地方の小さな町で生き残る企業、社長に共通する3つのこと
1万人の町、都農町で起業して1年。
地方の小さな町で会社を経営していくことの難しさを実感中。
今月から本格的にはじまった都農中学校のキャリア教育。そのひとつが、「都農町で働くことにワクワクする」ことを目指す職場体験プログラム【つのワク】
町内企業30社を訪問、中学生に伝えたい仕事の楽しさや仲間の大切さをまとめたWebサイト制作と、企業、中学生の両方にとって有意義な職場体験プログラムを企画してます。
各社で1時間以上、社長のお話を聞くわけですが、これがホントーーに勉強になることだらけ。中学生に伝える前に、都農町で最後発の新米経営者として学んだことをまとめてみました。
1. 人ありき、人を大切にする経営
文字にすると当たり前のことと見えるかもしれませんが、1万人の町では、きれいごとではなく切実で最重要なことなんです。
なにしろ、働き手の絶対数が少ない。
そして、残念ながら、そんなに給与水準が高いわけでなく、仕事も重労働や単純作業の継続など、いわゆるモチベーションが上がりにくい職種も多い。
どの社長に聞いても、経営する上で一番大切なことは「人」と即答。
実家が畜産農家の社員は、朝4時から肥料や食事をあたえ、帰ってから牛の世話をする。出産やせりのときは会社を休めるし、家業を優先してもらうことは当たり前だ、という社長。
ある社長は、会社のビジョンを聞いたら「社員が働き続けてくれること」、会社の強みを聞いたら「社員の仲がいいこと」と、社員しか出てこなかったた。
すごいことですよね。事業内容や利益目標とか、最後まで出てきませんでした 笑。
理由は明快。決して楽じゃない、そんなに楽しくもない労働環境で、毎日出社してきてくれるだけありがたいし、この人たちがいなければ会社がまわらないから。この人たちと働けるなら、会社の事業内容はなんでもいいぐらいのいきおいでした。
いまは卸先に取引条件を強気で交渉しているそうです。動機はただひとつ、社員の給料をあげるためだと。
「採用で一番大事にしているポイントは?」と聞いたら「親を大事にしているか」と即答した社長。
仕事で一番大事なのは、人を大切にすること。一番身近な親も大事にしない人にいい仕事はできないと。
2. 領域を問わず、何から何までやる
東京で会社を経営してたとき、なにかにつけ言われてきた「選択と集中」。
小さな町で会社を継続させるためには、そんな悠長なことは言ってられない。
「御社は何屋ですか?」と聞くと、どの社長も即答に困ってました。
製造もやるし、小売も、卸も、さらには飲食店だってやる。
養鶏から解体処理、そして地鶏居酒屋の経営をしている社長も。さりげなさすぎるけど、おそらく町内、県内どころか日本中探してもオンリーワンじゃないかなと。すごいことです。
工場の修理依頼を受ける会社では、同じ種類の依頼はほぼないとか。
要はなんでも、なおす。
自分の会社はここまでと線を引かず、お客様が困っていたらとんでいく。
もちろんそれだけの知識、技術があってのことだが、もともとそんなスタンスでやってきたから、自ずからノウハウがたまる、だから強いし他の会社には真似できない。自分の会社もこうなりたいなぁと強く思いました。
刺繍を生業とする会社も、刺繍のもとになるデザインは共通するので、気がつけばワッペンからプリント、印刷まで、まさに出力産業。
僕らも名刺からTシャツ、パンフレット、ポスターまで日々大変お世話になってます。満足度高いです。
町になくてはならない存在。
多くの社長たちからでてきたフレーズ。だいたい一業種一社。業種といってもその幅は広いので業態に近いかな。。だからユーザー側からすると楽な面もあります。この件はここ、と考えなくてすむから。
一人のお客様に対して向き合い、その人のニーズにはワンストップで対応する、というスタンスは、小さな町にかぎらず、これからのビジネスモデルの理想形でもあるな、と思いました。
3. 目の前のことを一生懸命やる
これも当たり前すぎることば。
でも、社長に将来のビジョンや目標を聞くと、けっこうな割合で「目の前のことを一生懸命」というフレーズがかえってきた。
中長期的なこと、将来のことを考えてないはずはないけど、考えれば考えるほど、いま、目の前のことを一生懸命やらなければ、というふうに巡回してくるのでしょうか。
バカになるほうがかっこいい、とにかく無我夢中。そういった社長は、この10年で売上を何倍にも押し上げていました。尊敬。
今日生き残らなければ明日がない、強みといったって、そんなに特筆すべきものがないとしたら、できることを人より一生懸命やって、少しでも役に立つ、なくてはならない存在になる、ということだと深く共感した次第です。
一連の会社訪問に、新卒社員が同行しているのですが、下手な研修するより、よっぽど勉強になりますね。机上の起業家教育よりもリアルで学びが深い。
中学生たちに、僕らが感じたこと、学んだことをどう翻訳するか、これから考えていくのが楽しみです。
そして、自分の会社が生き残るためにどうしていくか、GWかけてじっくり考え抜きたいと思います。