明日の叙景 2018年・中国ツアー日記 2日目
朝5時に宿を出発して、高速列車に乗って上海に向かうスケジュールである。
高速列車の駅はまるで空港のようで、建物の中に入るだけでも荷物チェックや身体検査がある。7時の列車を予約しているのに何故か6時から改札前で並び始める。予約してあるのに、なぜ自分たち含めみんな並ぶのかとYiQiに聞くと、中国人はせっかちだからだと答えが帰ってくる。確かに、それは感じる。
KFCのエッグマフィンとコーラを朝食としてもらい、時刻通りにいざ改札が開くと列は崩壊し我先にと人がエスカレータに向かい始める。改札ではパスポートのチェックもあるが、スタッフの手際が悪く詰まり気味。
列車は日本の新幹線とほぼ同じで、4時間程乗っていた。途中から同じ間隔で植えられた木と霧しか見えなくなり、正直かなり不気味であった。初日の疲れもあり爆睡し北京に到着。
北京で一緒に演奏する現地のバンドAstheniaと駅で合流する。週末はFROM AHSES TO THE LIGHTというイベントで日本のバンドShuhari, Archaique Smileとも共演する。どうやら出演者はみな同じ宿に泊まっているようで、ホテルのロビーは賑わっている。
ホテルは中国国内でこの先よく利用することになる一般的なホテルチェーン店である。綺麗で、wifiも繋がるので快適である。多くの人はご存知かもしれないが、中国国内のwifiでは基本的にTwitterやFacebookなどはブロックされており、それらを利用したい場合は香港simが搭載されているスマホにテザリングしなければならなかった。
少なくともbandcampと中国版Twitterのweiboは現地のwifiで繋がるので、適当にネットサーフィンしたりする。
昼食のタイミングで出演者が一堂に会し、Archaique Smileのメンバーと同じ卓を囲んで食事。これまで食べた中華料理についてお互い語る。
食事を終えると、それから数時間ホテルで昼寝をし、ライブハウス「育音堂」にサウンドチェックに向かう。
見る人が見れば写真で理解できると思うが、イギリスのパブ風のライブハウスである。今年はその本家であるイギリスのUnderworldでもネクロ魔バンドで演奏したが、本当に何もかもがそっくりだった。会場のオーナーと思わしき人物も西洋人である。
小型犬が放し飼いされており、明日の叙景メンバーの足元にも寄ってくる。何故かはわからないが、この先々で行くライブハウスやホステルでは高確率で犬か猫が飼われていた。
今日は2番手なので、3番手であるAstheniaのライブを観ながら機材を準備する。Astheniaは話を聞いてみると、同世代の大学院生であった。互いの大学の事情や音楽活動のやり方について意見を交換して盛り上がった。
初日に共演したBLISS-ILLUSION (虚极)もそうだが、中国でポスト系のサウンドをやっているバンドはみな高級機材を揃えている。バンドをやっている人も、聴きにくる人も富裕層が多いなと見ているとわかる。Astheniaはギタリスト毎にAxe-Fxをしっかり持っているし、ベースやギターもいわゆるハイエンドモデルである。廉価版の楽器を使っている出演者は自分くらいである。
Astheniaのサウンドはポストブラックメタルにプログレッシブメタルコアの要素を入れたような音楽性で、自分たちが日本でたまに共演するlantanaquamaraに近い感じ。
明日の叙景のリハーサルはいつも通り終了、出演者数が少ないから時間に余裕があるのでモニターまで細かくチェックできる。
リハーサル後もAstheniaメンバーとわいわい談笑してるうちに開演。
1番手のArchaique Smileはツアー直前に体調不良でギタリストが1人参加できなくなってしまい、3ピース編成で短めのライブ。ノスタルジックなメロディを爆音で奏でるインストのポストロックバンドである。
次に自分たちの出番が始まる。ライブが始まる頃には会場にたくさんの人が入っていて雰囲気もかなりいい感じ。2回目のライブであったが慣れきれず、力加減を間違えた感じもあったが無事、50分のセトリを演奏。
最初の方でモッシュが起こって嬉しかったが、あれはのちに登場するツアースタッフが暴れていただけだったと判明。その他、ライブ前方がほとんど女性だったり、お客さんがライブ中にスマホを弄ってSNSに投稿をしていたりと普段見慣れない光景に少々動揺した。しかし、反応はとてもよく、マネージャのYiQiもかなりノリノリでライブを観てくれていた。
ライブ後にはIPAを飲むことにしていたので、バーカンに行く。美人かつおしゃれな女性スタッフにドリチケを渡してIPAを頼む。どうやらIPAはドリチケでは飲めないようだが、おまけしてくれた。ライブを観てくれていたみたいで、めっちゃいいギター演奏だったと言われ、飲酒スイッチが入ってしまう。
物販の様子を見ていると、結構CDが売れている模様。キャッシュレス大国中国はライブハウスの物販もQRコードでの決済である。
3番手はAsthenia、彼らは基本的にはギターボーカルの宅録プロジェクトであり、その楽曲を元にメンバーを集めてライブをしているそう。ポストブラックメタルよりもプログレメタルコア色の方が強く、コード進行やリズムも凝っている部分が多い。
トリはshuhari、3ピースのインストバンド。ディレイエフェクターを利用したミニマルなギターフレーズを中心に楽曲は作られている。この時点で、酒を飲まない明日の叙景メンバーからドリチケを獲得した私は2杯目を飲み始めている。このライブハウスのドリンクはおそらく500ml程ある大ジョッキだったので、結構酔っ払っており、サウンドの陶酔感とともに楽しくなっていた。
(なんだか盗撮してしまった感じになってしまったが、上の写真にも写っているように、どのライブにもゴスorロリータのお客さんがいるのはとても印象的だった。)
ライブを終えると、恒例になりつつあるサイン会、写真撮影会が開始。以前は漢字のサインをしていたが、今回の中国ツアーのことも踏まえて事前に英字サインを練習していてよかった。
ライブを終え、夕飯は少々遅い時間にスタート。深夜だったので食事は軽めにして欲しいと伝えたらコーラの代わりにスプライトがでてくる。そして、頼んだ本人のはずのYiQiもなんでスプライトなんだろうと言っている。これは中国ツアー最大の謎となった。
今日の会場には日本語が話せ、日本のハードコアパンクが好きな現地のツアースタッフ?がいた。やはり話を聞いてみると、ハードコアパンクは中国ではあまり人気がないそうだ。そういう意味で言えば、WANIMAを始めとするバンドが広く歓迎されている日本は相当ハードコアパンクの土壌があるなと思った。
宿に帰ると玄関のところに何やらカードが落ちている。
国と宿がグルになって美人局をやっているという噂は聞いていたが、これのことだろうか?これが中国のオフィシャルTCGなのだろうと納得した。土産物としても十分である。就寝。