地方のまちづくりにおけるフューチャーセンターを、未来の公民館と再定義してみる
まちづくりにおいて、住民が気軽に立ち寄れ、ざっくばらんに話し合える場の必要性は改めて言うまでもありません。
10年ほど前に、そんな場づくりの選択肢を求めて、オランダでフューチャーセンターを何箇所か見てまわって衝撃を覚えました。
1.オランダのフューチャーセンター
フューチャーセンターは、スウェーデンの 知識経営研究者であるレイフ・エドビンソン氏が提唱、1996年にスウェーデンの保険会社が開設、 その後、オランダ政府やデンマーク政府が開設したと言われてます。
フューチャーセンターのポイントを挙げると大きくは5つ。
オランダでフューチャーセンターが盛んになったのは、もともと海抜が低いことで水害が多く、復旧・復興策をさまざまな利害関係者が集まり、課題解決策を議論し、行動を起こしていった背景があります。
そのプロセスで、行政、学識経験者、企業経営者、一般市民、学生など多様性のある人たちが集まり、スムーズに議論をして意思決定を導き出すために最適な空間やファシリテーションが整備されていったそうです。
対話のプロセスで勉強になるのは、空間デザイナーや大脳生理学者が研究し、議論・意思決定のプロセスによって、使う部屋や環境を変えていくことでした。
スタートはお菓子やコーヒーでアイスブレイク。
最初の部屋は、壁一面の大画面で、子どもが大はしゃぎで水浴びしている映像から。
これ見てネガティブになる人はいないなぁと実感。
次は、ブレストでアイデアを拡散させるのに適した空間へ。
そして、少し落ち着いた部屋に移動し、アイデアを集約。
最後は、結論を出す部屋で真っ正面に対峙。
決めろよ!っていう演出が面白かったです。
よく、コワーキングスペースやシェアオフィス、リビングラボなど似たようなカタカナで混乱しがちです。
ぼくの場合、
と整理しています。
また、フューチャーセンター=建物・空間ととらえるより、プログラムと考えた方が良いのではないかと考えてます。
2.フューチャーセンターに必要な3つ
薩摩川内市でフューチャーセンターを7年近く企画・運営させていただきました。
建物はスマートハウスのモデルハウスですが、住民を集めて対話をしてもらう企画・仕掛けを「フューチャーセンタープログラム」と称して、実践。
その経験から、フューチャーセンターに必要なことを3つにまとめました。
3.論点
ポイントのひとつめは「論点」です。
薩摩川内でフューチャーセンターをはじめるとき、最初に、市役所の課長さんたちに集まってもらって、自分の課・担当案件で一番課題だと感じていることを出し合いました。
各課で上位になった課題を、今度は市全体の立場にたってもらって俯瞰して、優先順位を決めました。
結果、 「食と農業」「子育て」「観光」がトップ3に挙がりました。
これを受けて、初年度は「食と農業」をテーマに10回ほど。
最終的に、リバーフロントマルシェというわかりやすい結果を出し、いまもなお継続しています。
以降、毎年、1年に1テーマずつ論点を定めて対話を重ねていきました。
4.場
ポイントの2つめは「場」です。
人が集まって話す場に必要なことは、カフェ、コワーキングスペースや市民ホールなどにも共通してくることだと思います。
薩摩川内市では、スマートハウス(戸建住宅)を会場にしていました。
キッチンの前のリビングで話し合い、子どもたちはソファーや庭に出て遊んでる、という日常的な風景を意識していました。
あとは、オランダの事例で見たような壁面や映像によって、ポジティブな気分や集中できる環境演出も不可欠な要素です。
5.人
ポイントの3つめは「人」です。
フューチャーセンターの成立要件として、専任の「ファシリテーター」がいることが挙げられます。
まちづくりに関わる論点の場合、ファシリテーターは、専門知識や自らアイデアを持っている人のほうが、参加者の意見を引き出しやすく、対話が盛り上がるかなと思います。
慶應大学SFCの井庭崇教授が提唱している「ジェネレーター」というスタンスのほうがしっくりきます。
ファシリテーターが客観的・外部的になりすぎないよう、ときには主観的・内部的にもなって、自分ごととしてアイデアを出すことの使い分けをしながら、参加者にインプットと刺激を提供しながら場をひっぱっていくことが求めれます。
6.未来の公民館
都農町のような1万人規模でフューチャーセンターをつくるとしたら、ハードとしての場で最適なのは公民館だと思ってます。
全国共通で、公民館は昭和の遺産化しているのではないでしょうか?
建物の老朽化とともに、利用者の高齢化、さらには管理上、人手がかけられず、鍵当番が大変だったり、新しい住民には使いようがなかったり。
以前に公民館をサードプレイス化する記事も書かせてもらいました。
これからのデジタル化の流れに沿って、今一度、公民館をリ・ポジショニングするチャンスであり、その中身は、限りなくフューチャーセンターに近づけるのではないかと思ってます。
今年の夏には、京都市立日吉ヶ丘高校のフィールドワークで、22名の高校生が都農町に来て、老朽化した公民館を高校生世代も使いたくなる企画とデザインを地元の自治会の人たちと話し合い、最後は町長と自治会長に提案してもらいました。
このプロセスは、ひとつのフューチャーセンターでした。
いま、都農高校跡地で毎月1〜2回、主催している「つの未来会議」も、ぼくの中ではフューチャーセンターのプログラムのひとつ。
場は廃校の図書室そのままで全然問題なく。
まちづくり最前線の論点と、専門知識・実績を持った論客がいれば、おのずと参加者も集まってくるし、ゆるやかに対話も拡がるのではないでしょうか?
今後の課題は、いかに常設化し、だれでも主催・参加ができるようにハードルを下げていけるか。
公民館としては、フューチャーセンターのプログラムだけだと、堅苦しく敷居があがってしまうので、ワークショップや生涯学習、単なる飲み方、健康教室など、多種多様やプログラムづくりが肝だと思ってます。
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