【種牡馬四季報】イギリス/アイルランド 2024年スタートダッシュと新種牡馬解説
競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。
~リーディングサイアー~
昨年2位だったDark Angelが好調ぶりを示しており、2位以下に大きな差を付けてトップをひた走っている。イギリス/アイルランドでの重賞勝ちはGIIサンダウンマイル(芝8F)のCharynが出ているのみだが、日本ではマッドクールがGI高松宮記念を制しており、欧州の快速種牡馬として多くのスピード馬を輩出している。後継種牡馬Harry Angelも19位にランクイン。また、Dark Angelの父Acclamationの直仔ではMehmasも20位に入っており、同馬の産駒はヨーロッパに止まらず、北米やオセアニアでも活躍馬を輩出している。
昨年7位だったKingmanも順位を大幅に上げて2位にランクイン。つい先日、GI英1000ギニー(芝8F)をElmalkaが人気薄で制しており、今後も目が離せない注目の種牡馬だ。日本でも今シーズンから直仔のシュネルマイスターが社台スタリオンステーションで繋養されており、さらに同父系の注目度は高まるだろう。ほかのGreen Desert系種牡馬では、8位にSea the Stars、12位にProfitable、16位にShowcasing、17位にInvincible Spirit、18位にMuhaararがトップ20にランクインしている。
昨年8位のLope de Vegaも3位にランクアップ。2024年の重賞競走ではまだ目立った活躍を見せていないが、北米からヨーロッパ、アラブまでの各国でGI馬を輩出している種牡馬だけに、今後頭角を表す存在の出現に期待したい。Storm Cat系では同じShamardal直仔のBlue Pointが13位にランクインしている。
4位Dandy Manは昨年16位からの急上昇株。現役時代は英GIIIパレスハウスS(芝5F)などを制したスプリンターで、デインヒル系らしい快速ぶりを子孫にも継承している。
5位KodiacもDandy Man同様のデインヒル系スプリンター。自身は重賞勝ちがないが、3/4同血の兄にはInvincible Spirit(2002年スプリントC)がおり、血筋の良さを評価されて種牡馬入り。過去にはスプリントGI2勝のHello Youmzainなど複数のGI馬を送り出しており、後継種牡馬の誕生に期待がかかる。デインヒル系では他にStarspangledbannerが15位にランクインしている。
昨年の首位Frankelは現在6位。イギリス/アイルランドではOutboxがGⅡジョッキークラブS(芝12F)を制している程度だが、UAEではMeasured TimeがGⅠジェベルハッタを勝っており、産駒の活躍はまだまだこれからだろう。
7位DubawiはGⅠ英2000ギニーをNotable Speechが勝利。その他、アメリカではMaster Of The SeasがGⅠメーカーズマークマイルSを、UAEではRebel's Romanceがドバイシーマクラシックを制しており、今年も世界各国で産駒の活躍が見られそうだ。後継種牡馬Night of Thunderも9位にランクインしている。
父系別では上位20頭中18頭はNorthern Dancer系、2頭はMr. Prospector系という極端な偏重ぶりを見せている。ちなみに、Northern Dancer系の内訳はGreen Desert系が6頭、Galileo系が3頭、デインヒル系が3頭、Acclamation系が3頭、Storm Cat系が2頭、Montjeu系が1頭。また、Mr. Prospector系は2頭ともDubawi系に属する種牡馬だ。
~新種牡馬 イギリス/アイルランド~
・Earthlight
現役時代は9戦7勝。GIモルニー賞(芝6F)とミドルパークS(芝6F)を制した仕上がり早のスプリンターで、父はStorm Cat系Shamardal。母Winters Moonも2歳GⅠフィリーズマイルで3着に好走しており、産駒も仕上がりの早いタイプが多く出そうだ。Shamardal、Darshaan、El Gran Senorなど日本と相性の良い血も豊富に持つため、日本での活躍にも期待。初年度は162頭に種付けを行っている。
・Old Persian
GIドバイシーマクラシック(芝2410m)とGⅠノーザンダンサーターフS(芝12F)を制すなど、芝12F戦を中心に活躍したDubawi直仔。3代母Massaraatが名牝Miesqueの全妹という良血牝系で、母の父は1996年ジャパンCも制したSingspiel。長距離馬ながら軽い血を豊富に内包しており、配合次第でマイラーを出せる下地は十分だ。初年度は158頭に種付けを行っている。
・Pinatubo
デビューからヴィンセントオブライエンナショナルS(芝7F)とデューハーストS(芝7F)という2つの2歳GIを含む6連勝を飾った短距離馬で、その後もジャンプラ賞(芝7F)を制するなど短距離GI3勝を挙げて種牡馬入り。本馬もEarthlightと同じShamardal産駒の早熟馬で、仕上がりの早いマイラーを多く輩出してくれそうだ。初年度は152頭に種付けを行っている。
・Sands of Mali
現役時代は18戦5勝。GI勝利は英チャンピオンズスプリントS(芝6F)のみだが、2歳から5歳までタフに走り続けた。父Panisはヨーロッパでは貴重なMr.Prospector系のMiswaki直仔で、フランス産馬らしい異系血脈を豊富に内包したアウトサイダー血統の短距離種牡馬だ。初年度は152頭に種付けを行っている。
・Mohaather
GIサセックスS(芝8F)など芝1400~1600mの重賞を4勝した芝マイラー。父ShowcasingはDanzig系のGreen Desert父系で、母方の血もスピード色が強いため、産駒もスプリント~マイルが主戦場となりそう。初年度は146頭に種付けを行っている。
・Ghaiyyath
2020年にコロネーションC(芝12F)、エクリプスS(芝1990m)、英インターナショナルS(芝2050m)を制して欧州年度代表馬に輝いた名種牡馬Dubawiの有力後継種牡馬。母Nightimeも愛1000ギニー馬という良血で、半姉Zhukovaも米GⅠマンノウォーSを制している。スピード色の強い牝系で、父Dubawiも様々なカテゴリーでGⅠ馬を輩出する万能種牡馬。本馬も繁殖牝馬次第で幅広い路線の活躍馬を出してくれるだろう。初年度の種付け数は138頭。
・Sottsass
仏ダービー(芝2100m)、ガネー賞(芝2100m)、凱旋門賞(芝2400m)を制したNureyev系Siyouni直仔。きょうだいには北米GⅠ7勝の名牝SistercharlieやBCフィリ―&メアターフ2着馬My Sister Natがおり、日本でも全弟シンエンペラーがホープフルS2着などの実績を挙げている。フランス産馬らしい切れ味のある配合形で、シンエンペラーの活躍からも日本適性は証明済みだ。初年度の種付け数は132頭。
・Kameko
GIフューチュリティトロフィー(AW8F)、英2000ギニー(芝8F)を制したアメリカ産マイラー。父Kitten's Joyは2013年と2018年に北米リーディングサイアーに輝いたSadler’s Wells系種牡馬で、母父ロックオブジブラルタルからも非凡なスピード能力を受け継いでいる。初年度は114頭に種付けを行っている。
≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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