日本のゼロカーボン戦略・・・トヨタ
正月明けの1月5日、日経新聞においてはトヨタ米販売が21年末の初の首位、という記事が掲載された。
しかし同日の関連記事には、以下のようなことが書かれており、EVで先行するテスラは「EV専業の米テスラはさらに先を行く。21年の世界販売は20年比87%増の93万6000台と当初目標の75万台超を大きく上回った。」とあり、日本の輸出産業を支えるトヨタは大丈夫なのだろうか、と最近のカーボンニュートラル関連の書籍を読みながらも感じていた。
トヨタの米国販売233万台のうち、同社が定義するハイブリッド車(HV)を含む「電動車」は20年比73%増の58万台と大きく増加した。全体に占めるシェアは20年の16%から25%に伸びた。ただし、うち9割はHVで、米政府が電動車として認めるプラグインハイブリッド車(PHV)は10%の5万8000台、電気のみで走る純粋な電動車は燃料電池車(FCV)「ミライ」の2600台にとどまる。
しかし最近のトヨタのCMを見ていると豊田社長が、EVも何車種も出すということいい、FCVもPHVもやると言っているのを聞きながら、とはいえ、まだFCVが2600台とは・・・と、そのGAPについて不思議に思っていた。
ちょうど今読んでいる「脱炭素で変わる世界経済 ゼロカーボノミクス燃料電池内で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーで、モーターを回して走る自動車で す。燃料電池内で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーで、モーターを回して走る自動車で す。」において日本のこれからの進む道として、「安易にEVの波に乗らず、最大の強みであるハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を最大限に生かすべき」と書かれている。
EVにApple、そして先日はソニーの参画についてもニュースが出た。私にはITや電気機器などの様々な事業者がEVには参画してくるから、自動車は非常にコモディティ化されてくるものなのかと思っていた。しかしこの中において、これは製薬企業や医療機器などとも同じだと思われるが、「自動車は人命に関わる事故と隣り合わせでありながら、大した訓練もされていない個人に運転を任せており、何かあれば重大な責任を負わされている」というビジネス的には魅力的でありながらリスクも大きいビジネスであり、ソフトウェアのみの提供というのは責任分解点を明確にできず、結果としてハードウェアもソフトウェアも一体で提供していかなければならないもの、というものになるようである。なるほど・・・
ゼロカーボン時代における自動車産業に求められる条件として本書が挙げているのは、
①ゼロカーボン技術を有していること
②ブランド力のあること
③デジタル技術に長けていること
④高効率の生産体制
⑤投資力
であり、これを高いレベルで有しているのはトヨタとある。特に①において、私は書籍を通じてEVがゴールなんだと思っていたが、現状のEVの市場というのはレッドーシャン化するであろうこと、そして今でもEVの利益率は低く、蓄電池のコスト高もあって、ほとんどのメーカーがEVでは利益を出せていないようであり、テスラも最近になってようやくEV販売で利益が出るようになったという状況のようだ。(テスラは2020年でようやく黒字化しているようだ)
そしてさらにはEVはエネルギー搭載量がガソリン車よりも小さく、今後蓄電池の改良でその搭載量が増えたとしても、そのさらなる課題が充電時間。ガソリン車の給油時間が3分としても、30分で80%程度まで充電できるというEVの充電時間相場では、充電時間に10倍もかかってしまうという課題がある。さらには何台も同時に急速充電を行えるようにしようとすると、電力供給設備を整える必要がある、つまりインフラを整える必要が出てくる。
一方でトラックやバスなどの大型・長距離輸送にも問題があり、蓄電池はガソリン車に比べてエネルギー密度、つまり重量あたりのエネルギー量が低いために、どうしても重くなる。乗用車でも250kgもあり、これが10トントラックになると2トンにもなる。さらには充電時間もかかる、となってくるとFCV(燃料電池自動車=燃料電池内で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーで、モーターを回して走る自動車)が不可欠になってくる。
ということなどで結論されるのは、
・HVで財務基盤強化
・規模を追わずにEVに対応
・FCVを中心としながら、次世代燃料(※)が普及した場合の内燃機関車、HV投資
・EV市場の淘汰が進み、お買い得なったEVメーカーの買収
という方向性であった。ということで、冒頭のトヨタの米国市場での首位、そしてCMでの内容を見ながら納得をした。
※次世代燃料においてはバイオ燃料があり、日本は微細藻類の開発が進んでいるようである。微細藻類とは、藻類のうち淡水・海水中・堆積物中などの水分中にみられる植物プランクトンであり、1mm〜1マイクロメートルほどの大きさのもの。ユーグレナは油脂の生成が多い微細藻類の変異体株を量産する技術を開発しているようである。