【小説】菊理、骨折れなり 下
筒城岡は、大王のいる高津宮から北に三里の所にある。元々は豪族である葛城一族の屋敷を改築したもので、屋根は全面茅葺。それが大小八つ塀に囲まれており、皇后の気まぐれで移り住んだとは思えない豪勢さであった。
「磐井姫様は奥の大広間にいらっしゃいます」
屋敷内の案内のため目の前に立つ下女は、どこか敵を見つめるかのような鋭い目をしている。ちらほら横切る下女たちも、仕事中とはいえ必要以上に素っ気ない。己は招かれざる客であると、必要以上に教えてくれていた。
「的臣口持でございます」
大