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「いっけなーい!遅刻遅刻選手権」にエントリーしました☆第5話

◯別の通学路(朝)
食パン型参加証を咥え、辺りを見回しながら歩く渚。
ゼッケンは「0173」。
参加証から電子音が鳴り続けている。
渚の声「この辺っぼいな。さーて、どこだシュウチン」
修哉らしき学生服姿の男を見つける渚。
参加証の電子音が大きくなる。
渚の声「居たーっ!シュウチン発見!」
渚、ダッシュ。
渚(心の声)「玉の輿、頂き!」
渚、修哉の背中にぶつかる。
派手に地面に転ぶ修哉と渚。
食パン型参加証が渚の口から地面に落ちる。
食パン型参加証を手に取り、笑顔で起き上がる渚。
渚、修哉に、
渚「大丈夫です…か?!」
渚の表情が強張る。
倒れている修哉の顔面がひび割れている。
渚「えっ?!」
倒れていた修哉が起き上がる。
メリメリとライフマスクを剥がす修哉。
修哉とは似ても似つかない知らない男性の顔が出てきた。
渚「えーーっ!うそーーっ!!」
突然現れた審判員姿の男がピーッ!とホイッスル。
審判員「(渚に向かって)173番、失格!」
渚「嘘でしょーっ!電子音が鳴ってたじゃん!フェイクとかありなの?やだーっ!ずるいって!」
ジタバタしている渚。
× × ×
食パン型参加証を咥えた香織が遠くから渚とニセ修哉を観ている。
「0115」のゼッケンを付けている香織。
香織、口から参加証を外し、
香織「ウソー!マジで?!」

◯通学路(朝)
食パン型参加証を咥えたまま走る香織。
大勢の修哉軍団が出没し、体当たりした女子生徒たちの前でライフマスクを脱ぐニセ修哉。
審判員に失格を言い渡されている女子生徒の姿をあちこちで目撃する香織。
香織(心の声)「ニセモノとかズル過ぎるんですけど」
周りの修哉軍団に脇目を振らず走る香織。
香織(心の声)「でもとりあえず…」
香織、走るのをやめて歩き出す。
歩道にベンチを見つける香織。
香織、食パン型参加証を口から外し、
香織「ゆっくりメイクでも直そ」
ベンチに腰を下ろす香織。
香織、食パン型参加証をビニール袋にしまい、少し離れた場所に置く
× × ×
上空から香織を見ている視線。
香織、ポーチからメイク道具を取り出している。
視線は香織が袋にしまって離れた場所に置いた食パン型参加証をロックオンしている。
× × ×
ベンチで手鏡を開いてメイクを直してる香織。
香織の背後の上空に光るものが見えるが、香織は全く気づいていない。
× × ×
上空から香織を見ている視線。
視線がゆっくり香織に近づく。
× × ×
ベンチの香織、顔を上げ、
香織「?…(違和感)」
× × ×
上空からの視線がだんだんスピードを上げて香織に近づいてくる。
× × ×
香織が上空からの視線に気付き、バッと振り向く。
香織「キャッ!!」
上空から飛んできた何かがサッと袋に入った食パン型参加証を咥え飛び去る。
香織「(飛び去った方を見て)えっ何!?ちょっと!!」
× × ×
食パン型参加証の袋を咥えた鳶が上空高く飛びあがり、どこかに飛び去っていく。
× × ×
通学路・ベンチ(朝)
香織、上空高く飛び去っていく鳶を見ながら、
香織「嘘でしょ?!鳶?!」
修哉の声「いや、鳶ではないよ」

◯とある部屋(朝)
学生服姿の修哉がモニターに映る香織を観ながら、
修哉「鳶型ドローンね」

◯通学路・上空(朝)
食パン型参加証を咥えたまま飛んでいる鳶型ドローン。
修哉(心の声)「食パン型参加証から出ている電波をキャッチしーー」

◯通学路・ベンチ(朝)
審判員が登場し、
審判員「0115番、失格」
と、香織に失格を言い渡す。
鳶型ドローンが去っていった方を指差しながら抗議の声を上げている香織。
修哉(心の声)「ーー身の回りから離れた場所に10分以上置いたまま状況に変化がなかった場合、参加証を目がけて飛びかかり、参加証を奪う。もちろん屋内にいる場合や大きなバッグなどに入っている場合は無効だし、一応、厳重な安全装置がかかっているので人間にはぶつからない筈…」

◯とある部屋(朝)
修哉、モニター観たまま、
修哉「…さて、何人突破できるかな?」

◯通学路(朝)
あちこちでニセ修哉にぶつかる女子高生と、鳶型ドローンに食パン型参加証を奪われる女子高生の姿。
食パン型参加証を咥えゆっくりと歩いている菜緒と周りの様子に狼狽える琴李と麻希。
菜緒のゼッケンは「0070」。
琴李のゼッケンは「1050」。
麻希のゼッケンは「0905」。
冷静な表情の菜緒。
菜緒(心の声)「シュウチンは身長178センチ、体重63キロ。あと、ある特徴があるので私が見間違えることはない」
菜緒、鳶型ドローンが飛ぶ上空を見て、
菜緒(心の声)「鳥型のドローンはだいぶ前にシュウチンのYouTubeに出てた」

◯回想・修哉の番組配信画面
番組の中でゲストが紹介する鳥型のドローンを観てはしゃいでいる修哉。

◯回想・菜緒の部屋
ギャルっぽいピンクでド派手な部屋。
デコレーションで飾られたピンクのモニターで修哉のYouTube番組を観ている菜緒。

◯通学路(朝)
歩いている菜緒、口から食パン型参加証を外して袋に入れる。
菜緒、琴李と麻希に、
菜緒「袋にしまっても大丈夫。ちゃんと肌身離さず持っていれば」
琴李、麻希「は、はい」
琴李、麻希、食パン型参加証を袋に入れ、ポシェットに入れる。
菜緒「鳥型ドローンは一定時間止まっているターゲットにしか近づくことが出来ない。なので普通に持って歩いていれば大丈夫。あとは建物の中にじっと隠れてるとか。ただ、その場合、シュウチンと道でばったりぶつかることも出来ないけどね」
菜緒、髪をかき上げ、
菜緒「まあ、私は学校に向かってゆっくり進めばいいだけ。学校近くになったら形式上、少し走るけど。出来レースとはいえ」
琴李「(遮って)菜緒さん、あれ」
麻希「人がいっぱい集まってる」
菜緒、琴李、麻希が歩く先の一角で人混みと行列ができている。
菜緒(心の声)「どういうこと?」
菜緒、琴李、麻希、人混みに向かう。

〇通学路・デパート前(朝)
デパート前の人混みにたどり着く菜緒、琴李、麻希。
合陣高の女子高生らを中心に人の輪が出来ている。
特設ステージにイケメン男性2人、サンホ(19)とチャンス(19)がにこやかな笑顔で愛想を振りまいている。
ステージの看板を見る菜緒、琴李、麻希。
琴李、看板の文字を読む。
琴李「『あの韓国の人気グループCUT(シーユーティー)極秘来日!!サイン&ハグ会』…」
麻希「サンホとチャンス?!嘘でしょ?」
菜緒「本物な訳無い…あ、ちょっと!」
琴李、麻希CUTの前に出来ている行列に駆け寄る。
琴李「本物だ!」
麻希「並ぼ並ぼ!」
キャーキャー言いながら行列に並ぶ琴李と麻希。
菜緒「(見ながら)どうせ、シュウチンみたいにライフマスクの偽物でしょ」
菜緒、スマホを開き、ツイッターでCUTの公式アカウントを検索する。
CUTの公式アカウントからのツイートの生配信中のリンクをクリックする菜緒。
菜緒「うそ!」

〇スマホの動画の画面
まさに現場のカメラがCUTのサイン&ハグ会の様子を生で実況している。
呼子の男性が、
呼子の男性「極秘来日中!!人気グループCUTサイン&ハグ会実施中です!こちらにお並びください!」

〇通学路・デパート前(朝)
配信と同じ呼子の男性にカメラが向けられていて、
呼子の男性「CUTサイン&ハグ会こちらで実施中です!」
菜緒、それを見て、
菜緒「公式アカウントから配信されてるし…」
× × ×
行列が進み、サンホとチャンスの前に立つ琴李と麻希。
サンホ「コンニチハ」
チャンス「コンニチハ…じゃなくてオハヨウゴサイマス」
琴李と麻希、お互いの顔を見て頷き合う。
琴李「二人とも日本語上手ですね」
麻希「あのー、お二人に頼みがあるんですけど」
サンホ「タノミ?ナンデスカ?」
麻希「あのー、サンホがチャンスの頬っぺた、チャンスがサンホの頬っぺたを摘んでお互い引っ張ってみて貰えますか?」
サンホとチャンス、顔を見合わせ、
サンホ、チャンス「イイデスヨ」
サンホとチャンスニコッと笑って、お互いの頬っぺたを摘んで引っ張る。
サンホ「ホンモノノサンホデース!」
チャンス「ホンモノノチャンスデース!」
× × ×
菜緒、それを見て、
菜緒(心の声)「(驚きの表情)ライフマスクじゃない?!」
× × ×
感激する琴李と麻希。
琴李「本物だ!」
麻希「本物だ!」
サンホとチャンスに近付こうとする琴李と麻希に係員から白い紙がスッと差し出される。
琴李、麻希、白い紙を見る。
琴李「(読み上げる)CUTサイン&ハグ会 参加条件~ICCCの食パン型参加証を提出し、所有権を放棄すること」
顔を見合わせる琴李、麻希。
琴李「『食パン型参加証を提出』…」
麻希「…んー、私たちそもそも菜緒さんの引き立て役で参加してるだけだし」
琴李、麻希「ま、いっか!」
琴李、麻希、食パン型参加証を手に取り、係員に提出。
いつの間にかそばに居た審判員、それを見てホイッスル。
審判員「1050番、905番失格!」
× × ×
サンホとチャンスにサインを貰ってハグされて喜んでいる琴李と麻希。
菜緒、その様子を遠くから見ながら、
菜緒(心の声)「そういえば…シュウチンってCUTが売れる前から仲いいんだよね」

◯イメージ
YouTubeの画面。
修哉とCUTが共演しているサムネイル動画。
アップロード日が2年前の日付になっている。

〇通学路・デパート前(朝)
ため息をつく菜緒、琴李と麻希に気づかれないように歩き出す。
菜緒、デパート前を去る。

◯通学路・デパート近くの十字路(朝)
サイン会場を横目に食パン型参加証を口にした瑞稀が歩いている。
瑞稀のゼッケンは「0144」。
十字路に差し掛かる瑞稀。
声「危ない!」
瑞稀「!(ビクッと立ち止まる)」
反対側の十字路から現れた学生服姿。
和樹だった。
(第6話に続く)


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