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2020年介護業界の今後を考える その5

【介護現場の問題】

前回では、介護業界は人手不足でその課題をtechnologyと外国人が解決してくれるのではないかという話しをしました。
介護現場の問題は、基本的には介護人材不足の問題とリンクします。

何故かと言いますと、介護人材不足により介護現場の問題がクローズアップされるからです。介護の現場では、いままでは介護士が充足していたのでマンパワーでどうにかなっていたことが介護士が足りなくなることにより効率的に業務をこなさなくては現場を回せない状況になっていきます。

介護業界は、IT、ICT化が遅れているいる業界です。いまだ、医療機関や居宅介護事業所、他事業所とのやりとりをFAXでおこなっていたりします。月末月初のFAXの量ときたらびっくりします。(これどうにかならないかな・・・)利用者様記録においてもペーパーで管理しているところはまだ相当数あるのではないのでしょうか?

施設の朝夕バイタル測定、デイサービスや訪問介護事業所でのバイタル測定。状態の記録を手書きしています。

このような雑務をIT、ICT化することでより業務効率が上がります。このように今年は下記フローチャートのようなことが介護事業所で起こることが予想されます。

介護現場人材不足⇒介護現場混乱⇒雑務をなくそう⇒IT化、ICT化導入⇒より効率的に介護に専念できる

我々のグループ施設でも5年程前まではペーパー管理をしていました。さらに業務効率を上げるとか情報の共有化なんてものもできていませんでした。その結果介護士の離職率がどんどん上がっていくという負のスパライルでした。

ここからは我々の取組みの話し、

離職率28%


になったときを境に改革を始めていくことを決意しました。

元々私は、介護業界出身者ではないので、介護現場のことがわかりません。考えても考えても離職する理由がわかりませんでした。

思いつくようにスタッフたちひとりひとりに何が大変なのかを聞いていきました。「給料を上げてくれ」、「もっと簡単に休みを取れるようにしてほしい」などなど。

これは完全に経営者目線になりますが、給料を高くしたいのはやまやまです。しかしながら、介護ビジネスというものは売上に上限があります。たとえば、スマートフォンを売りたい。欲しいユーザーは沢山います、売れれば売れるほど売上が伸びて、人件費や経費を差し引いたものが利益になります。一方、介護ビジネスというのは利用者様1人につき15万が売上(わかりやすくするためざっくりと計算しています)、定員20名の場合は300万の売上になります。ここから人件費、経費、借入金の返済などをトータルで考えて人件費を設定しています。つまりは、ある程度介護報酬が決まっているのでそれ以上の売上が望めないのです。そうすると人件費を上げたくても、売上が現状以上に伸びないので上げれないということが起こります。ただ、前回4で記載したように国も対策として「特定処遇改善」を新設したりしています。

そんなある日、あるスタッフからの言葉が私を変えさせてくれました。

「実は介護って大変じゃないんです、事務作業が大変なんです」

これにはびっくりしました。なぜなら「介護=大変」、逆のことを思っていたからです。

これは、心に響きました。

これだったら自分でも改善できるんじゃないかって、

これを聞き、私はすぐ行動することにしました。

我々が取り組んだのは、

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介護士の事務作業を軽減させること、

利用者様情報の共有化の二つでした。

しかし、当時はペーパー管理が当たり前の時代、クラウドという言葉も??という時代です。

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上記図、ICT化した実際の様子(情報をスタッフが共有化)

システムを大幅に入れ替えたり、その他にも、休みが取れるようにするとか、子供と出勤できるとか働きやすい環境も整備もしました。こういった取組みが功を奏して我々グループの離職率が改善されていきました。


以下、離職率の推移になります。

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ICT化する前は、介護業界離職率や他産業離職率よりも異常に高かったのがどんどん低下していく様子が一目でわかるかと思います。

なにが言いたかったかと申しますと、

手前みそで恐縮ですが、我々施設のICT化は介護業界では群を抜いて早かったのです。それにより、事務作業の軽減につながり、結果として、介護士の本来の業務である「利用者様に接する時間」というのが確保することができましたし、有休などの消化も大幅に増やすことができました。そして、離職率の低下につながりました。

介護業界はいま変革期です。これからtechnologyや外国人の力で業界が変わってきます。その時代の潮流に乗れなければ淘汰されていき、逆に潮流に乗れた介護施設は新たな介護施設として生まれ変わっていくものと思います。

最後になりますが、「介護」は医療と同じでなくてはならない仕事です。しかし、介護士さんの待遇はまだ低いです。多くの介護士さんたちは利用者様のために一生懸命仕事をしています。中には暴言を吐かれたり体をつねられたり、叩かられたり傷ついた人もいます。介護業界は外からはなかなか見えにくい世界ですのでこういったことを発信することで少しでも皆さんに知ってもらい、介護士さんの待遇が良くなり、自信を持って介護の仕事を出来る環境が整備されることを願っています。そして、新しい介護士さんが増えたり、ブランディングの結果介護士さんの印象がより素晴らしくなっていくことが出来、この介護ICTモデルが全国に普及することができたら幸甚でございます。

これからも介護業界のことを私なりの観点でお話ししていきます。


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