日銀の国債保有、5割超え
資金循環統計が発表され、短期を除いた国債の発行残高の半分以上を日銀が保有する状況になったことが分かった。
短期除く国債発行残高 半分以上日銀保有に 大規模金融緩和策で | NHK
日銀の国債保有比率、初の5割超え :朝日新聞デジタル
日銀の国債保有、時価で初の5割超え 日銀公表: 日本経済新聞
日経記事では、「日銀の国債購入の最大の問題は、いくら政府が借金を増やしても日銀が国債を引き受けてくれるという認識が広がり、財政規律が緩むことだ。」
政府がいくら国債を発行しても、日銀が引き受けてくれるなら、借金(国債発行)し放題。もはや政府は日銀と一体化(統合政府という)しているということだ。
なので、日銀保有の国債が政府の借金でないとして、日銀保有分を除く国債発行残高と日銀の負債の推移を見てみる。(グラフは短期国債も含んでいる)
日銀が国債の保有を増やしているので、政府の実質国債発行残高は増えていない。否、2012年末からはかなり減っている。しかし、そのかわり日銀の借金(市中銀行からの預金受け入れ)が増えているのだ。
取引内容は省略するが、要は、日銀が三井住友銀行のような市中銀行から預金を受けれ、その資金で国債を買っていることになる。ちなみに、市中銀行の資金は国民の預金からきているので、結局、日銀が国債を引き受けても実態は何も変わらないことになる。
このことは財務省も分かっているので、「日銀の国債購入で財政規律が緩む」ということはない。ただ、そういう雰囲気になりがちだと言うだけだ。
日銀の国債引き受けで何も変わらないかというと、変わることがある。国債の場合、大部分は固定金利だ。ところが、日銀の預け金は政策金利だ。仮に、今後、日銀が利上げするようなことがあれば(YCCの解除は問題ない)、日銀の市中銀行への利払い額は増加する。あっという間に、日銀は債務超過に陥るだろう。まぁ、そうなっても、特に問題になるわけではないが。
上記の通り、日銀の国債保有は実態は何も変わらないということなのだが、では、実態とは、誰が誰に借金しているかということだが、以下の表のとおりである。
(1)金融機関(日銀ここに入っている)は、基本的に資金を右から左に流す役目にすぎない。
(2)企業(非金融法人企業)は純資産がマイナスになっているが、債務超過というわけではない。この表は、「誰かの借金は誰かの資産」という金融資産のコンセプトで作られている。企業は借金して設備投資するが、設備資産はこの表には入っていない。
(3)国内全体では418兆円の余剰になっている。国内には行先がないので、海外に行く。
実態とは、日本全体の金融資産・負債のネットである。ここがマイナスになると、国内では資金不足ということになり、海外から借金してこなくてはならないことになる。マイナス金額が大きくなると、かつてのギリシャのようになる。
政府がバンバン借金(国債発行)して、日本全体の金融資産・負債のネットがマイナスになると、事は大事になる。
この議論は、改めてすることにする。
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