『Stand Out Fit In』を聴いて感じること。
うつ病と診断されて早くも1ヶ月が経とうとしている。うつ病になってできなくなったことは多くあるのだが、自分の考えや感情を文字にすることもその一つだ。そもそも何かに集中することができなくなった。本を読むことも英語を勉強することも好きなことでさえその日の体調や気分によってできなくなってしまった。仕事にも行けず、好きなことも出来ず、何もしないで過ごすことも珍しくない。
そのため週に一度習っている英会話のレッスンも体調や気分によってキャンセルすることもあるのだが、たまたま受けることのできた英語のレッスンで、タイトルにある曲を聴き感想を英語で書くという宿題が出された。実はこの曲は以前から知っていたのだが歌詞の8〜9割が英語で書かれており、当方英語の勉強をしているのだがその歌詞を深く知ろうとしなかった。某動画サイトで曲を調べ、歌詞とともに聴いてみると、まさに"blow my mind"の状態が起こったため今このように文章を書くに至る。
冒頭からサビに入るまでの歌詞はいたってシンプルなのだがそのシンプルさがメインパートを引き立たせる。
I know they don’t like me that much
Guess that I don’t dress how they want
I just wanna be myself
I can’t be someone else
Try to color inside their lines
Try to live a life by design
I just wanna be myself
I can’t be someone else, someone else
They yell, they preach, I’ve heard it all before
"Be this, be that", I’ve heard it before, heard it before
自分ではない誰かにならなければならないプレッシャーとなれない自分、そんな日々の闘いに疲れ果ててしまう、そんな経験は誰しもあるのではないだろうか。“They”はあなたのことを台無しにする特定の者であり、また見えない誰かであり、そして私たちの社会そのものである。こういなければいけない、という圧力に押しつぶされそうな声をこの曲が代弁してくれているようだ。
Big boys don’t cry
Shoot low, aim high
Eat up, stay thin
Stand out, fit in
Good girls don’t fight
Be you, dress right
White face, tan skin
Stand out, fit in
私たちがありのままの自分でいることは誰によっても妨げられてはならない、サビの歌詞ではそんな強い気持ちが込められている気がする。同時に自分自身でいることがどれほど難しいことかを訴えかけているようで胸が締め付けられる。あなたの性別やあなたの性格、肌や髪の毛の色や体格、全てあなたが与えられたものであって、あなたがそれを変えたいと思わない限りそれを変えることはできないし変えるべきではない。なぜなら、私たちを残念な気持ちにさせるあの“彼ら”が、私たちに投げつける言葉は矛盾ばかりだからだ。
男なら涙を流すな
現実を見ろ でも夢を持て
残さず食べろ でも太るな
はみだして なじめ
女なら大人しくしてろ
着飾るな でも見た目はきちんと
肌は白くあれ でも小麦色の肌であれ
はみだして なじめ
サビの部分を直訳すると以上のようになるのだが、あなたが“彼ら”が言うようになろうと思うことはあなたの人生で良いことを何一つもたらさない。ミュージックビデオ終盤の、中国の踊りを見せる演出は、主人公が変わらなければならないと“彼ら”に思わされていた彼のルーツであり、踊りをしてやっとありのままの彼になれたことを示す。そして彼もそのことにやっと気づかされるのだった。
自分と他者との違いを受け入れることは時に難しく、そして他者を理解するためには時間がかかるかもしれない。しかし相手も自分と同じように、自分らしくありたいと思っていることを忘れてはならない。自分も相手も変えさせることを考えてはならない。そんな当たり前のことを私たちは日々の出来事に追われて忘れがちになっているかもしれない。
英語のレッスンの宿題は疎かにしがちであり、先生に多少の申し訳なさを感じながらも何かと理由をつけて後回しにしがちだ。うつ病になってから勉強することがどれほど体力のいることか、しかしそれがどれほど私の人生に喜びを与えていたかを思い知った。そして同時にそれが自分の人生に少なからず影響を与えていることをこの歌を聴いて再確認した。いつも宿題を出さない私に優しく接してくれて、そしてこの素晴らしい曲に向き合わせてくれた先生に感謝するのだった。