小さなまちづくりのリーダーシップで求められるのはファシリテーション+α
昨年末の『HORIE ONE|2022年の幸福論』で社会学者の宮台真司さんが言ってた「小さいコミュニティから新しい共同体自治で変えていく」が面白かった。その鍵を握るのが、リーダーのファシリテーション能力。
日本の幸福度があがらなかったり、経済停滞の大きな要因は「既存の制度を変えたくない」、既得権益にへばりつく人たち
正社員をなくして、解雇を自由にする。そのかわり、国として雇用保障し新しい産業に適応できる職業訓練をする
民主主義自体が民度に依存するため、適切なサイズは3万人ぐらいだとか。
既得権益もなくなる限界集落をはじめ、小さな町にはチャンス。新しい共同体自治が生まれる可能性がある。
新しい共同体自治をつくるリーダーに求められるのが、ファシリテーション。最初は口を出さずに、みんなの意見や行動を引き出していく姿勢です。
1.ファシリテーターの立ち位置
ファシリテーターについては、ぼく自身、その役割を自覚するようになってから四半世紀ほどたちます。
最近では、その歴史や定義について中野民夫さんや中原淳さんをはじめ学者の方々がわかりやすくまとめられています。
僕自身は一貫して、プロジェクトの実務や経営の場面で行うファシリテーションが主だったため、行政のワークショップなどの委託を受けるプロのファシリテーターの役割とは若干スタンスが異なることが多いです。
以前、まとめたものはこちらに。
大別すると、行政が主催する住民ワークショップのように、ファシリテーターがきわめて客観的、中立的なスタンスでファシることが求められる場合がひとつ。
もうひとつが、事業や経営の意思決定のように、客観的・中立的スタンスを持ちながら、利害当事者として提案や判断を加えていくものとにわかれるような気がします。
言い換えると、プロセスが目的の場合と、成果責任を伴う場合です。
上記に加えて、冒頭で紹介したような、ファシリテーションをする対象の所属組織の規模の違いによるファシリテーションのあり方の違いを考えてみました。
2. プレイング・ファシリテーター
大企業や、10万人以上の都市レベルで実施するワークショップと、1万人規模の違いは、顔が見えるかどうか、ということでしょうか。
移住者の僕でさえ、参加者の方々のことはなんとなく知っている、もちろん参加者同士は、親まで遡ればほぼつながる安心感。
この関係性で実施するファシリテーションは、客観性・中立性を保ちながらも、仲間的なスタンスになりがち。(なったほうがいいと思ってます)
つまり、いろいろなアイデアが出つつも、それを他責にせず、自責として遂行することが求められます。
小さな町に共通する課題は、アイデアの質、量もさることながら、実践する人(プレイヤー)が少ない(≒いない)こと。
したがって、大きな組織における専業的なファシリテーションであれば、ワークショップでこんな意見があがっててこういう傾向にありますね!と報告すれば良いのでしょうが、小さな町だと「で?それはいいけど誰がやるの?」に行きつきます。
ファシリテーター自らが、みんなの意見を引き出し、まとめつつ、具体的なアイデアは、自らやりますと手を挙げていく、そんなスタンスがプレイング・ファシリテーターなのではないかなと思ってます。
スポーツでは、よく監督兼選手をプレイング・マネジャーといいますが、それのファシリテーター版というイメージです。
3.仲間のためにいいものをつくる
プレイング・ファシリテーターの、プレイングの登場は最後の場面だと思ってます。
【最初】
口を出さず、参加者の意見を引き出すことに集中。
これはどんなファシリテーターでも基本の心得。
【途中】
なるべく介入せず、参加者が当事者意識を高めてもらえるよう盛り上げ役に徹する
【後半】
アイデアや意見を絞り込む際から、自らが実践することを想定して、どの方向性だったらやりきれるか、求められる成果が出せそうかという観点からファシっていきます。
【最後】
アイデアや意見がまとまった段階で、これだったら自分がやります!みんなもやりましょう!と仲間を募る。
ざっと理想的な流れでいくとこんな感じでしょうか?
宮台真司さんのコメントにもあったのですが、小さなコミュニティで新しい共同体自治が生まれる要因として、「仲間のためにいいものをつくる」を挙げていました。
これは都農町で仕事をしていて、よいところだなと一番強く感じるところです。顔が見えるから自責になるし、仲間のためにつくってるからいいものをつくる。周囲は、その努力を知っているから高くても買う。
こんな循環を、これから小さな町からどんどん起こしていくことが、1万人から10万人、そして100万人の規模での変革につながっていく、そのために必要なコアスキルが、ファシリテーションなのだと思います。
一言でファシリテーションといっても、
①率直に意見を引き出す(行政の住民ワークショップ)
②創造的なアイデアを出す(新規事業や商品企画)
③実務的な意思決定をする(プロジェクト、会社経営)
④成果責任を伴う行動の意思決定(小さなコミュニティ)
個人的な経験だけでも最低4種類のやり方は必要。
相手が意見を言いやすい環境づくりや聞き出す問いの立て方は共通ですが、それ以外は、4つの場面ごとに異なるノウハウやスタンスが必要です。
そのあたりは、また改めてまとめてみようと思います。