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元世界No.1ライバーが語る、配信者に最も大切なマインドとは? / プロフェッショナル・インタビュー
本記事は、Profession Hubに参画頂いたライバー「ちゃぶ」さんへのインタビュー記事です。
【ちゃぶ プロフィール】
2017年ごろ、ライバーとして配信を始める。
2018年、芸能プロダクション”ASOBISYSTEM”とライブ配信アプリ”17 Live”が合同プロデュースする、ライブ配信を通して”毎日会える”アイドルグループ「EVERYDAYS」のメンバーとしてアイドルデビュー。
その後も音楽活動と配信活動を精力的に続け、2019年には”17 Live”主催アワード『第3回 ゴールデンフェザー』に日本代表の一人として参加し、個人ライバーとしては世界一の名誉となる「総合個人1位」を獲得。
キャバ嬢からライバーへ
ー最初にライバーをやろうと思ったきっかけを教えてください。
元々、しゃべることや接客がすごく好きで、キャバクラで働いていたんです。それでエンタメの仕事をしているお客さんから「今こういうのが流行ってるよ」「歌配信すればいいじゃん」と紹介してもらい、割と軽い気持ちで始めてみたのが最初のきっかけでした。
ー10年前とかですか?
2017年くらいだったと思います。ライバーが増える前の時期で、ライバーという存在がまだ世間に知られていない時でした。私がやっていた17liveでは世界一を決める大会がすでに始まっていましたが、日本ではあまり知られていなかったと思います。
ーどんな風に始めたんですか?
最初は当然機材もなくて、スマホをただペットボトルに立てかけて、という感じから始めました。
それから人の配信を少しずつ覗いて、何を話しているのかとか、どうやって歌配信をしているのかとか、そういうことを調べました。ミキサーが必要だとか、マイクを買わなきゃいけないとか、一人で全部調べていって。
ー全部独学だったんですね。
あとは機能をファンの方に教えてもらったり。投げ銭って何だろう、この数字って何だろう、視聴者さんってどういう人なんだろう、っていうのを配信で教えてもらって。ファンの方と一緒にアカウントを育てていく過程がすごく楽しかったです。
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ーちゃぶさんは人との距離を縮めるのがすごく上手だと思うんですが、昔からそうだったんですか?それともライバーを始めて変わったんですか?
キャバクラで学んだことが一番大きいですね。「この人にどうやったら好かれるだろう」と考えるようになったのはあの時の接客経験のおかげです。
実際、配信でも同じで。人を楽しませたいという気持ちがあって、それが現実にいる人か、画面越しにいる人かという違いだけなんです。
ーとはいえ、大変じゃなかったですか?
私の接客や楽しませ方は万人受けではなく、10人いたら1人か2人にだけ好かれるようなものでした。だから最初はアンチもすごく多くて。でも、その1人か2人が私のことを面白いと思ってくれるなら、その人に届けようと思ってやっていました。
だけど、やっぱり最初はファンも増えなくて、全然報酬も見合わなくて。3ヶ月はすごく苦労しました。
ーなぜ続けられたんでしょうか?
キャバクラでの教えです。実は水商売の世界でも「3ヶ月、1年、3年」という言葉があって。
最初の壁が3ヶ月、それを超えたら次は1年、その次は3年っていう、それぞれの期間に壁があるという意味なんですけど、一番最初に「3ヶ月芽が出ないなら合わないからやめた方がいい」と教えられて。
その学びを活かして、ライバーになった時もまず3ヶ月は頑張ろうと思ってやっていました。
媚を売ってもファンは喜ばない
ー誰かに相談したりしましたか?
しませんでした。誰かに相談してしまうとその誰かになってしまうと思って。自分を出すことが大事だと思ったので、一切相談しませんでした。
ー話す内容や、キャラ設定も?
はい。私は性格的に気が強い方なので、媚びを売る感じではなく、女王様のようなスタイルでやっていました。もう自分そのままのキャラだったので、無理なくできました。
ーいきなりできたんですか?
いえ、他の配信者さんを見ていてある日気付いたんです。なんと言うか……「なんか媚びてるみたいだな」って感じて。
というのも、ファンがいるってすごいありがたいことじゃないですか。投げ銭なんて、会ってもないのにお金を投げてもらって。そのことにすごい感謝したいのはとっても分かるんですけど、変に「ありがとう」って言うだけの配信で終わっちゃうと、見ている方からすればあまり面白くなくて。
ファンにたくさん感謝はしてるんですけど、その上で悪い意味で媚びるのではなく、「もっと投げたいな」と思わせるような楽しい配信をした方がファンにとってもいいんじゃないの?って思って、そういう配信をしようと心がけるようになりました。
ーでも、そのスタイルって賛否両論ありそうですね。
実際、誹謗中傷も多く受けました。直接的な悪口もそうですし、SNSであることないこと書かれたりとか……他にも同業者からも。ライバーって、視聴者が何千人もいる人よりもランキングが上位になってしまうことがあるんです。それでたぶん、妬みとかもあったんだと思います。
全く傷ついていないと言ったら嘘になりますが、みんなに好かれようとすると悩んでしまったり、ネガティブになったりするので、「好きな人には好かれたいけど嫌われている人には嫌われていてもいい」と割り切ってやってきました。とにかく、応援してくれている人たちの期待に応えることに集中したというか。
そんな風に続けていたら、いつの間にか世界一位になっていました。
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アイドルデビューと、感じた違和感
ーそんな中アイドルとして活動していたのはどういう経緯なんですか?
17liveとASOBISYSTEMとの共同オーディションです。配信ランキング上位の人が参加できるオーディションで、それに合格しました。
ー受かったときはどんな気持ちでしたか?
ライブ配信をしているファンが「この子、アイドルになったら面白いんじゃない?」という感じで盛り上がり、その気持ちに乗っかってオーディションを受けた形だったので、受かったときは正直戸惑って……
でもそれからレッスンを受けたり、実際にステージに立たせてもらって、いい経験をさせてもらったと思います。あ、でも、トレーニングで神宮球場を1周走ったりさせられたのが結構きつかったです。笑
ー何年くらいアイドル活動をしていたんですか?
結局3年くらいです。でもその間にコロナが発生して、イベントがどんどんできなくなって……当時27歳か28歳くらいで、コロナが終わった後にまた頑張るのかと思うと年齢的に厳しいかなと思い、卒業しました。
ーその時、絶望しませんでしたか?
しませんでした。これは多分、自分の性格なんだと思いますが、アイドルって本質的に向いてないなって思ってたんです。私はお客さん相手に接客をするのは得意なんですけど、不特定多数に対して笑顔を見せるのがあまり得意じゃなくて。
ーもう少し詳しく教えてください。
ライブ配信だと、コメントしてくれるのは私に興味がある人だけです。キャバクラでも、その場にいて私と話そうとしてくれている人がお客さんになります。でも、アイドルの現場では私に興味がない人がたくさんいるので、その人たちを楽しませないといけないんですけど、それができなくて。
私に興味がある人は楽しませたいけど、興味がない人たちを無理して楽しませるのはあまり頑張れなかったというか。
色々な経験をして、結局自分自身の軸は変わってなかったんだな、って思いました。でも、その「自分自身を知る」ってことが実は一番大事だったんだな、って思うんです。
うまくいくやり方やヒントはたくさんあるけれど、結局自分に合わなかったら続けられないですし、心を病んでしまうじゃないですか。
実際、みんなを楽しませなきゃと思ってしまう人ほど、ファンがつかないとか、嫌われたとか、ファンを他の人に取られたと思って悩んで辞めてしまうことが多いんです。でも、そこを割り切れる人だったら向いている。
だからまずは、自分の長所と短所をちゃんと知ることが大事だと思います。自分が何をしたら苦しくないか、どうしたら人を楽しませられるかをちゃんと把握すること。
ーそれって簡単そうに見えて、実は自分だけだと難しいかもしれませんね。
私がファンをどう集めたかという方法はもちろん教えられますし、実際に世界一になったので、それは一つの正解だと思います。でも、それが本人に合うかは全然別の話です。
なので私は、たくさん話をした上で客観的に「あなたはこういう配信が向いているんじゃないか」とアドバイスすると思います。
ーちゃぶさんから見ても、「人気だな」と思う人は、自分のスタイルでやっている人が多いですか?
はい。私と一緒に世界大会に出た日本人の配信者たちは、全員が全員キャラクターがバラバラでしたし、配信の仕方や配信時間も全然違いました。上位にいる子たちはみんなそういう個性的なスタイルを持っていました。
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歌をやりたい人は配信をした方がいい
ー今後はどんなことをしていきたいですか?
私はもうライバーはやめてしまいましたが、すごくいい経験をさせてもらいましたし、楽しかったこともたくさんありました。なのでこれからは、今悩んだり行き詰まったりしているライバーの方にアドバイスしたり、支えになれたらいいなと思っています。
ーところで、音楽をやりたいという人にとって、ライバーという選択肢はどう思いますか?
ライブ配信者からアーティストになるというのはすごくアリだと思います。路上ライブがスマホでできるようなものですよね。路上ライブだと、都心のその場に行かないと歌を聴いてもらえないですが、ライブ配信なら全国どこでも歌を聴いてもらえます。実際、私は地方都市に住んでいましたし。
それに、上位に行くとライブハウスを貸し切って、そこで歌を披露できるようなイベントもあります。配信で資金を作って、CDや音源を出している子もたくさん見てきました。配信で見たことがないから「この子のライブを見に行こう」と思ってくれるファンもたくさんいると思います。何か夢のある人には、すごく良い環境だと思います。
ー最後に一言お願いします。
人に言われて自分の性格に気付いたりもするので、誰かがその人のいい部分や悩んでいる部分を客観的に見ることはとても大切だと思っています。今、ライバーとして行き詰まって一人で悩んでいる方でも、まだライバーを続けたいという気持ちがあれば、ぜひ相談してきてくださいね。
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