毛萱街道活版印刷製本所の名刺製作について(2024.09.09現在)
毛萱街道活版印刷製本所では、名刺の製作の注文を受けています。当工房での名刺製作のこと(流れ、経費、日数等)を記したいと思います。
費用についての基本的な考えは、
・手間賃(組版の製作及び印刷)3,000円
(100枚増えるごとに1,000円追加)
・意匠代3,000円(レイアウトの指示がなくゼロから作る場合。)
レイアウトの指示がある場合は、意匠代はかかりません。
・その他経費
用紙代、活字代(工房にない活字を購入する場合)及び送料等の実費
おおよそ以上です。活字を大量に購入する必要がある場合を除き、おおかた1万円前後でお作りすることができると思います。
工房で所有している活字
工房にある活字は、明朝が壱号、五号と9ポ。正楷書が8ポ、五号、18ポ。欧文文字は8ポのセンチュリーオールド、四号のカッパープレートライト、6ポのカッパープレートライト(ウエイトが2種類あります。)。ですから、この活字を使ってできるものは結構お安くできると思います。
何もないところからつくる
毛萱街道活版印刷製本所の名刺製作は、標準となるテンプレートはありません。一度作ったことがありますが、その通りに作りたいと注文される方はほぼいません。ですから、白紙の画用紙にゼロから作る、そんなイメージになります。図等でレイアウトを示していただけると、作業はとても楽になります。
製作の流れ
名刺製作依頼
メール、ホームページの問い合わせ欄からの送信、電話、工房にお越しいただく。いずれの方法でも構いません。
代金の支払い
基本的に、名刺が完成してお渡しした後、後払いです。
インテーク
どんな名刺が作りたいか。やり取りします。
この段階で、名刺のレイアウトを提示していただけ得ると作業は助かります。
レイアウトがなく、言葉等の抽象的なイメージだけの場合は、意匠代をいただき試作の作業に向かいます。
試作の提示
インテークでおおかたの名刺のイメージが固まったら、一度、工房にある活字を使って試作を行います。それを叩き台にして、もっと具体的な活字の種類位おきさ細かなレイアウトを決めてゆきます。
試作品は、メールで画像をお送りしますが、郵送して実際に確かめていただくことも可能です。
用紙の選定
インテークの段階でいくつかの用紙をこちらからも提示します。できれば試作の段階で、その候補となった用紙に印刷を行うことができれば、作業は進みます。どの用紙にするのか検討をしていただく際には選定を実際の用紙をお送りして手に取って確認していただくことも可能です。
見積額の提示
試作を行った後、お客様のご意見に基づき、修正を行い、詳細なレイアウトや必要な活字の情報が整った段階で、一度見積額を提示します。その上で、本刷りを行うための用紙と活字の発注を行います。
本番の印刷
具体的な製作例
貴婦人(仮名)さんから製作依頼
「バウハウス的なデザインで懐古的なシュールレアリズムな風合い」
「インスタのこれらの紙や端の傷み具合が、それらのイメージに近かった」
(注釈:鹿敷製紙さんの雁皮手漉き耳付き和紙のこと)
用紙の選定
貴婦人(仮名)さんの希望される用紙(鹿敷製紙さんの雁皮手漉き耳付き和紙)を実際にお送りして手に取って見て確認をしていただきました。その結果、素材の持つインパクトが強そうなので、デザインは活版文字だけでも、という要望が出されました。そして、文字のみのレイアウトが送られてきました。
しかし、レイアウトの存在を確認しないまま、試作をしてしまいます。
叩き台となる試作の提示
この時点で、意匠代(3,000円)が発生します。
しかし、前に書いた通り、この時点では、わたしが試作する前に文字ののみのレイアウトが送られていました。わたしが見逃すミスを犯してしまい、早合点で試作をしてしまいました。
この貴婦人(仮称)さんの場合は、意匠代は発生しません。
再度の試作の提示
この試作の時点でも、送られてきたレイアウトを認識しておらず、依然として、余計な棒や丸が残っています。
試作の完成
貴婦人(仮名)さんが希望する文字のみのレイアウトです。
名刺作りので一番大変なのは、お互いに作りたい名刺に持っているイメージを擦り合わせる作業です。本来は、名刺は注文主の要望を作る側の意思や思惑を抜きにして行うものですが、わたしはどうしてもこういうのはどうだろう、という余計なことをつい考えてしまいます。その結果、やる必要もない「擦り合わせ」が必要になってしまいます。
結構、面倒なことに毛萱街道活版印刷製本所の名刺製作はなる場合があります。
貴婦人(仮名)さんの名刺は、裏面にフーツラの活字でアカウントを印刷して終わりました。製作費は、40枚で約9,000円です。
受注は、1枚から申し受けています。
製作期間は1月は覚悟していただけると助かります。
最後に
失敗した印刷物の中に結構面白いものがあります。