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小説「だから、男女は分かり合えない。」序章
序章「彼の口ぐせ」
「あ~あ、もったいな」
昔、彼から貰ったグラスを手にとり、少し残っていた氷とウイスキーをシンクに流した。
そんな私の様子を見ながら、彼がそう言った。
その時だった。
私の中で何かが、ぷつんっ、と切れた音がした。
彼と同棲を始めた日から、2年の時が流れた。
新築の2DK。駅から少し歩くけれど、家賃は想定内だった。本当はもう少し広い部屋が良かったけど、早く一緒に住みたかったから、即決したんだっけ。
家事周りは、私がすべて担当していた。
同棲前は「2人で分担しようね!」なんて話をしていたはずなのに。
でも、実際に住んでみたらそんな気配は一度だって感じられなかった。
彼は最後まで、脱いだ服を表に返してから、洗濯機に入れられない男だった。
それでも彼のことを嫌いになったわけじゃないし、離れる理由はなかった。寂しい時は一緒にいて欲しかったし、よく遊びにも出かけた。ケンカも沢山したけど、彼に救われた夜もあった。居心地は良かったんだと思う。
うん、多分、そんな感じ。
ただ、今思うと「好きだったかどうか」はわかんないな。もう確かめようもないし。
「あ〜あ、なんか疲れたな」
そんなことを思いながら、今晩は1人でワインを飲んでいる。