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【雑記】氷上の妖精になった幼馴染。
普段はカメラ系noteを執筆している身なので、いきなり雑談をぶっ込むのもどーかと思いますが、なんか今日は仕事が暇なので、ちょっとだけ僕のエピソードトークに付き合ってください。
なんてことのないくだらない話ですが、
冬になると思い出す… 青春時代の小ネタです。
あれは中学1年の頃の話。
季節はちょーど今ごろ… そう初冬だった。
近年は地球温暖化の影響により、冬の勢力がどんどんと衰えてきているような気はするが、およそ30年ほど前の東北地方は、しっかりと冬を演出していた。
当時地元では各自登校が当たり前で、学校より2km以上離れた地域からの登下校生徒のみ、自転車での登校が許されていた。
要するにチャリ通オッケーってやつ。
僕はそのチャリ通組だった。
ちなみに僕の実家は学校を基準に説明すると、かなり高台に聳え立ち、ちょっと山深い田舎の中の田舎にあった。
なんかキングオブキングみたいな言い方をしてしまったが、単純に田舎者だった。
中学生とはいえまだ1年生… 早朝、目も覚めないうちに外へ出て、ダサいヘルメットを被りハンドルを握る。
あ"ぁ… 今日も学校かぁ…
そんな毎日を過ごしていた。
中学生活にも慣れ始め、初めての春、初めての夏、初めての秋が終わり、いよいよ初めての冬を迎えていた。
ちょっと話は変わるのだが、僕には物心ついた頃から近しい幼馴染がいた。
当たり前だが、気が付いたら同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学と一緒の女の子。
今思えば顔は悪くなかったが、でも当時は顔とかそーゆんじゃないぐらい相性最悪な女だった。
とにかく性格がキツくて、何かにつけ僕に噛み付いてくる女。
"噛み付く" とは言葉の表現として使ったのではなく、本当に手に噛みついてきたりする。
男勝というよりか、男オブ男。
僕との喧嘩はいつも壮絶な殴り合いに発展するほど熱いものがあった。
あれはまさに2002年PRIDE.21で行われたドンフライ vs 高山善廣を彷彿とさせる、負けられない戦いだった。
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話は戻る。
僕の住む自宅から、中学校へ登校するためには長い激坂を下る必要があった。
まだ目もしょぼしょぼの早朝に
活気盛んな中学生が、チャリに乗って激坂を下れるとならばみなさん想像に難くないでしょう。
そこはまさにツールドフランスをも凌駕する、中学生たちの熱き戦い!
ママチャリロードレースが開催されるのだ。
普段はガニ股で、ハーレーにでも乗っているかの如くイキった中学生たちが、その激坂を下る時だけは豹変する。
談笑していた奴らも、無言になる。
鼻息が荒くなり、勝負師の目に変わる。
いよいよ激坂を目の前にし、体は自然に前へ前へとしゃがみこむ。
ギヤをトップまで押し上げ、下り坂に身を任せるのではなく、ペダルを漕ぐ!!
一気に踏み込む!
ううぅぅぅリャゃゃあぁぁぁーー!!
空気抵抗を極限まで減らし、1分1秒でも早く、誰よりも前へ!熱き中学生たちの青春よ。
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もちろん僕もその1人。
『負けられない』
ある日のこと。
いつもの激坂が目の前に現れた。
後ろからはぞろぞろと選手たちがやってくる。
おぉ… 今日は2年の誰々くんと3年の誰々もいるなぁ…。
少しだけ不穏な空気が流れる。
やるのか?
おお? 1年の分際で俺に勝てんのか??
そんな気配がプンプンする。
皆自然に体が前へ傾いてきた…
とその時先輩の1人が!
危ない!やめろ!!
日陰の部分がキラキラと光っている!!
アイスバーンだ!!
や、や、や、や、ヤバい!!
選手たちは一同にチャリから降り、手引きで坂を下り出した。
選手たちは一つになり、談笑をする。
『マジで危なかったなぁ〜 あのまま行ったら死んでたよ〜』
さすが先輩方、冬になるとこの坂は凍ることがあるから気を付けろと教えていただいた。
談笑は続き先輩が『こんな凍った坂をチャリで下ったらよ…』
シャーーーーーーーーーッ
な、な、なんだ!?
何者かがもの凄いスピードで横切った!!
誰だ!!!?
ん? 女だ!!
うわぁお! あの女だ!
お、お、おい!
なんだよアイツやべーな!
体は前傾、ペダルは全力、氷の上を猛スピードで駆け抜ける女帝。
すると見る見るうちに体は斜めになっていき、次第に体は倒れていく。
ほら言わんこっちゃない…
そして遂に…
自転車はそのまま反対車線へと吹っ飛んでいき、彼女は正座の体制で着地し、そのまま回転しながら100mほど滑り落ちた。
周りは皆呆気に取られ、一瞬何が起こったのか理解に苦しむ。
思い返してみれば…
幼稚園の頃は仲が良かった。
小学校に上がりなぜか喧嘩ばかりしてた。
中学校へ上がってからは、学校がマンモス校過ぎてどこのクラスにいたのかも分からなくなっていたが…
そんな幼馴染が、こんな大舞台でやらかしてくるとは夢にも思わなかった。
命に別状はなく良かったが、その代償はデカかった。
まず正座で100m近く滑り落ちた彼女のセーラー服のスカートは膝の部分だけ大きな穴が空いた。
自転車は反対車線へと激突し損傷。
ボロボロのスカートで彼女は立ち上がり…
俯いていた。
かわいそうだと思い助けてあげたいと思った。
大丈夫か!?って声をかけてあげたかった。
大嫌いだったけど、突如現れた幼馴染に動揺した。
そして呆然と立ちすくむ我々に彼女はこう言った。
『おメェーら!何見てんだよ!!』
一瞬の間が空いた後
その場は爆笑の渦が巻き起こった。
あの時の彼女の勇姿は忘れない。
あの激坂を、あの氷の上を、彼女はフィギュアスケーターのように舞ったのだ。
今どこでどうしているのかは分からないけれど、30年の時を経ても、未だに飲み会のネタにさせてもらってるからな😉