経験を積み上げない
それなりに経験を積むと、自分なりの勝ちパターンが生まれる傾向がある。勝ちパターンは、どんな時でも自分を救ってくれる重要な戦術の一つだ。
コンサルタントになって、もうすぐ15年目に入る。ベテランと呼ばれる経験歴だ。今まで幾つのプロジェクトを乗り越えてきたのか・・・・。全てのプロジェクトにドラマがあって、一つとして忘れてしまうようなプロジェクトは存在しない。その理由は、基本一人ではなく、その時の喜びや苦しみなどの感情を共感できる誰かがいた証拠なのだろうと思っている。
この14年間を通して、多くの課題と向き合ってきたが、僕には勝ちパターンがない。正確にいうと、勝ちパターンを作らないように努力をしている。勝ちパターンがあると、精神的にはかなり楽だと周りのベテランコンサルタントは言う。加えて、「あの資料使えるよ」「抜粋して使えば」という言葉をよく聞く。経験年数が長くなれば、色々なチャート(資料)を目にすることもあり、頭の中の記憶を辿れば、色々な情報を取り出せるのは確かだ。ただ、僕は、過去に使った資料の転用は自己紹介資料など以外は基本的にNGとしている。誰に課されたものでもない、あくまでも、自分に対するルールだ。プロジェクトからの学びは常に、キーイシュー(主な課題)は何で、結局何がわかったからのキーメッセージであり、それ以外はほぼ捨てる努力をしている。
分析をするときに、どこかで使い古したフレームありきで思考する人がいる。どこかで見た、誰かが作ったロジックで整理をする人がいる。このような人は、基本的に成長をしていないというのが僕の見立てだ。そういう人に、「何故、この軸で整理すべきなのか」と問うと、決まって明確な答えが返ってこない。コンサルタントごっこはやめた方が良いと思う。
誰かが作ったフレームワークを使いまわすのではなく、課題を解き明かすために、必要となるフレームやロジックを作り出せる力が重要だ。そのスキルは、常に過去の産物は捨てて、新たに作り出すチャレンジをし続けることで身についてくると、個人的に信じているからである。僕は今まで2人の圧倒的なスキルを持つロジカルモンスターに出逢い、その人の元で仕事を一緒していた。コンサルタントとしての最初の4年間は、この2名のマッキンゼーイズムを細胞に染み込ませた感じだ。この2人は、僕が一緒に働いている4年間で、思考の使いまわしをしたことをほぼ見たことがない。常に新たな視点を作り出していた。当時も憧れていたし、今は一緒に働くことはなくなったけども、常に思考の壁が現れたときは「〇〇さんなら、どう考えるだろう」と、僕の思考の中に登場してきてくれる。
ミスチルの曲でStarting Overという曲がある。昨日車を運転している最中に、ラジオで流れてきた。久しぶりに聞いたなぁーと思いながら、2番のサビをきいて、妙に納得した。「幾つもの、選択肢と可能性に囲まれ、探してた、望んでた、ものがぼやけていく、何かが生まれ、また何かが死んでいくんだ、きっとそこからは逃げられはしないだろう」という歌詞だ。本来は人生を謳っているのだと思うが、少し考えてみた。
きっと、コンサルタントもそうなんだろう。課題に対して、さまざまな仮説が生まれてくると、さまざまな解の方向性が生まれ始め、どう進めばいいかわからなくなる瞬間がある。この時、取る手段は大きく2つだと思う
①自分の勝ちパターンに持ち込んで安全解を狙う→小手先に解決する力
②思考の回転数を高め、精度の高い仮説を構築する(イシューアナリシスを作る)→本質を見つけ出す力
そう、こういう時に逃げちゃダメはなずだ。だから取る手はいつも「②」。自分は「①」に堕ちていきたくないから、そもそも選択肢を持たないようにしている。決して、自分を美化するなどではなく、結局僕は人より意思が弱いのだと思う。だから、逃げ道ができてしまうと、そちらに吸い寄せられる性格だから、そもそもそんな道を持たないようにした方が良いのだ。
経験を積み上げていくことは、本当に素晴らしいことだと思う。
でも、自分なりの勝ちパターンを捨てて、チャレンジングな状況を作ってみるものいいのではないかと思う。
自分が経験から作り上げた勝ちパターンじゃない、新たな勝ち筋が見えたときの言葉にならない感動を味わって見るのも、悪くない。
少なくとも、僕はそっちのほうが好きかなと。
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