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14 不安との戦い

「子どもが主役になる授業」では、子どもたちを「型」にはめたり、「レール」に乗せたりはしません。
学習の問いにつながったり、活動のきっかけになったりすることやものを与えはしても、最小限でとどめたいと考えます。

そこで、教師として葛藤するのが、
子どもたちのもつ「不安」をどう乗り越えていくのか
です。

具体的にイメージできるように最近のわたしの担当するクラスの様子を記しながら伝えます。

国語科 3年 物語文「まいごのかぎ」の授業
このお話は、”りいこ”という女の子が帰り道である”かぎ”を拾うことで、巻き起こる不思議な出来事をつづったものです。
図工の時間に消してしまった”うさぎ”のことを思うとしょんぼりしてしまう主人公の”りいこ”が、拾った”かぎ”を使うことで、桜の木や公園のベンチ、魚の開き、そしてバスがありえない出来事を起こしていきます。
その気持ちの変化を叙述をもとに読んでいく学習です。

そこで、わたしは「自分の課題」として、子ども一人一人に課題を立てさせました。
「どうして不思議なことが起きるのか」
「かぎはだれのものなのか」
「だめだった分かっているのに、どうしてかぎをあなにさしてしまうのか」
「さいごにどうして、いままでの出来事をふりかえるのか」
などなど。自分が考えたい、読み深めたいことを課題にします。

そして、
教科書をよ~く読み、「自分だったら」と経験をふりかえり、友達と話し合いながら学習は進んでいきます。
教師は、「なるほどね~」「〇〇さんと話してみたら」と受け止めたり、子ども同士をつなげたりします。
自分の課題は、友達の課題につながっていることが多いので、たくさん話し合っていくと答えに近づきます。

今担当するクラスの子たちは、2年生のときも同じ学び方を経験していたので、走り出しは良好。

しかし、少しすると「困り顔」の子どもがちらほらでてきます。
課題を立てたものの、答えが分からない。
なんとなくわかっても、ノートにどうかいたらよいのか。
友達に話しかけられない。

また、学習も終盤になり、まとめの作文を書く際には、完全に手が止まる子もいます。
課題は解決したけど、自分はどうやって学んできたのか。
作文って、どう書いたらいいの?

この姿は、教師対子どもたちの構図では見られないものです。
教師が言ったこと、指示したことを真面目になぞっていけば、大体は困らないのですから。

だから、困っている不安な子どもに対して、また教師が「教える」ことをなるべくしたくないと思っています。
困っているからって「型」や「レール」を与えちゃったら、
「待ってたら先生がなんとかしてくれる」って思ってしまうと考えます。
現在進行形で、まだ作文が完成しなくて、困りまくっている子が何人かいます。きっとこのまま「逃げ切りたい」と思っているのかもしれませんが、「まだかな~」としつこく待っています。

きっと、葛藤する原因は、
やっぱり「教師は教えるもの」。
困っているのに放っておくなんて、職務怠慢だ!
保護者が、なんか言ってこないかしら…。
と、教師の不安につながってしまうからだと思います。

でも、
答えのない(一つに定まらない)課題を立てておいて、
学び方も任せておいて、
最後には、
先生が助ける…
ってすごくもったいないと思いませんか?

だから、
わたしはとことん困らせて、もしかしたら作文は出来上がらないかもしれないけれど、「う~~~~~~ん」と困って粘り強くがんばった子を大切にしたいと思います。
出来上がりを期待したり、みんなをそろえようとしたりすると途端にできなくなるので、そういう考えを転換して、不安を乗り越えていきたいです。

ちなみに、
困っている子ばかりでなく、多くの子が自分なりの納得解を見付け、
そろえて学習していたら見つからないような考えをもつ子がたくさんいます。
例えば、「なぜ、時刻表のかぎを抜いても数字がもどらなかったのか」という課題にした子です。
お話の最後の不思議な出来事として、時刻表の数字が”かぎ”によってめちゃくちゃになるという場面があります。それまでは、かぎを抜くと元通りになるのに、そのときはならなかった。そこを課題にしたのです。

そこで、もしもどったらどうだったのかを考えました。
もし、元に戻ってしまったら、その後のバスのダンスは起きない。すると、それまでの出来事が、実は楽しい出来事だということや、はじめのしょんぼりしていた気持ちがたのしく変わっていたことにもつながりません。
このりいこの気持ちの変化は、この学習で大切なポイントになります。
一見、あまり重要でなさそうな子どもならではの、微細なことに注目した課題が物語の本筋につながっていたのです。
わたしも、子どもたちと話をしていて、「つながっているんだね」「大切だな~」と感心させられました。

子どもって
ぐちゃぐちゃで
バタバタして
バラバラな
ざわざわするものです。

学校の中、授業の中で、そういう姿を大切にするには、
いままでの構図や考えを転換して、
不安を乗り越える必要があるということ。
そこには、
未知のわくわくがあふれていると考えています。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
感謝!!