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「いっけなーい!遅刻遅刻選手権」にエントリーしました☆第9話

◯曲がり角(朝)
京香、曲げた膝を勢いよく伸ばし、ショートレンジのカウンターで修哉の鼻っ柱に頭突きを叩きこむ。
修哉「!…」
何が起こったのか?と言う表情のまま、白目を剥いて鼻血を流し、ゆっくりと崩れ落ちる修哉。
京香「(崩れ落ちる修哉を見ながら)――」
× × ×
菜緒、それを見て、
菜緒「えーーーーっ!!」
菜緒の手の中の自撮り棒は完全に明後日の方向を向いている。
× × ×
驚く審判員=爽太。
爽太「しゅ、修哉!」
アンパイヤマスクを脱ぎ捨て、修哉に駆け寄る爽太。
× × ×
崩れ落ちた修哉を見続けている京香。
京香「仇は討ったよ。みのり」
京香(N)「シュウチンは私と同じ幼稚園ではなかった」

〇回想・公園・12年前
T・12年前
幼稚園時代の京香が砂場で遊んでいる。
京香に影がかかる。
振り向く京香。
両手にミニカーを持って立っている幼稚園時代の修哉。
京香(N)「引越し先で友だちがいなかった私に公園で最初に話しかけてきたのがシュウチンだった」
修哉「一緒に遊ぼ」
京香「(笑顔で頷く)うん」
× × ×
京香と修哉が砂場でミニカーで遊んでいる。
× × ×
近くのベンチから京香の母が文庫本を読みつつ、時々京香と修哉を微笑ましく見ている。
京香(N)「シュウチンは同じ町にある別の幼稚園に通っていた。どちらかというとお金持ちの子が通う幼稚園」
× × ×
京香と修哉、砂場に穴を掘ったりしている。
京香(N)「たまたま住んでいるところが近く、利用する公園が一緒だったらしい。それからしばらく私はシュウチンと良く公園で遊んだ」
京香、修哉に笑顔を向ける。
修哉も恥ずかしそうに京香に笑顔を向ける。
京香(N)「その頃、私はシュウチンのことが好きだったかもしれない」

〇回想・公園・12年前(日替わり)
京香がすべり台で遊んでいる。
京香(N)「たまたまシュウチンが公園に来なかったある日--」
みのりが京香のそばにやってきて、
みのり「一緒に遊ぼ」
京香「うん!」
みのりと京香がすべり台で一緒に遊びだす。
京香(N)「こうしてわたしはみのりと仲良しになった」
京香の母の近くにみのりの母がやってくる。
京香の母がみのりの母に挨拶。

〇回想・公園・12年前(日替わり)
砂場で京香とみのりが人形で遊んでいる。
ミニカーを持った修哉がやってきた。
修哉「…(京香とみのりを見て)」
京香「(修哉に)一緒に遊ぼ」
同い年くらいの男の子が現れ、
男の子「しゅうちゃん、ボール遊びしよ」
修哉「うん」
修哉、砂場の前から去る。
京香「…(寂しそうに修哉を見ている)」
京香(N)「それからシュウチンは私よりも男子と遊ぶようになった」

◯ 回想・公園・12年前(日替わり)
砂場で京香とみのりがお城を作っている。
二人の近くに小さいスコップが置かれている。
砂場にボールが転がってきた。
京香「(それを見て)!」
みのり「ボール」
ボールを追って修哉がやってきた。
修哉「(お城を見ている)…」
京香「ねえねえ、一緒に作る?」
みのり「一緒に作ろ」
修哉「…(京香を見た後にみのりを見る)」
離れた場所にいた男の子AとB。
男の子A「シュウチンっていつも女と遊んでるよな」
男の子B「シュウチンって女好きなんじゃねえの」
修哉「……(それを聞いて)」
修哉、突然、砂のお城を蹴って破壊する。
京香「!」
京香、それを見てショックで泣き出す。
修哉、ボールを拾って砂場から立て行こうとする。
みのり「ねえ、ちょっと!」
修哉、振り向く。
みのり「ねえ!あんた謝りなさいよ!」
修哉「…」
みのりの剣幕に後退りする修哉。
修哉、足元のスコップを踏み、バランスをくずして転ぶ。
修哉が転んだ時に足元のスコップが修哉の右足を傷付ける。
修哉の足から出血。
みのり「(それを見て)大丈夫!?」
傷を見ようとするみのり。
立ちあがろうとする修哉。
修哉の頭がみのりの顔にバッティングする。
京香「(それを見て)!!」
尻餅をつくみのり。
みのりの鼻から鼻血が出てくる。
「うわーん!」と泣き出すみのり。
京香もつられてまた「うわーん!」と泣き出す。
立ち上がった修哉、二人を見て呆然としている。
× × ×
砂場からの泣き声に、少し離れたベンチにいた京香やみのりの母親が慌てて駆け寄ってくる。
足から血を流している修哉。
鼻血を出したまま血が付いたスコップを持って立っているみのり。
みのりの母がみのりを見て、
みのりの母「あなたがやったの?」
みのり「…(呆然としている)」
京香の声「この後、みのりもシュウチンも病院の診察を受けたが二人とも傷は大したことはなかった。しかし…」
(B.O)
京香(N)「それからシュウチンは少し右足を引き摺って歩くようになった」

◯回想・街・12年前
右足を少し引きずって歩く修哉を遠くから見ている京香。
京香(N)「傷のせいというより精神的なショックらしいと母がシュウチンの家の人から聞いたそうな」
(B.O)
京香(N)「そして…シュウチンは公園に来なくなった」

◯回想・京香の家・玄関先・12年前
京香の母とみのりの母が挨拶したりお辞儀したりしている。
京香の母の後ろからチラッと顔を出す京香。
みのりの母の後ろで寂しそうな顔をしているみのり。
京香(N)「みのり一家はしばらくして、町から引っ越した。シュウチンの家とみのりの家で何か話し合いがあったらしい」
京香の母「ねえねえ、二人は仲良しだから写真でも撮ろうか」
× × ×
京香の母がカメラを構える。
みのりと京香が横並びでカメラを見つめている。
京香の母がシャッターを切る。

◯回想・シャッターフレームの中のみのりと京香・12年前
京香の部屋にある、みのりと京香の写真と同一だ。

◯回想・京香の家の前・路上・12年前
みのりの母に連れられ去っていくみのり。
みのり「バイバイ」
京香の母の横でみのりに手を振る京香。
京香「バイバイ」
京香(N)「お互いの喧嘩を無かったことにする代わりに、シュウチンの家からみのりの家に慰謝料がわりの大金が支払われたそうな。口止め料と引越し代金が含まれてたと言われている。このことは母からだいぶ後に聞いて知った…そして」

◯回想・公園・12年前(日替わり)
砂場で一人、お人形遊びをしている京香。
みのりによく似たお人形である。
京香(N)「しばらくするとシュウチン一家も何処かに引っ越したと母から聞いた。理由は知らない。でも私は…」
人形を地面に置いて泣き出す京香。
京香(N)「シュウチンのことはどうでも良く、ずっとみのりのことばかり考えてた」
(B・O)

◯合陣高校・保健室・入口(朝)
「保健室」のプレート。

◯同・内(朝)
ベッドに座っている京香。
椅子に座ってる爽太と菜緒。
爽太「みのりさんのことはよく覚えてます。彼女には悪いことをしました…」
京香「『みのりのせいじゃない、みのりは悪くない』と私が証言出来れば、みのりは引っ越さずに済んだ。親友と別れなくて済んだんだとずっと思ってた。もちろん今はそう私が言ったところで結果は同じだっただろうって頭で理解している。でも私はずっとそのことを引き摺っていた」
爽太「…(一点を見つめ、考え込む)」
京香「シュウチンがこのことをどう思ってるのかも気になってた。元はといえばあいつのせいだから」
菜緒「だから…復讐?」
京香「(頷く)…ICCCでシュウチンと顔を合わせられると聞いてこれは…」
菜緒「チャンスだと…なるほどね…」
京香「…そう…ていうか、菜緒なんでここにいるの?」
爽太「中立の第三者に付き添って欲しいと私から菜緒さんに頼みました」
菜緒「頼まれちゃった。てへ!」
京香「てへ!じゃないよ!それにしても…あの後の展開、笑っちゃったな」
(第10話に続く)



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