井手 桂司

フリーランスのブランド・エディター。一人ひとりの持っている物語を、言語化し、発信し、届ける手伝いをしてます。 IKEUCHI ORGANIC、Oisix ra daichi、コルク…などのメディア編集を担当。noteでは好きな小説についての感想を書き綴っていきます。

井手 桂司

フリーランスのブランド・エディター。一人ひとりの持っている物語を、言語化し、発信し、届ける手伝いをしてます。 IKEUCHI ORGANIC、Oisix ra daichi、コルク…などのメディア編集を担当。noteでは好きな小説についての感想を書き綴っていきます。

最近の記事

物語の創作とは救済であり、エールでもある | 村上春樹さん 『風の歌を聴け』

かつて誰もがクールに生きたいと考える時代があった。 僕にとって、クールの象徴といえば、村上春樹さんの小説に登場する主人公たちがそれだ。「やれやれ」という言葉と共に、やや斜め上から世界を見下ろし、悟ったかのように人生を語り出す。同時に、独特のセンスの持ち主ゆえに、ある種の人々を惹きつけ、生活にも女性にも困っておらず、一定の余裕を持って世界と接しているように見える。 大学一年生の時に、村上春樹さんの小説を読みはじめた僕は、一時期、村上作品の主人公たちに憧れていた。『ノルウェー

    • ひとは一人で勝手に助かるだけ。 自分の正義を他人に振りかざさない | 西尾維新さん 『化物語』

      「ひとは一人で勝手に助かるだけ。  誰かが、誰かを助けるなんてことはできない」 こんな言葉を口にする人を見かけたら、救いの手を差し伸べてくれない冷たい人と思うだろうか。それとも、誰かに頼ることのできない寂しい人だと思うだろうか。 これまでの日本では、自分のことは自分ひとりで解決しなければならない思考の呪縛が強かった。自己分析も内省もひとりで行うのが当たり前。だが、現在はコーチングやカウンセリングが徐々に当たり前となり、ひとりで完結せずに支え合う時代になってきている。 そ

      • 未来は神様のレシピで決まるという諦観と、開き直る生き方のススメ | 伊坂幸太郎さん 『オーデュボンの祈り』

        20代の僕が最もハマった作家といえば、伊坂幸太郎さんだった。 新作小説の発売日をはじめて待ちわびた作家も伊坂さんで、伊坂作品というだけで「面白いに違いない」と確信めいた気持ちでページをめくっていた。張り巡らされた伏線が終盤に一気に繋がっていく展開の面白さと爽快さはもちろん、登場人物のユーモアのある振る舞いがツボで、いわゆる伊坂ワールドの虜になっていた。 だが、仕事が忙しくなるについれて、ビジネス本や教養本ばかりを読み漁り、伊坂さんの作品を含め小説を次第に読まなくなっていた

        • Stay Homeな現在だからこそ、『方丈記』のお籠りマインドに触れる

          鴨長明(かものちょうめい)が書いた『方丈記(ほうじょうき)』を読んだことはあるだろうか? かく言う僕は、2日前まで読んだことはなかった。 もっと言うと、『徒然草』『枕草子』とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられるていることすら知らなかった(学生の頃に教わったかもしれないが、とうに記憶から抜け落ちていた)。 思い返せば、学生時代の僕は「古文」が嫌いだった。ただでさえ英単語やら歴史の用語やら覚えないといけないものが多いなか、社会に出てから特に役に立たないであろう古文単語をな

        • 物語の創作とは救済であり、エールでもある | 村上春樹さん 『風の歌を聴け』

        • ひとは一人で勝手に助かるだけ。 自分の正義を他人に振りかざさない | 西尾維新さん 『化物語』

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        • Stay Homeな現在だからこそ、『方丈記』のお籠りマインドに触れる

          「何者かにないたい」病と、どう付き合うか? | 平野啓一郎さん 『最後の変身』

          "時代というのは、何時でもそうして、病によってこそ、最も強く刻印されてきたのではないかのか?" これは平野啓一郎さんの『最後の変身』に出てくる言葉だが、現在を象徴する症のひとつは「何者かにならなくては」病だと思う。 何者かになる。何者かになりたい。何者かにならなくてはいけない。 僕も含めて、そんな強迫観念めいたものに追われている人は少なくないだろう。流行りのビジネス本を読んでいても、SNSのタイムラインを眺めていても、どこかソワソワした気落ちになるのは、この「何者かにな

          「何者かにないたい」病と、どう付き合うか? | 平野啓一郎さん 『最後の変身』

          「恋」には落ちるが、「愛」には落ちない | 平野啓一郎さん 『一月物語』

          「上杉達也は朝倉南を愛しています。 世界中のだれよりも。」 こんな言葉を異性に向かって放った日本人はどれだけいるのだろうか。ちなみに、僕は人生で一度もないし、これからもありそうにない。僕は寂しい人生を送っているのか…?いや、そうではないはずだ。 あなたのことが好き。あなたと一緒にいる時間が好き。あなたと過ごしている時の自分が好き。だから一緒にいたい。これなら、わかる。これなら、僕でも口にしたことがある。 「愛している」という言葉。これにものすごく抵抗を覚えてしまうのだ。

          「恋」には落ちるが、「愛」には落ちない | 平野啓一郎さん 『一月物語』

          よくも悪くも人は「エピソード」から逃れられない | 平野啓一郎さん 『透明な迷宮』

          ときたま、昔付き合っていた女性のことを無性に想い返すことがある。 最後に会ったのはもう10年前。今はお互いに連絡先を知らないので、会うことはもう二度とないだろう。 それでも、「元気かな」「もう結婚して、子供もいるのかな」「今でも、伊坂幸太郎さんの小説を熱心に読んでたりするのかな」なんて考えたりする。神様の気まぐれで運命的再会が発生しないものかと願ってしまう時もある。そんな時、山崎まさよしの『One more time、One more chance』が無性に聴きたくなる。

          よくも悪くも人は「エピソード」から逃れられない | 平野啓一郎さん 『透明な迷宮』

          「!」ひとつで、仕事の成果は変わる

          チャットを駆使できるかが「死活問題」オンラインチャットでコミュニケーションを取りながら仕事のプロジェクトを進めることが増えてきました。 僕はフリーランスのライターやメディア編集者として働いていますが、Slack、メッセンジャー、Chatwork、LINEなど、様々なチャットツールを使いながら、複数企業の複数案件を同時並行で進めています。 正直、もう目まぐるしいです……。 一方、メールや電話は絶滅寸前です。電話はここ半年は使った記憶がありません。メールも月に数回。「お世話

          「!」ひとつで、仕事の成果は変わる

          誰かの物語を通じて自分の傷と向き合う。 平野啓一郎さん著 『ある男』の読書会にて。

          2018年9月28日に発売となった、平野啓一郎さんの新作小説『ある男』。 「自分の中には様々な分人がいて、自分をまるっと肯定したり、愛せなかったとしても、好きな自分(分人)を足場に生きていくことができる。」 そんな分人主義という平野さんの考え方がまとまっている『私とは何か 「個人」から「分人」へ』という本に感銘を受けた僕は、平野啓一郎という作家について深く知りたいと思い、ここ数ヶ月の間、デビュー作となった『日蝕』から最近の作品まで、貪り読みました。 最新作である『ある男

          誰かの物語を通じて自分の傷と向き合う。 平野啓一郎さん著 『ある男』の読書会にて。

          嫌いな自分を消すのではなく、見守るとは? | 平野啓一郎さん『空白を満たしなさい』

          人生において、このタイミング、この瞬間に触れることで、その作品を味わい深く噛み締めることのできる"作品の旬"ってありませんか? 例えば、ミスチルの「innocent world」なんかも、小学生の頃から聞いていたりするんだけど、社会人3年目くらいになって、何者かになりたい衝動と、うまくいかない現実への焦りと、仕事に忙殺される日々の中で聴くと深く感じ入れる気がするんですよ。聴いていて、心の中にしみてくる。 ただ、いま、30歳を超えた僕からすると、もちろん名曲であることは変わ

          嫌いな自分を消すのではなく、見守るとは? | 平野啓一郎さん『空白を満たしなさい』

          スケールよりも"スタイル"。そんなヒトたちや会社を応援したいという話。

          スケールよりも、スタイル。 つくるだけでなく、ともに楽しむ。 売るだけでなく、つながる。 そんな"楽しみ"をつくり出す人たちのために。 *** 「キャッシュレス決済サービス」であるCoineyを手がけるコイニー社と、「オンラインストア開設/運営サービス」のSTORES.jpを運営するストアーズ・ドット・ジェーピー社が経営統合して生まれた新会社。 それが株式会社ヘイ。 そのヘイが、「誰のために僕らは存在するのか?」という想いをまとめたのが、上記の言葉です。 先日、会社

          スケールよりも"スタイル"。そんなヒトたちや会社を応援したいという話。

          何が書かれているではなく、自分がどう感じるか。読書という荒野を行く。

          最近、久しぶりに小説を読んだり、読み返したりしています。 コルクラボのキャプテン・サディ(佐渡島さん)の影響で平野啓一郎さんの小説をデビュー作から順に読んでみたり、自分が好きな伊坂幸太郎さんの小説を読み直したり。 もともと、学生時代から本を読むことは割と好きだったんですが、社会人になり、仕事にのめり込むにつれ、ビジネス書ばかり読んでいて、小説は稀にしか読まなくなりました(年に読んで1、2冊くらい)。 もちろん、ビジネス本を読んで最新の業界の動向だとか、注目されている仕事

          何が書かれているではなく、自分がどう感じるか。読書という荒野を行く。

          愛とは、他者のおかげで自分を愛せるようになること。

          『あなたが好きなあなたになる』 いきなりですが、僕が所属しているコルクラボのスローガンがコチラ。 「あなたが好きなあなたになる。あなたが好きなあなたになるかぁ。う~ん、自分のことが好きだとか、嫌いだとか、考えたことなかった…。」 初めてスローガンを聞いた時は、こんなことを思ってしまったのですが、改めて自分について考えてみると、どちらかというと好きより嫌いの感情のほうが強いと思いました。 そもそも、自分を愛するのは、誰かを愛することよりも難しいのではないでしょうか。

          愛とは、他者のおかげで自分を愛せるようになること。

          文章を書くことは自己療法かもしれない。noteを書き始めたわけ

          はじめまして。これから日々感じたことを、noteで文章としてカタチにしていこうと思います。そんな自分へのエールとして、この言葉を贈ります。 「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」 僕の大好きな小説の1つである、村上春樹さんの「風の歌を聴け」の冒頭の一文です。 多くの友人がnoteで日々の気づきやら、専門性を持っている領域の情報を書き綴っていく姿を見るにつれ 「あぁ、自分もnoteを書いたほうが良いんだろうなぁ…、書きたいなぁ…。」

          文章を書くことは自己療法かもしれない。noteを書き始めたわけ