大麻グミと危険ドラッグ
報道されているように、各地で健康被害が発生した大麻グミの成分であるHHCH(ヘキサヒドロカンナビノール, 図1右)が12月2日から規制されました。既にHHCHを含む製品の製造、輸入、販売、使用などは禁止¹⁾になっています。大麻の成分(THC, テトラヒドロカンナビノール, 図1左)そのものは既に違法なので、当時は未規制であった構造と作用が大麻に似ている化合物を混ぜた食品が売られていたのです。こうした化合物の構造をわずかに変えて規制をかいくぐる手法は約10年前にも問題になった危険ドラッグと同じです(当時は脱法ドラッグや脱法ハーブと呼ばれていました)。
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HHCHは規制されましたが、現行の法律をかいくぐった危険ドラッグが今後も売られ続けるでしょう。現在の報道²⁾を見たところ、HHCP(ヘキサヒドロカンナビフォロール, 図2)³⁾を含む食品が売られているようです。このHHCPもTHCやHHCHとよく似た構造をしています。当然ながら、規制外だからといって安全なわけではありません。既にHHCPの規制に向けて動き出しています。
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医薬品の場合は安全性や副作用等などのリスクについても調査されており、十分な知見を集めて国から承認されなければ市場に出ることはありません。例え他国で承認されている医薬品でも、自国で承認される必要があります。一方、違法薬物や危険ドラッグは作用だけを感覚や目視で調べただけです。安全性や有害性などのリスクは考慮されていません。中毒者や依存症者の治療を通じての知見が後から得られるだけです。よって、低用量で中毒になりそのまま命を落とす場合や、依存症の治療が困難な可能性も十分に考えられます。また、医薬品は含まれる不純物の安全性も調査されており、それを証明しない限り承認されません。違法薬物や危険ドラッグはそれも考慮されていません。なので、薬物自体の有害性に加えて不純物の有害性が問題になる可能性があります。本来の薬物よりも有害性が高い物質が含まれている可能性があります。売人は商品が売れさえすればよいので、使用者の健康や人生に絶対に責任を持ってくれません。違法薬物はもちろんのこと、モラルに反した危険ドラッグにも手を出さないようにしましょう⁴⁾。
【参考文献】
1) 群馬県ホームページ, HHCHを含有する製品に注意してください!, https://www.pref.gunma.jp/page/618729.html (2023年12月6日)
2) テレ朝news, HHCH規制で“HHCPチョコ”登場 厚労省「近く包括規制の方針」, https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000326864.html (2023年12月6日)
3) Wikipedia, Hexahydrocannabiphorol, https://en.wikipedia.org/wiki/Hexahydrocannabiphorol (2023年12月6日)
英語版のWikipediaの情報になりますが、HHCPは2021年から出回るようになった化合物のようです。HHCPはフランスでは2023年に禁止になったようです。
4) 危険ドラッグや違法薬物については以下のWebページもご覧ください。
東京都保健医療局, 危険ドラッグってなに? | みんなで知ろう危険ドラッグ・違法薬物, https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/no_drugs//about/ (2023年12月6日)