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【兵庫県知事問題】なぜパワハラの音源が出てこないのか?

兵庫県の告発文書で指摘された問題点の一つに斎藤知事のパワハラ問題がある。
この問題については、百条委員会でも取り上げられ、何人かの証言も出ている。また、斎藤知事本人も一部の行為を「不適切」だっとして、行為そのものは認めている。

その一方で、具体的にパワハラしている様子が音源として残っている訳ではなく、それをもってパワハラは無かったと主張する者もいる。
しかし、百条委員会が行ったアンケートでは、回答者全体の48%にあたる2802名がパワハラを見聞きしたと回答している。
嘘をつけば偽証罪にも問われる百条委員会に出頭してもいいと回答している者も多数いる中、斎藤知事を嵌めるために、口裏を合わせたという事なのだろうか。
あまりにも非現実的な憶測であり、パワハラはあったと考えるべきだろう。

それでは、なぜ音源が出てこないのだろうか。
というより、パワハラを録音しておくというのは、そこまで当たり前のことなのだろうか。

そもそも公益通報をしたり、パワハラを録音しようという行為には相当な覚悟が求められる。勇気を振り絞って告発をしたとしても、情報の発信源として特定され、報復されることで、出世どころか、まともな社会人としての立場を失ってしまう事もある。
また、当時の斎藤知事は改革派の若手知事として世間的な印象もよかった。
結果として今回の場合は、告発者が亡くなり、記者会見や議会での対応が稚拙だったために失職にまで至った訳だが、告発前の時点では、音源一つで辞職にまで追い込むことは期待できなかっただろう。

このように報われる可能性の低い環境下で、隠し録りのような形で録音を試みようとする者はどれだけいるのだろうか。
ここで、危機管理コンサルティング会社が行った『「内部通報制度」についての現状調査』を見てみよう。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000034478.html
この調査では「1年間で受け付ける通報の件数が従業員100人当たり1.3件」という結果が出ている。
兵庫県知事のパワハラ問題に当てはめると、
「知事と接点のある職員の中で、1年間で“録音を伴った”通報を行う人の割合」を求める調査を行ったことと同義だ。
録音を伴うという条件が加わっている時点で、1.3%を超えることが無いことは明白だろう。

この結果を参考にし、パワハラ音源が出てこない事がありえない事なのかを推定してみよう。
①兵庫県庁内で、斎藤知事との接点があり、パワハラを録音できた職員の数
 斎藤知事は少数の側近を重用していたと言われている。
 また、職員とのコミュニケーションが少なかった事は本人も認めている。
 これらを踏まえると、50人がいいところだろう。
②録音を伴った内部通報をしようと考える職員の割合
 先述の調査結果を参考にすると、多く見積もって1.3%となる。

①②の仮定を受けて、斎藤知事と接点があった全ての者がパワハラを録音していなかった確率は、次のように計算できる。
1人目が録音しない確率(98.7%)×2人目が録音しない確率(98.7%)×・・・・50人目が録音しな確率(98.7%)
この結果は次のようなエクセル式で簡単に計算できる。
=POWER(0.987,50)=52.0%

つまり、知事と接点のある50人の職員が1年間に一人として録音を伴った内部通報をしない確率は52%となる。

もちろんこの仮定は、精度の粗い、ざっくりしたものである事は確かだ。
しかし、多少数字が前後したとしても結果が極端に変わるという事はない。また、少なくとも②の数字については、かなり斎藤知事擁護の主張に有利になるように仮定している。
それでも52%という数字が出てくるという事は、パワハラ音源が無くても何の不思議もない事を示しているのだ。
音源が無いという一点突破でパワハラは無かったとする議論は、そろそろ終わりにしてもらいたいものだ。

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