エデンの東

月例映画会/est 2006
本日お集まりの皆さん、ありがとうございました。
緊急事態宣言の延長が本格化する中、
天井が果てしなく高く、20分ごとにすべての空気が入れ替わる換気システムを完備した、世界で一番安全な映画館という場所で、
マスクに黙してひたすらに前方を見つめ続ける映画鑑賞というものに興じてきました。

参加した4名が仲良くひとつとびに並んで鑑賞した作品は、
伝説的な名画『エデンの東』/新宿ピカデリーでした。
マリリン・モンローと並ぶ、映画史に輝く永遠のアイコン、
ジェームズ・ディーンの生誕90周年を記念したリバイバル公開です(誕生日は2月8日)。

クラシック映画はとかく不勉強な私ですが、
実は映画音楽と試写会応募に明け暮れていた中学時代、父の通うテニスクラブに所属していたアナウンサー(名前失念)がパーソナリティのラジオ番組【文化放送シネサロン】の番組テーマ曲として、毎週2回(オープニングとエンディングに)聴いていたのが『エデンの東』の切なくも美しい旋律でした。
今回はその懐かしのスコアをスクリーンから全身に浴びるために観に行こうと思い立ったのです。
                  
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旧約聖書の『創世記』第四章に登場する兄弟「カインとアベル」を下敷きにしたスタインベックの原作を映画化したものだそうですが、
いやまさかこんな、愛が欲しいばかりのダメ男がひねていじけて拗らせて、
新農業ビジネスの立ち上げと兄の結婚という一縷の望みで再生しかけていた家族をかき回した挙句、完全崩壊させ、
そのくせ自分だけは独りよがりな愛を美しいテーマ曲とともに享受する(兄の婚約者を奪い、廃人寸前にまで陥れた父親の寵愛を独り占めにする)話だとは思いませんでした。正直びっくりだ。

それでも、自分本位で不恰好な姿を取り繕おうともしないディーンの哀愁漂う上目遣いは確かに可愛らしく、理屈を超えた魅力とは、演技力や演出だけでは得られないのだと思い知りました。

スターとはかくあるべし。というか、こういう映画を成立させるためにスターがいるんですね。

いじらしさ、と、いじましさは一文字ちがい。

ちなみに、映画本編で使われているスコアは、少しテンポが早く、若干軽薄さを覚えるもので、私が中学時代に聴き惚れていた気品溢れる流麗なアレとは別物だったこともまた、新鮮な驚きでした。

中学時代に聴き惚れていたアレ
https://youtu.be/h1fOFlG5b2w

いや、ことごとく目論見が外れ、はしご外されまくりでしたが、映画体験としては間違いなく楽しみました。

思い込みで高を括って見ないなんて、もったいないですね。
一気にディーンに興味が湧き、最低でも『理由なき反抗』と『ジャイアンツ』くらいは死ぬまでに見ておこうと誓いました。

結果として、得られなかったものに得たものが大きく、とても勉強になりましたということになります。

さて今月で月例映画会は16年目に入りました。
また来月。
まだまだ続けます。

2021年1月31日 Facebookへの書き込みを転記

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