7月6日までご覧いただけます。そして来月末には、えちがわさんとにちちゃんによるサイン会&喫茶営業もありますよ!ぜひお見逃しなく。
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わたしたちが生きている地球、自然、その周辺を取り巻くすべて。ひとつひとつの小さな生命がときに集まり、ときに個々に在ることで常に新しく生まれつづける輪。その織に触れたときにあふれる未知の歓び、深い賛嘆。名著『センス・オブ・ワンダー』待望の新訳が、3位にランクイン。
カーソンの眼差しを辿り、3年という長い時間をかけ翻訳を手掛けたのは独立研究者・森田真生さん。書の前半では、未完である本作を森田さん独自の視線よりつなぎ直した翻訳を収録。後半では、森田さんが京都という地で子どもたちと共に季節を重ね、思考を反芻し、移り変わる風景を通し感じ取った驚異(ワンダー)をのびやかに綴った「そのつづき」おさめます。頭で知ることより、五感で感じること。人間の存在を超えるものに遭遇し、目を輝かせ胸を躍らせることの潔いうつくしさが、今ここに。仔細で美しい装画はイラストレーター・西村ツチカさん。
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『生きるための料理』の著者「たなかれいこ」による名エッセイ『たべるクリニック』が、手に取りやすい文庫版として待望の復活です。
著者が30年以上に渡り綴ってきた文章から、これからもずっと伝え続けたい、本当に大切な話68編を厳選して掲載された本書。 「お金では買えないもの」「田畑と体」「ヘアパーマの真実」「母の入院」等、10篇60ページ分が新たに加わりました。あたりまえの生きた本物の食べ物を、我慢しないで美味しく食べて、美しく健康になるために、誰でも簡単にできるヒントが満載。
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食を通し人、社会、文化を考える雑誌『大人ごはん』最新号のテーマは「料理がしんどい」。
仕事をしながら子育てをする女性たちの座談会「私たちの現実(と理想)」のほか、作家・絲山秋子さんの巻頭エッセイ、小説家・柚木麻子さんやスープ作家・有賀薫さんのインタビューなど。「料理をつくる」というそもそもの行為、もっと自由であっていい料理のこと、手抜きごはんの嗜みのことなど、今号も食の豊かさを盛りだくさんおさめます。
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今回のおまけ話では、こちらの一冊をご紹介。
どこか哀愁漂う猫がなんとも目を引く表紙…(おでんとコーヒーって合うのでしょうか)
こちらは香港出身のイラストレーター、黒山キャシー・ラムさんによる作品集。日本で作品集を出版されるのははじめてだそうですが、とにかく描かれている動物たちの表情豊かさ、軽やかなように見えて実はとても仔細なディテールの素晴らしさに胸をつかまれます。
気ままでシュールで、どこか親近感をおぼえる淋しさ。毎日くたくただし休んでいたいけど、変わらず明日はやってくる…。
『Life goes on』(人生はつづく)というタイトルの通り、犬にも猫にもカピバラや熊たちにも同じように人生がある。よくよく観察すると見えてくる鉛筆の粉や、水彩の滲み具合までもが愛おしく思えます。
動物が好きなあの人へ。ちょっと最近つかれてそうだなというあの人へ。これはひょっとして自分なのでは…?と思いを馳せながら楽しむもよし。贈りものとしてもおすすめしたい一冊です。
イラストや漫画作品、巻末にはメイキングの紹介と各作品における制作動機のコメントも寄せられており、キャシー・ラムさんの深い魅力を存分に味わえます。
おまけに。
作品集をぱらぱらめくっていて「似てるな…」となった、すべてのやる気を失い横たわるうちの愛猫の写真で失礼します。
それでは、来月もどうぞお楽しみに。
(担当:韓)