24年フェブラリーSを振り返る~勝負を分けたハイペースに潜む思惑と誤算~
岩手の英雄メイセイオペラがフェブラリーSを勝ってから、もう25年経つのだそうだ。
最近めっきり記憶力が衰えたマスクだが、かろうじて当時のことは覚えている。今改めて考えるとワシントンカラー1番人気のGIというのもなかなか凄い。
このレースである意味記憶に残っているのが、1月31日に行われたという点だ。それはもうフェブラリーではないのではと思うものだが、当時2年間だけ2月に入るかどうかの頃に開催されていたんだよ。
メイセイオペラが勝った翌年、2000年から、また2月半ばから2月末までに開催されるようになった。
そんなフェブラリーSが岐路に立とうとしている。後から同時期にサウジカップが誕生してしまったのだ。賞金10億。フェブラリーSの1着本賞金が1億2000万だから、どっちを選ぶかなんてそりゃサウジだ。
レモンポップ、ウシュバテソーロなど、トップホースたちがサウジに行くことで、フェブラリーSの空洞化が進行してしまっている。
これはそう遠くないうちにフェブラリーSの施行時期が変わるかもしれないね。それこそ1月末、メイセイオペラが勝った年のあたりに開催する可能性はあると思うよ。
もちろんこうなるとトライアルの設置時期が難しいから現実的かというとそうでもないのだが、サウジなどのステップにはなる。まー、それだと開催時期からもうフェブラリーSとは言えない気はするがね。
そうしてトップホースたちが続々とサウジに行ったこともあり、勝てる可能性がより高くなったと踏んだか、地方や芝から参戦する馬も目立ったのが今年のフェブラリーS。
レース前のマスクの注目ポイントの一つとして、トップホースがサウジに行ったこの路線で、地方馬と芝馬がどこまで通用するのか、というものがあった。
そこでいざ出てきた枠はというと、メイセイオペラ以来の地方馬によるフェブラリーS制覇を目指していたイグナイターがまさかの最内枠を引いてきてしまったんだ。
フェブラリーSがGIとなってだいぶ経つが、これまで東京ダート1600m開催時は0.1.1.24と、未だに勝ったことがない。
これは東京ダートの1600mで開催する以上仕方のない話だ。コース形状の問題でどうしても真ん中から外のほうが有利になる。
それなのにイグナイター、ミックファイアといった地方の強豪、シャンパンカラーやカラテ、ガイアフォースといった芝からの転戦馬が軒並み真ん中より内を引いてしまったんだよね。
色気を持ってここに出てきた地方馬、芝からの転戦馬が、東京ダート1600mの内枠に対応できるのか、これはマスクのもう一つの注目ポイントだった。
激流と書いてハイペースと読む
今回のフェブラリーS、ペースについて頭を悩ませた人間が多いと思う。ハナでないと走れないという馬は少なく、ドンフランキー単騎逃げもありそうなメンバーではあった。
ただ同じくある程度行って揉まれたくないイグナイターが前述通り最内枠を引いてしまった。イグナイターがどこまで引かず、ドンフランキーがどんなペースで逃げるかを測りかねた人間は多かったのではないかな。マスクもその一人だ。
☆考えられる主な選択肢
1 ドンフランキーがスローで単騎逃げ
2 ドンフランキーがハイペース逃げ
3 ドンフランキーお休み、他馬が逃げ
ドンフランキーという馬は3走前の中京ダート1400mプロキオンSで前半3F33.9で逃げた実績がある。大井1200mで逃げ切れレコードを作るレベルでテンが速い。
まともにスタートを切れば、たぶんドンがハナだという発想に行きつく。ドンが大き過ぎてゲートの前扉に挟まって出られないというウルトラCでもない限り、1か2の可能性が高い。
問題はドンフランキーがどういうペースで逃げるかだ。今回は400mの距離延長でマイルを使うだけに、距離を考慮してスロー逃げで脚を溜める可能性もあったし、切れ味自体はない馬だから短距離同様速いペースで逃げる可能性もあった。
☆24年フェブラリーS
12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9
33.9-37.8
結論から書いてしまえば超ハイペースと言ってもいいラップが出てきたんだよね。
前半3F33.9というのは、フェブラリーSがGIになってから2番目タイに速いタイムだ。
☆00年フェブラリーS
33.7-37.9 1:35.6
12.2-10.6-10.9-11.6-12.4-13.0-12.4-12.5
1着ウイングアロー 16-16
2着ゴールドティアラ 12-12
3着ファストフレンド 13-12
☆06年フェブラリーS
33.9-37.5 1:34.9
12.2-10.7-11.0-11.4-12.1-12.9-12.3-12.3
1着カネヒキリ 10-8
2着シーキングザダイヤ 4-3
3着ユートピア 3-3
☆24年フェブラリーS
33.9-37.8 1:35.7
12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9
1着ペプチドナイル 4-4
2着ガイアフォース 8-8
3着セキフウ 14-14
ラップのタイプとしては06年、カネヒキリの年に近い。前半3Fは同じ33.9。しかし勝ち時計は今年のほうが0.8秒掛かっている。06年にしても結構時計の掛かるタフな馬場だったのにな。
そのレースで最後12.3-12.3を刻んで独走するカネヒキリが強過ぎる。普通なら今回のペプチドナイルの数字のように最後落ちるし、カネヒキリが数段上を行っていることがラップから分かる。
最後落ちるくらいの前傾ラップで基本差し馬有利、これが今年のフェブラリーSの基礎だ。まずはこれを頭に入れてほしい。
池添の思考、松山の誤算
☆24年フェブラリーS
33.9-37.8 1:35.7
12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9
1着ペプチドナイル 4-4
2着ガイアフォース 8-8
3着セキフウ 14-14
4着タガノビューティー 11-9
5着キングズソード 11-12
6着レッドルゼル 16-15
7着ミックファイア 10-9
8着ウィルソンテソーロ 2-2
9着ドンフランキー 1-1
11着イグナイター 2-2
12着ドゥラエレーデ 4-4
当然こんなハイペースになれば先行馬は厳しい。逃げたドンフランキーが9着、2番手ウィルソンテソーロが8着に敗れたのもまー、特に驚くことはない。
池添はレース後自身のXで「悔いが残るレースはしてません。 自分のレースはしました。力があるから逃げ馬について来る。ペースも流れる。競馬ってそうだから」と書いていた。
桃ドンフランキーのスタートはかなり速かった。スタートしてわずかのところでもう1馬身近く出ている。これぞ短距離馬というテンだ。
これだけいいスタートを切れれば初速の違いでハナなんだけど、こんなにいいスタートを切ったのに後ろがついてきちゃったんだよね。これではペースを緩めにくい。
だって緩めたら外のドゥラエレーデあたりがもっと迫ってきてプレッシャーをかけてくるんだもの。池添の言う「力があるから逃げ馬について来る。ペースも流れる。競馬ってそうだから」っていうのがこれ。
そりゃこれだけ速ければ池添だって速いなと思う。それでも緩めたらただ交わされるだけだし、持ち味を生かすためには行くしかない。ついてこられた以上どうにもならないのは逃げ馬の難しいところでもある。
ここで注目したいのが橙ウィルソンテソーロで、こちらも実にいいスタートを切っているんだよね。他馬よりすでに半馬身の前に出ている。
レース後松山は「スタートが速くて外からいいリズムで運べました」と話しているように、本当にいいスタートだった。返し馬で急速に発汗したあたり、これだけいいスタートを切って抑えるとむしろ折り合いを欠く可能性もあるし、番手というやり方は全然ありだったと思う。
結果的に超ハイペースを2番手で先行して8着に負けた。たぶんこれだけ見れば「なんでハイペースを先行したんだ」と言われるだろう。
ただそれはあくまで結果論なんだよな。だって仮に抑えて中団から運んだとして、ドンフランキーがスローペースで逃げたら今度は前を捕まえきれない可能性が出てくるんだから。
もちろん逃げ馬が3、4頭くらいいれば事前にハイペースの可能性のほうが高くなるが、なら今回そんなにハイペースになる可能性が高いメンバーかというと決してそうでもない。今回のウィルソンテソーロについては『結果的にスタートが良過ぎた』点が敗因の1つになりそうだ。
競馬って不思議なもので、『良過ぎると負ける』ことが多々あるんだよな。レースが上手く行き過ぎるとむしろ脚が溜まらないことがある。原だったら良かったかどうかは後述。
スタートがかなり良かった分前に行ったら、ドンフランキー単騎なのに33.9、もちろん本人も速いとは感じていたろうが、これは自分自身も驚くハイペースだったんじゃないかな。
クリストフ・ルメールはいつも上手い
今回レース前に取り上げられることの多かったトピックの1つが、オメガギネスのルメールだろう。これまで戸崎が騎乗してきた馬が急にルメールに変わり話題になった。
これはあくまで回顧であって、それまでの経緯について書くコーナーではないから詳細は省くが、そんなルメール騎乗のオメガギネスが引いたのは5番だった。正直、随分内を引いたなと思ったよ。
というのも2走前に好時計で勝ったグリーンチャンネルCは16頭立ての9番から外の3番手を確保できていた。前走の東海Sも5枠10番から外の3番手を確保できている。どちらもしっかり揉まれていない。
それが今回引いたのは3枠5番だ。ルメールだったら内で包まれることを避けると見ていたが、実際内に入れようとはしていない。
一旦ここで前を走る黒ドゥラエレーデのムルザバエフに寄られる不利があった。まー、これはスタート後のポジション争いではたまにある斜行で、ムルザバエフに過怠金3万の処分が下っている。
ムルザバエフもドゥラエレーデの末脚が切れない以上、包まれたくない。その分外に張った形だが、張り過ぎて外に迷惑をかけたパターンだな。
不利を受けた赤オメガギネスだが、すぐに立て直して内に入れずに、結果、青ガイアフォースの前まで来てしまった。本来であればガイアの長岡はオメガに前に入られてはいけないのだけど、ルメールの外のブロックが絶妙。
結果、赤オメガギネスは青ガイアフォースの前に入ってしまったのだ。普通であればガイア長岡(新潟長岡にこんなパチンコ店がありそう)にとってはポジションを取られた以上、後手に回る。
余談だが、ガイアは新潟の長岡どころか新潟にもなかった。代わりに長岡駅から徒歩15分のところにガイアというアパートのようなマンションのような物件はあった。築13年。家賃は7万ほど。長岡で駅から徒歩15分で7万は高い気がするな。
ガイア長岡
https://www.homes.co.jp/archive/b-7474447/
閑話休題。普通だったらオメガのほうがポジションを取れたわけでこちらが有利になるものだが、前提として今年は過去2番目タイに速いペースだったことを思い出してほしい。
これにより、ガイア長岡は後手に回ったロスが帳消しされている。別にラッキーだけで2着に来たとは言わんが、ロスがなくなるレースであったことはここに記しておく。
ここまで書いたようにルメールは包まれることを回避し、外に出して自分の仕事をしているのだが、ここからオメガギネスはまるで伸びなかった。
この馬の場合、敗因はペースというより内面の問題ではないかな。先週の追い切りで先導する馬のペースが速すぎて全体時計が速くなり、今週も追い切りが予定より速かった。
大和田師は「これまでは十分に間隔を取って使ってきましたが、タイトなローテーションが影響したのかもしれません」としているが、中3週で使いながら先週今週とジョッキー乗せて速い時計出した分、その反動がやってきた可能性は十分ある。
ただGIはぬるい仕上げじゃ勝てないのもまた事実。攻めないと獲れないし、攻め過ぎてもいけない。これはもう微妙なサジ加減だし、馬だけでなく陣営の経験値という面で少々足りなかったかなと思う部分だ。
2枠の受難、1枠の悲しみ
話は冒頭に遡る。これは金曜の枠順を見たマスクの感想だが、5つ挙げた中で3つが内枠に関連することだった。
そもそも揉まれるより外前にいたいイグナイターが、フェブラリーで良くない最内枠を引いてしまい、芝から参戦したシャンパンカラーやカラテ、ガイアフォースも真ん中から内を引いてしまった。
東京のダート1600mは芝スタートになる分、外枠のほうが芝を走る距離が長い。芝スタートの外枠有利は他のコースもそうで、阪神ダート1400なども同じような傾向が出る(そもそもダートは外枠有利ではあるが)。
実戦で砂を被ったこともないシャンパンカラーや、初めての芝スタートになるミックファイアあたりはどう考えても外枠のほうが良かっただろうし、そのまま消した。
ドゥラエレーデの2枠4番も歓迎の枠とは言えない。
☆ドゥラエレーデの好走パターン
国内の好走
未勝利2着(芝) 1-1-1-1
未勝利1着(ダート) 2-2-1-1
ホープフル1着 2-2-2-2
チャンピオンズ3着 2-2-2-2
東京大賞典3着 2-2-2-2
これはここまでのドゥラエレーデの国内での好走パターンを書いたもの。全部2番手以内であることが分かる(宝塚もセントライトも2番手以内だが、2200mは距離が長い)。
ムルザバエフとの相性の良さがよく取り上げられる馬なんだが、適性距離で2番手以内を取り切っている影響もあるんだ。逆に言えば『3番手以下だと脆くなる』。
先ほど触れたように、ムルザバエフもこの馬が包まれると良くないことはよく分かっているため、なんとか外に出そうとしたら赤オメガギネスあたりに不利を与えてしまった。よろしくない騎乗だよ。
これは2走前のチャンピオンズCのスタート後。赤ドゥラエレーデが包まれたくないから桃レモンポップの外に切り返そうとして、青グロリアムンディに不利を与えている。
大きな斜行ではないが、この時も同じことをして、不利を受けているのはルメール。いつかもっと大きな制裁を食らいそうな予感しかしない。
ムルザバエフは以前から何度か回顧で斜行について触れている。クリーンかというと全然そうでもないからあまりマスクは評価が高くない。技術とかそれ以前の部分の話。
残念ながらドゥラエレーデは初速の違いでハナどころか2番手にも行けず、ただ他馬に不利を与えるだけの存在となってしまった。
ホープフルの前半3Fが36.0、2走前のチャンピオンズの前半3Fが36.4、東京大賞典の前半3Fが36.9。今回が33.9。そもそものテンが2秒以上速く、自分の形に持ち込めていない。
たぶん外の2番手で前に壁がなければ、多少速かろうがもう少し粘れるかもしれないが、このように周りを囲まれると苦しいね。
チャンピオンズの回顧にドゥラエレーデについて『今回に関しては3、4コーナーで緩んで息が入っているのがだいぶ大きい。するとこの先負荷の掛かるレースは最後止まると考えられる。かしわ記念はメンバー次第でありだと思うが、フェブラリーSとなると今回ほど楽なペースにはならないだろうから疑わしい』と書いた。まー、そういうことだ。
同じマイルでもかしわ記念はここまでテンが速くない。外からスムーズに2番手が取れる枠であればまた見直し。基本テンの掛かる1800~2000くらいで狙う馬なんだろう。
展開が向いただけでGIはなかなか勝てない
☆24年フェブラリーS
33.9-37.8
12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9
何度も書いているが、今年のフェブラリーSはハイペースで、かなりの前傾戦だった。
1着ペプチドナイル 4-4
2着青ガイアフォース 8-8
3着白セキフウ 14-14
4着黄タガノビューティー 11-9
5着緑キングズソード 11-12
当然後ろが有利になるのだが、能力的には緑キングズソードだってもっとやれていい。
ところがこの3、4コーナー中間の映像を見ると、緑キングズソードが少し内を向いているのがお分かりだろうか。
これは馬が内のほうを凝視しているのではなく、体全体が右、つまり外に張っている。鞍上の望来は当然左手綱を引いて、左側に重心を掛ける。そうなると馬が左、つまり内を向く。
望来がレース後「3、4コーナーで外に張り気味で、脚が溜まり切らなかったですね」と話しているのがここ。これまで左回りでは6、5着だった馬だが、本質的に右回り向きなのかもしれない。
緑キングズソードは外に張っている以上、大外を回せばその分更に馬が外に飛んでいってしまう。望来は外に飛ぶことを防ぐ意味もあって、あえて水スピーディキックの内、つまり青ガイアフォースの後ろに入っていくプランを選択するわけだ。
まー、これに関しては至極妥当な案だったと思う。ジョッキーどうこうというより、明らかに張っている馬の問題だしね。
ただ外を回せなくなってしまった以上、緑キングズソードの望来は馬群を捌くしかない。
すると直線狙うところは赤オメガギネスと青ガイアフォースの間のスペースが現実的になってくる。
ただ黄タガノビューティーが少し外に寄りながら走ってきたんだよな。裁決にもカウントされていないように、この程度の寄りはよくある話だからタガノが原因でキングズが負けたなんて言わないが、これで、赤オメガギネスがより外に寄り、緑丸で囲んだ部分の進路がなくなってしまった。切り返すしかない。
これ、オメガギネスが仮に状態万全だとして、脚が残っていたらどうだったんだろうと少し考えてしまう。
もちろんタラレバではあるんだけれど、オメガが伸びていれば黄タガノビューティーが外に出せず詰まっていたかもしれないし、その後ろをついてきたキングズソードにもっとスムーズに進路が与えられていた、かもしれない。
まー、タラレバでしかない。そもそもオメガが伸びていたらそれ以前の部分の展開が変わっていた可能性のほうが高いし、キングズソードにしても進路少し入れ替えただけで特段大きな不利ではない。結局コーナーで外に張ったのが敗因。
現状は右回りの馬なのかもしれないな。かしわ記念が左回りになる以上微妙なところだし、帝王賞は2000m。JBCを勝ったとはいえ本質的に2000は少し長いタイプだけに、最後甘くなるシーンは頭に入れたい。
右回りの1800、つまりアンタレスSあたりが具体的な候補になると思うが、アンタレスはGI馬が59kgになる設定なんだよな。JBCは今年佐賀で右回りだが、2000だしなあ。狙いどころが難しくなってきた。
上手いなと思ったのは3着だった青セキフウの武さん。後方待機から外に出すパターンだったんだが、橙レッドルゼルに被せられる前にコースを先取りして、緑スピーディキックの外に出している。
ここまでの3枚を見て分かるように、緑スピーディキックとの間に一切スペースを開けていない。
普通遠心力でもう少し外に膨れていきそうなものだが、丁寧に締めながら回ってくるものだから橙レッドルゼルは更に外に行くしかない。
仮にここでスピーディキックとの間にもう少しスペースが開いていても、特にレッドが突くことはなかっただろうが、こういう細かいロスを削った分、最後のタガノビューティーとのハナ差に繋がっているとも考えられる。
それ以前に、これはもう画像ではなくVTRで見ないと分からない部分なのだが、武さんが直線手前まで追い出しを待っている。
セキフウという馬はどうしても集中力が足りない。昨年秋にこの舞台の武蔵野Sで8着になってしまっているように、どうしても競馬を投げちゃうところがある。最後だけ集中して走らせる好騎乗。
たまに武さんがやるやつだ。中団~後方でとにかくロスを削って、最後だけ脚を使わせる手。力が一歩足りない馬でやる。ついていった馬が止まる展開でギリギリまで待っての差し込みだから、正直今後セキフウがGIを勝てるかというと難しい。
ただし、武さんがレース後「もう少し湿った馬場なら」と言っているように、この馬は馬場が湿るとグリップが変わるのかより差し込んでくる点に注意。昨年エルムSを差し切った時も不良馬場。中央の砂で湿っている場合に買いたい。
セキフウとか完璧に乗られているのに勝てないあたり、展開が向いただけではGIはなかなか難しいのだなと改めて思うところだ。
話が飛び飛びになるのは老化の一種
14着オメガギネスに触れ、その後12着ドゥラエレーデに触れ、上位にいくと思いきや5着のキングズソード、3着セキフウと飛び飛びに触れていく…。
これはもう老いだね。話に一貫性がない。経験上話がバラバラになるのはつまり老人の特徴だと感じているのだが、つまり今のマスクもこれにあたる。年は取りたくないものだ。
まるで順番が逆だが、2着ガイアフォースにも触れておきたい。前述したように後手に回ったことがむしろプラスに働いた側面もあるのだが、もう1つ見ておきたいのは4コーナー。
ここで青ガイアフォースの右斜め前に赤オメガギネスがいることが分かる。こちらも前述したように、赤オメガギネスは揉まれたくない。そのため進路を外外にとっていく。
すると青丸で囲んだ部分のスペースがぽっかり空く。前には誰もいない状態で、外にはスピーディキック。これが強力な人気馬ならまだしも、客観的に見てスピーディキックの力はどうしても一枚落ちる(他馬に比べてという話)。そのためガイアフォースを締めきれない。
結果青ガイアフォースがスムーズに外に出してコースを作れていた。ただ誤解しないでほしいのは、スピーディが締めきれなかったからスムーズだったのではなく、そもそも長岡がスムーズに外に出せる位置にいたから外に出せている。
つまり運が向いただけではないという話だね。こういう注釈を入れておかないといけない、面倒な時代になったなと正直思うところだ。
☆ガイアフォースのこの1年
23年アメリカJCC 1番人気5着
12.2-11.4-12.7-12.5-12.5-12.0-12.6-12.4-11.9-11.3-12.0
23年マイラーズC 4番人気2着
12.3-10.7-11.4-11.7-11.3-11.1-11.5-11.5
23年安田記念 8番人気4着
12.0-10.8-11.4-11.8-11.6-11.1-11.2-11.5
23年オールカマー 2番人気5着
12.5-11.1-12.4-12.5-12.6-12.4-11.5-11.5-11.6-11.5-12.4
23年天皇賞秋 7番人気5着
12.4-11.0-11.5-11.4-11.4-11.4-11.4-11.6-11.4-11.7
23年チャレンジC 1番人気6着
12.5-11.3-12.5-12.1-11.5-11.9-11.9-11.7-11.6-11.8
24年フェブラリーS 5番人気2着
12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9
このラップを載せるのが面倒で仕方ないのだが、以前から言っているようにガイアフォースは分かりやすい傾向のある馬。
太字は最初と最後の1F以外で、1F12.0以上掛かったところ。パフォーマンスが落ちているアメリカJCC、オールカマー、チャレンジCは全て前半部分に1F12秒台が入っている。つまり緩んでいる。
対してパフォーマンスが上がっているGIとマイラーズCは前半から11秒台が並んでいる。ガイアフォースは断続的に流れたほうがいい、と以前から書いている通り。
天皇賞の回顧に書いたように、マスクはそれも踏まえて2月は東京新聞杯や中山記念あたりで狙う予定だったのだが、フェブラリーSは盲点だった。確かにフェブラリーも前半から断続的に流れやすいレースだ。今回はもう砂を走れるかどうか、そこだけだった。
『ガイアフォースは舞台を問わず走る』と言われているが、逆だよな。思い切り舞台を問う馬。緩むとチャレンジCレベルでも平気で飛ぶ。
問題はここで、同じ左回りということで船橋のかしわ記念を使ってきた場合が怖い。かしわは一周ということもあってここまで厳しいペースにならない。緩むと数字が一気に落ちてくる馬だから、強力な逃げ馬が欲しい。
そんな馬が今そうそういないんだよなあ。サルサディオーネみたいな馬でもいいが。ペースメーカーがいたほうがいい。今後も芝、ダート問わずに似たような適性が出てくると思われる。少なくとも今日のレースが終わってもそこまで本格的なダート馬とは思っていない。
勝ち馬のペの字も出てこない回顧
どうなんだろうな、これ。今ここまで書いてちょうど1万字くらいなんだけど、ペプチドナイルが登場したのは結果欄に書いたくらいで2、3回だ。
別に勝ち馬に敬意を欠いているとかそういう話ではなく、パトロールで触れる場面が全然なかっただけの話。脚元が弱い馬をじっくり待って、ここまで開花させた陣営の勝ち。トーンも非常に高かったのだが、ワンターンで一発回答だったなあ。
予想には『意外とワンターンが合いそうなペプチドナイルはワンチャンのワンチャン』と書いた。
☆23年大沼S(函館ダート1700m)
6.9-11.3-11.9-12.7-11.7-11.9-12.3-12.0-12.4
頭にあったのは昨年の大沼Sだ。このレースでペプチドナイルは序盤逃げたんだけど、11.3-11.9と速いラップを刻んで、一度緩めたところでボイラーハウスがまくってきて、11.7-11.9とまた速くなってしまった変則ラップレースだった。
いくら1700とはいえ、残り1000mから11.7が入ってくるかなり厳しいレース。なのに一度2番手に控えた後にまた伸びて、2着に3馬身差つけて圧勝している。
中盤速いラップを刻んでも耐えられるところをこの大沼Sで見せていたから、ワンターンで断続的に流れるフェブラリーSは向いている可能性がある、という判断だった。そういえばこの大沼Sの2着はセキフウだったなあ。
まー、ワンターンと一周は別物だからワンチャンのワンチャンと書いたのだがね。ここまで一気に変わってくるか。
あと調教師が言っていたように、5枠9番という枠も良かった。揉まれると昨年のエルムSで3番に入って、1番人気13着だったああいうことが起きる。枠の感想にも書いたが、今回の外枠はドンフランキー以外引く馬が多く、5枠9番でも外から先行馬が多くやってこない状況。
これがもし1番とか2番を引いていたらここまで上手くは行っていない。以前より馬群の中でも運べるようになっているが、たぶんポジションがもう1列下がるだろうし、枠運もあった。
ただこれまで逃げているように先頭でも物見することがそうない分、早め先頭の競馬が可能だったことなど、対応力があった点も見逃せない。
ベテルギウスSで周りを囲まれながら伸び返して勝ったあたりで馬が変わった感じはあったが、前走本命にしてしまった。少し早かったね、タイミングが。
当然毎回こんなパフォーマンスが出せればもうすでに重賞いくつも勝っている。条件を問うことに変わりはない。かしわ記念は枠次第。以前よりテンに行けるようになって適性距離が短くなっている感じがあるから、帝王賞などは疑っている。もちろん単騎逃げなら話は変わるが。
ドンフランキーはただ大きいだけじゃない
負けた馬の話もしておきたい。4着タガノビューティーは完全に展開が向いている。
このレース、超ハイペースだから差し馬有利だったのだけど、確かにこの展開を4番手から勝ったペプチドナイルの内容はいいが、逆に言えば4番手にいたペプチドナイルを交わせなかった差し馬はどうなのだろう、という思いがあるのだ。
タガノの場合前走の根岸はスローペースの1400でスタート失敗だから完全にノーカンでいいと思うが、これだけ展開が向いても4着という見方もある。
ブリンカーを着けて安定感は増したし、かしわ記念もある程度上位には食い込めると思うが、単となるとちょっと厳しいのでは。南部杯は馬場が速過ぎる年が多いし、脚質から苦しい。ようやくフェブラリーに出れた今回が絶好のチャンスだった可能性が高い。
6着レッドルゼルは、中間のテンションの高さを考えるとよくここまで落ち着いたと思えるパドック。以前よりズブくなった分1400~1600でもう少し落ち着いていればというところ。
少しずつ動けなくなってきているだけに、次走から移るであろう新厩舎で、どういう味付けでくるのか見たい馬。そろそろ下げる気もするが。
7着ミックファイアは最後の最後、内目から地味に伸びている。正直初の芝スタートで内枠なんてかなり厳しい、ノーチャンスの条件なのに、それでも内から伸びたあたり内容に光るものがある。
東京大賞典で人気になって飛んでいるんだけど、この馬に2000は本来長いと思っている。今日の内容を見てもこの馬はマイラー説が強まった。かしわ記念となると展開によりそうだが、外目の枠ならかしわでも買いたい。マイルグランプリなどに出られたら59kgでも圧勝しそう。
でもマイルグランプリには出ずに、同時期のJBCを目指すのかもね。2000は長いと思うが、それでもチャレンジする姿は称賛に値すると思う。
今回の取り扱いが難しいのは8着ウィルソンテソーロ。正直今日は2番手から進めたのが敗因であって、これをミスと言われればそれまでなんだけど、前述したようにあのスタートで下げるのもね。
これでもし下げてスローになったら、それはそれで叩かれる。ハイペースになったのは結果論であって、先行策自体は全然ありえる手だったと思うね。
原だったら勝っていたかというと、それはまた違う話。原はスタート決めたら控えていたかなんて分からないからね。松山だったから飛んだってのは理由になっていない。
確かにここ2戦、原に変わって連続2着ではあった。字面だけ見たらここで下ろすのは非常に不憫ではあるんだけど、『2走前は出遅れて2着、前走は逃げて馬場の重いところを通って2着』と書くとどうだろうか。結局切り取り方にもよる。
まー、マスクは今回原が替えられた件については非常に不憫に思っているし、原で見たかった気持ちだってもちろんある。でもそれとこれとは別の話。突然の乗り替わりだってあるのがこの世界。原が乗る機会があれば、そこでまた頑張ってほしい。
脚にボルトが入った馬を、この中間コースに入れて攻める姿勢を見せてきた。リスクを伴うから手探りだったと思う。馬主は置いておいて、攻めに行った厩舎を覚えておいてほしい。あえて行数をとって書き記しておく。
攻める姿勢と言えば11着イグナイターもそうだよな。本追い切りに騎乗騎手を乗せられないなんていう、なかなか理解に苦しむルールを乗り越えて挑戦してきてくれた。
最内枠の時点で不利。それでもハイペースを前受けして、直線一旦先頭だもんね。濃いよ、内容が。不運な年に当たってしまったが、年によっては通用したと思わせるレベルのレースだった。
何より凄いのは11着に負けた日のうちに、次走ドバイが発表されたこと。普通これだけ負けたら次海外行かないからね。もうそういう次元じゃないんだよな。確かに元は中央馬なんだが、こういう馬が地方から出てくるのは非常にいいことだと思う。何目線だって言われそうだが。ドバイ遠征を応援したい。
14着オメガギネスはまだまだこれから。考えられる敗因についてはもう書いたから割愛。大敗して弱いなんていう意見すら見られたが、力のない馬は東京ダート1600mで高速馬場でも1:34.3なんて数字で走れない。
まだ線が細めで成長の余地があるし、パドックやゲート裏でのテンションが高かったりと全体的に幼い。まだ4歳。これから。
秋の武蔵野Sを楽しみにしている。そもそももっと軽いダートのほうが良さそうな馬だから南部杯が合う馬だと思うが、現状の賞金では無理そうだから来年かな。今のテンションだと1800も長くなって、マイル以下、いずれは1400の馬になってきても正直驚けない。
順番は前後するが、9着ドンフランキーは今回のフェブラリーで一番強いと思ったね。長いマイルで、33.9-37.8なんていうハイペース前傾戦。普通の馬なら大敗している。
この流れで、一度イグナイターに出られながら差し返して残り200手前まで先頭。残り100まで3番手付近にいたのはちょっと凄い。
しかも今回は骨折明けで急仕上げ、まだ本調子ではないにも関わらずやってのけてしまうんだから、これは無事なら秋以降、短いところを全部持っていくかもしれないね。
使うごとに強くなっていて、これはただの大きい馬じゃない。国内の適距離ならリメイクでも倒せなくなっているのでは。基本マイルは長いが、南部杯でも見たい馬。
今年のレベルは低いのか
☆24年ヒヤシンスS 34.6-37.2 1:36.3
12.2-10.9-11.5-12.1-12.4-12.5-12.3-12.4
☆24年フェブラリーS 33.9-37.8 1:35.7
12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9
同日の3歳オープンのヒヤシンスSが1:36.3だったことを踏まえると、そこから0.6秒差だった今年のフェブラリーSのタイムは正直、微妙に思える。
もちろんこれは単純にヒヤシンスSの数字がいい(アンクエンチャブルの内容がだいぶいい)のもあるが、前述したようにカネヒキリは同じ流れを12.3-12.3で上がってきた。そこからは数段落ちるように思う。
ただし『レモンポップが出ていたらレモンが圧勝していた』というのはナンセンス。いない馬を話に混ぜることになんの意味もない。ダービーの結果見て、ディープインパクトがいたらディープが圧勝していたって言うようなものだ。
そもそもレモンポップがいれば展開自体変わって別のレースになっているんだから。比較する必要性もない。
ただこれまでの数字を見ても能力だけならレモンのほうが上。今後もこういう一枚抜けた馬はサウジアラビアを選ぶことを考えると、フェブラリーSの立ち位置に関しては検討の余地があると思うね。
サウジアラビアに頭下げて、サウジカップの時期を変えてもらうのは基本的に無理だ(この時期やるからアメリカから馬が来る)。
あくまで一つの案だが、マスクはフェブラリーSと武蔵野Sの施行時期を逆にするのも手かなと思っている。するとJBCと被るから、JBCを12月1週目にする。つまりチャンピオンズの週。
ならチャンピオンズをどうするかって話になるんだけど、5月3週目、平安Sの週にやる。すると検疫的にサウジ組が出やすい。1900mで施行すればかしわ記念とはそこまで路線が被らないし、ここを使えば6月4週目の帝王賞に繋げやすい。
平安は土曜開催だが、もう今日曜にこだわっていたら、設置場所自体がないと思う。左回りにこだわる必要もない。なら左回りにこだわってる今のチャンピオンズに毎年アメリカから馬は来ているのか?という話。
まー、いずれにしてもここまで変更するとなると大工事だ。相当な検討が必要だと思う。
仮に11月にフェブラリーSが移設すると、名前はノベンバーSになるのか?それはまた準オープンみたいで嫌だなあ。