地方創生の注力課題、若者流出の対策は?
都農町の大きな課題は若者流出です。町で唯一の県立都農高校が閉校となるため、町から高校生が姿を消していき、ますます若者は減っていきます。
人口減少のなかでも、とりわけ生産人口=働き手の減少は、経済的にも大きなダメージをもたらします。都農町では2040年に老年人口(65歳以上)が生産人口を上回る想定。なんだか想像がつきませんね。。
1. 15-24歳の転出超過
都農町の住民基本台帳人口移動報告を基に、2017年・2018年の年齢別の転入・転出状況をまとめてみました。
転出が転入を大きく超過するのは、15-19歳、20-24歳。ちょうど高校、大学への進学や就職の年代です。わかってはいましたが、データで見ると、より明らかですね。。
都農高校が閉校になるため、この超過はこれからもっと増えていくんでしょう。
転入が転出を超過するのは、0-4歳と35-39歳、40-44歳。都農町では子育て支援を強化してきたため、成果は出ているようです。
ただし、いくら子育て世代が増えても、結局、15歳以降で転出してしまったら同じこと。やはり、若者世代の対策が急務では??
2. 転出は九州内が86%
転出先を見ると、九州外は14%にとどまり、ほとんどが九州内であることがわかります。
(都農町人口ビジョン及び、まち・ひと・しごと創生総合戦略を編集)
宮崎県内が60%。
都農町からの転出市町村の上位5位は、宮崎市の56人を筆頭に、高鍋町、川南町、日向市、延岡市と近隣市町が多くをしめます。
ちなみに、転入も市町の顔ぶれは同様ですが、ここでも転出の方が転入を上回っています。
転出先が東京とかだとあきらめもつきますが、県内と聞くとなんとかなるんじゃないかと思うのは僕だけでしょうか?
都農町に、もう少しだけ選択肢があれば転出しなくても良いのではないかと思います。
3. 就職のために望むこと
宮崎県外へ就職した人に対してのアンケートでは以下の結果となりました。
(若者の県外流出要因等調査結果より抜粋)
今後転職した場合に重視するポイントは以下のとおり。
(若者の県外流出要因等調査結果より抜粋)
あきらかに給与水準の低さが大きな要因です。
都農町の平均年収は約237万円、県内平均年収(約366万円)と比較してもさらに下回る水準。
都農町で高校生を対象にした【就職のために望むこと】の調査結果でも、「安定した給料」が圧倒的1位。。
給料については、一朝一夕に水準をあげることは難しいですが、その他の項目を見ると、改善の余地があるように思えます。
4. いますぐ、改善できることは職場体験
(都農町人口ビジョン)
2位の「町内の会社の求人情報」、4位の「町内の会社についての詳しい情報」は、個人的にも同感。日常的に町内にどんな会社があるのか、なかなか知る術がないのが現状です。
今、都農町デジタル・フレンドリー計画で、町のホームページを一新して、町民と双方向型のポータルサイトを開発中です。そこに町内企業の詳細の情報を入れていくなど、情報の整理は短期的に改善が可能です。
5位の「都農町に新しい会社ができること」、8位の「会社をつくるための資金の支援」も、短期的に改善が可能です。
飲食店の開業支援などの助成金制度もすでにあるので、高校生を含めた若者世代に周知徹底していくこと、創業支援のビジネススクール機能をキャリア教育に組み込んでいくなどすれば!
6位の「農業・林業・漁業での職場体験」、7位の「企業(会社)での職場体験」は、これから個人的に一番力を入れて改善していきたい内容です。
現状は、年間3日、中学生たちが希望して受け入れてくれる事業所で職場体験しているようです。
そもそも、町内の受け入れ可能な事業所の数が少なく、日常的に人手も少ない中で、中学生たちが仕事の意義や楽しさを感じられるような体験を提供できるところがどのぐらいあるのか、難易度は相当高いはずです。
僕自身、キッザニア東京の立ち上げをしていたころ、子どもたちに仕事の意義や楽しさを伝えるのは、相当時間をかけて考えました。何よりも直接、接する社員が自らその仕事に誇りや楽しいと実感していないと、なかなか伝わりません。いつの世も子どもは正直ですからね。
ポジティブに言えば、中学生が職場体験で仕事の楽しさや都農町で働く誇りを持てれば、将来的な流出回避、Uターンにつながります。大事。
いますぐできる改善は職場体験。商工会やJAももっと巻き込んで、町全体の最優先課題として、職場体験の企画と実施体制、予算を考えていくべきです。なんたって、老年人口の方が多くなってしまう町なのですから。。今のうちに若者に投資しないと、気がついたら本当にいなくなってしまう。。
5. キャリア教育で伝えたいこと
若者たちが必ずしも、東京をはじめとして、都心地域に住み続けたいと思っているかというとそうでもありません。
Uターンをしたい人の方が、したくない人を上回っています。ただし、町外在住10年を越えると圧倒的にUターンしたくない人が増えるようです。
やはり20代向けに、より積極的にUターン奨励の情報発信が必要。もちろん、発信するだけの情報=実績をつくることが先決ですが。。
(都農町人口ビジョン)
前述した、給与水準にも関わることですが、若者の流出を防ごう、町内で働こう、町に誇りと愛着を、という精神論的囲い込みはリアリティーがありません。
現実的には、就職先は東京でも福岡でも、海外でもよく、居住を都農町にする、あるいは二拠点居住の一つにするというのがこれから検討すべきことだと思います。
リモートワークの浸透や、町としてのデジタル・フレンドリー推進で、これまでのパラダイムからは変わっていくはず。そのために、小・中学生の頃から、働き方や住まい方にたくさんの選択肢があることを臨場感持って伝えていくことが、これからのキャリア教育において、最も重要なことになるのではないでしょうか。