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とっとりとりどり草紙ができるまで

当店で長年開催している鳥取の手仕事にまつわる展示「とっとりとりどり」。

コロナ禍を経て数年ぶりの開催となった2023年より、私たちスタッフが実際に現地へ足を運ぶ中で出会った作り手の方やその手仕事をご紹介してきました。

恵文社一乗寺店が創業50周年の節目となる今年の開催では、鳥取の因州和紙を使い、これまでの展示ではなかなかお伝えしきれなかった現地での出会いや体験を元に冊子を制作しました。

私たちにとって新たな試みとなった冊子製作。

少しだけご紹介させてください。

表紙

冊子の顔とも言える表紙には、因州和紙伝承工房・かみんぐさじさんの和紙から三椏そぶ入り賞状用紙を使用。ほどよい厚みとやわらかな起伏が活版印刷の凹凸を受け止めてくれました。印刷は当店ご近所の活版印刷所・りてん堂さんに。前々回の「とっとりとりどり」では、懐紙の製作でもお世話になりました。ゆるやかな流れのある書体がひらがなの文字をなんとも言えない品のある雰囲気に。和紙の風合い豊かな表情と合わさって、素朴でありながら美しい佇まいの表紙となりました。

遊び紙

中の遊び紙には、かみんぐさじの若き職人さんの手漉きによる三椏和紙を使用しました。野山に自生・群生する三椏を使った和紙は長く強い繊維が絡みあい、破れにくくしなやかな光沢があり滑らか。「冊子を作るなら遊び紙を入れたい」という私たちの願いと、「いつか遊び紙を作りたい」という若き職人さんの思いが合わさって生まれた遊び紙です。

懐紙

冊子中面には、和紙の魅力を見て触れて楽しんでいただけたら、と以前製作したオリジナルの懐紙を一枚綴じ込んでいます。かみんぐさじ熟練の職人さんの手漉き因州和紙に、当店とも鳥取とも縁のある画家・イラストレーターの西淑さんのイラストを、りてん堂さんによる活版印刷で仕上げました。落ち着いたブルーとグレーのインクが繊細な和紙に映えます。(懐紙和紙:画仙紙「飛龍」)

冊子の綴じ糸と栞の糸は、これまでの「とっとりとりどり」でこ゚縁をいただいた草縁・荒井よし子さんにお願いしました。鳥取・智頭の集落で原料となる苧麻の栽培から染織までを手掛ける荒井さんの糸は、植物の繊維の風合いの残る、味わい深さがあります。素のままの糸を綴じ糸に、草木染めを施したものを栞の糸に使用しています。

当店での展示やオリジナルブックカバーのコラボなど、かねてよりお世話になっている草木染め作家・haru nomura 野村春花さんに因州和紙を染めていただきました。普段は布を染めることが多いという野村さん。薄く繊細な和紙を染めるために、手間を時間をかけ根気づよく向き合ってくださいました。染めた和紙はその佇まいから着想を得て、プレパラートに似た細長い形に。丁寧な手仕事が生みだす因州和紙の豊かな表情を、触れて透かしてぜひ自由に堪能していいただけたら嬉しく思います。

栞の糸には草縁さんの糸を。鳥取の和紙と糸、京都の草木染めとのコラボレーションが実現しました。和紙も草木染めも糸も元を辿ればすべて植物。私たちと植物との長い歴史に思いを馳せる、そんな楽しみ方もあるのかもしれません。

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鳥取訪問の様子や冊子製作にまつわるエピソードは、本冊子「とっとりとりどり草紙」の中で詳しくご紹介しています。

会場でぜひお手に取っていただけますと嬉しいです。

とっとりとりどり草紙

協力
鳥取県商工労働部農林水産部市場開拓局 販路拡大・輸出促進課

印刷
表紙:りてん堂


表紙:かみんぐさじ(三椏そぶ入り賞状用紙)
遊び紙:かみんぐさじ(三椏半紙)

発行
恵文社一乗寺店

発行日
令和7年2月1日 限定50部


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