言うは易し、行うは難しの多世代交流サロン、都農町に開業
3月13日、宮崎県都農町で、築91年の旧金物店舗をリノベーションして多世代交流サロン「文明|BUNMEI 」を開業しました。
まちづくりでよくいわれる多世代交流、そんな簡単に実現するはずもなく。開業してみて、まずは各世代にとって、ここでしか体験できないコンテンツ(=来る必然)をつくっていくことが先決と実感。
「文明|BUNMEI」では、ベーグル&スイーツカフェの運営を軸に、オンライン料理教室、ヘルプデスクや、レゴブロックコーナー、つの若者BARなどのコンテンツを企画、あとはコーディネイターがいかにつなげていけるか、と自覚してます。
1. 多世代交流の難しさ
多世代交流と言うは易しですが、家族の間でも三世代での交流って、同居でもしてないかぎり、機会は少ないもの。
盆暮れとか、必然があれば別ですが、もともと生まれ育った時代が違うので価値観は異なりますし、共通の話題や趣味もなく、接点が持ちにくいもの。あかの他人となればなおさらです。
ただし、過疎化が進む町では、少子高齢化が加速、貴重な子どもを地域で育てていく必要は高まるばかり。高齢者にとっても、若い世代と接することで刺激を受けて老化の抑止になるように、多世代交流の意味合いは強いです。
2. ご近所の高齢者
高齢化率が40%近い都農町でも、高齢者が1日でも長く、健康で自立した生活を送れることが重要なテーマ。
とはいえ、コロナ禍で、外出や、交流の機会は減るばかり。多世代交流の場が果たす役割は大きいはず。
開業して、「文明|BUNMEI」に来ていただいた方々からお聞きした話
・ふだん、きがるに話せる場がなくてこまってた
・公民館は鍵を借りたり、手続きがあるので気軽じゃない
・だれかと話したいけど、きっかけがない
・でも、おしゃれな店だと敷居が高くて入っちゃいけない気がする
・コーヒーを飲む習慣がないので、何かもうひとつ行く理由がほしい
・年金だけで収入は増やせないので、出るお金を減らすしかない
一筋縄ではいきません。まずは近所の方々に来てもらって、どうだったら居心地がよいのか、一つひとつすり合わせしていこうかと思ってます。
今日はBGMを、おしゃれなカフェミュージックからビートルズに変えてみました(笑)。
3. 親子
都農町の子育て世代に聞くと、「ふだん子どもの遊び場がなくて町外まで行く」「親同士で気軽に子育てのことを話せる場がない」
「文明|BUNMEI」 では、カフェの一角にレゴブロック専用コーナーと、絵本だな、すぐ横で親が見守れるベンチを設置。
子どものお弁当持ち込み大歓迎。遊んでる子どもをみて、ガラス越しに声を掛けるおじいちゃんがいました。こんな風景を増やしていきたいものです。
子どもだけでなく、親同士で交流を楽しめることも大事。
「文明|BUNMEI」では、月1回、料理教室を開催。
今回の料理教室は「トマト鍋」。参加者に移住者が多かったので、トマト鍋を開発した矢野純子さんから、都農町が10年前、口蹄疫から復興をかけてトマト鍋をつくった経緯や、都農町ならではの食材のお惣菜をおすそわけいただいたり、町内外、世代間交流が活発に。
夜、真っ暗になる都農町。
「文明|BUNMEI」にはいつも灯がともっていて、窓越しに何やってるんだろう?と興味を持ってもらえる人が少しずつ増えていけばいいんですが。
4. 若者世代
若者たちには、日替わりBUNMEI BARを企画してます。
都農町でカフェと並び、ほしい施設でよく聞くのが「BAR」。居酒屋やスナックはありますが、若い人たちがゆっくり話せる場所は少ないもの。
ただいま3つのBAR企画進行中。
①都農ワインBAR(毎週金曜日)
都農町が誇る「都農ワイン」、意外と最近の町民になじみが薄かったり、25年前、町運をかけてチャレンジした思いや歴史は伝承されてなく。
ワイナリーの丘まで行かず、気軽に町中で「都農ワイン」を楽しめれば。
先行して、「都農ワイン」で使っている本物の樽が届きました!
②つの若者BAR
町のデジタル化で、高齢者のサポートをするため、若者10人以上が自発的に集まり「つの若者会議」を結成。
高齢者のサポートに終わらせず、デジタルを活用してどんな未来をつくるのか、もっと楽しく、議論も楽しめるよう、35歳以下限定のBARを週1回、開店します。
③まかないBAR
「文明|BUNMEI」では、料理教室やカフェでつながった多くの生産者とのネットワークがあるため、彼らの規格外野菜中心に、身内+その知り合い程度を対象としたまかない料理とお酒を楽しむBARを。
5. 中高生・大学生
「文明|BUNMEI」 は、僕がキャリア教育を担当している、町で唯一の中学校、都農中学校の近くにあります。
中学生たちと、放課後もリアルなまちづくりや、働いている大人たちとの接点をつくっていきます。
あと、中高生や大学生とは、どちらかというと「文明|BUNMEI」の利用者というよりは、一緒に企画し、つくる側になってもらおうと思ってます。そのほうがリアルなキャリア教育にもつながるし、一石二鳥かと。
開店前には、カフェの黒板を、絵が好きな中学生三人にデザインしてもらい、とっても評判の良いできばえになってます。
6. 世代をつなぐカフェとコーディネイター
僕らの日常的な運営は、ベーグルサンドとスイーツを中心とするカフェ。
無料で使う人たちと、有料のカフェが混在するため、臨機応変な対応が求められます。
カフェっぽくつくりすぎると、近所の人たちが毎日来るのはハードルあがるし、公民館っぽくなってしまうと、ランチやケーキって気分にならない。
今後も、試行錯誤は続くのでしょうが、幸い、僕らコーディネイターが日々、まちづくりの実務と、町の人たちの接点を多くいただけるので、良い意味でなあなあの関係を使ってバランスはとっていきたいと。
なにより大事にしたいのは、カフェの品質。
滋賀県から移住して、都農町で来年チーズケーキ工房の創業を目指すパティシエの村方さんがカフェの主人公。
得意のチーズケーキやタルト、そしてランチ用に新しく開発し、毎朝焼き上げるベーグルサンドを提供、僕らと一緒に「文明|BUNMEI」にしかない体験をつくりだしていくことを目指してます。
1万人の小さな町では、そもそも集える場が少ないです。東京みたいなターゲティングをしぼった店づくりは現実的ではないので、難易度は高いけど多世代交流サロンの意義は大きいと実感してます。
そして、最後に問われるのが、僕らコーディネーターのコミュニケーション力。各世代にそれぞれ、満足いただきながら、さりげなく、世代間をつないでいく。そのさじ加減は難しそうだけど、この先、都農町に限らず、地方のまちづくりでは、不可欠なスキルになるのでやりがいは満ち溢れてます。
まちのみんなで「食」と「未来」を考えるサロン、が目標です。