市場を拡大させるホールプロダクト・マーケティング
製品の市場を拡大するためには、どうすれば良いでしょうか?
製品の機能を高めればよいでしょうか?
それも1つの方法ですが、機能が優れているだけでは市場の拡大が難しい場合があります。
この記事では、その理由を説明し、市場の拡大に有効な方法であるホールプロダクト・マーケティングについて解説します。
難しい理由
製品の機能が優れていても、それだけでは「多くの顧客の満足を得る」ことは難しいといえます。
「顧客の期待」と「製品の実際の機能」の間に差が生じるからです。
製品を買った顧客が「期待する機能」と、「製品が実際に発揮する機能」の間に差があると、顧客の満足度は下がってしまいます。
ホールプロダクト・マーケティング
この差を埋めるために、ホールプロダクト(完全製品)をつくります。
「ホールプロダクトを提供することで、多くの顧客の満足を得る」方法をホールプロダクト・マーケティングと呼びます。(参考文献1)
ホールプロダクトとは、次のようにしてつくられる完全製品のことです。
中心となる製品に、補完製品や補助サービスを付け加える
コア技術(核となる技術)を、補完技術とサービスで包み込む
「顧客が期待する製品の機能」と「実際の機能」の差を埋めるために、「補完的な製品」や「補助サービス」を付け加えたものがホールプロダクト(完全製品)です。
セオドア・レビットによってつくられた考え方で、ホールプロダクトは次の図のモデルで表されます。(参考文献1)
ホールプロダクトのモデルでは、次の順にプロダクト(製品)のレベルが上がっていきます。
①コアプロダクト→②期待プロダクト→③拡張プロダクト→④ 理想プロダクト
それぞれのプロダクトについて説明します。
① コアプロダクト
販売される製品
② 期待プロダクト
顧客が上記の製品を購入する時に、「こうであるはず」と期待する製品やサービス
購入目的を満足させるために最低限そろっているべき製品やサービス
「①コアプロダクト」+「補完製品・補助サービス」
③ 拡張プロダクト
「①コアプロダクト」の機能を拡張した製品やサービス
購入目的を最大限に満たす製品やサービス
「②期待プロダクト」+「補完製品・補助サービス」
④ 理想プロダクト
顧客に提供できる理論的上限の機能
「③拡張プロダクト」+「補完製品・補助サービス」
ホールプロダクトの例
スマートフォンを例にして、ホールプロダクトを考えてみましょう。
① コアプロダクト
スマートフォン
② 期待プロダクト
スマートフォンの購入目的(電話・インターネット)を満足させるためにそろっているべきもの
携帯回線
Wi-Fi接続
③ 拡張プロダクト
「①コアプロダクト(スマートフォン)」の機能を拡張
カメラ機能
プリインストールアプリ
ブラウザ、メール、カレンダー、住所録など
④ 理想プロダクト
「③拡張プロダクト」+サービス
アプリのダウンロードサービス
コンテンツ(音楽、動画など)のダウンロードサービス
ホールプロダクトの効果
ホールプロダクトには、次のような効果があります。
(拡張プロダクトにより)顧客の購入目的を最大限に満たす
(理想プロダクトにより)顧客の期待を越える満足を与える
このようなホールプロダクトを提供することで、多くの顧客の満足を得ることができます。
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参考文献
ジェフリー・ムーア『キャズムVer.2 [増補改訂版]新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』の「第5章 部隊の結集」