なぜデータサイエンスを教えるのか
2000年前、人の行動を規定したものは何か?別に2000年前ではなくてもいいけれど、大昔、本当の意味で人間は自分の行動を自分では決めることはできなかった。
なぜなら、そこには神様がいたから。常に自分の部族や仲間たちが信じる神様にお伺いを立て日々の行動を決定していた。
田植えの日付や旅の行き先、子供の名付け、ありとあらゆるシーンで神様は姿かたちを変えながら人の行動を規定した。
かつて人の行動は神によって決められていた。
14世紀、イタリアでルネッサンスが勃興した。ルネッサンスの訳語は色々あるけれど、一般的には復活とか文芸復興とか、あるいは「人間回帰」と呼ばれたりもする。
…人間に回帰する?
なんとも不思議な言葉だが、これはつまり神様に委ねていたあらゆるものを人間に取り戻そうという動きにほかならない。もちろん意思決定の主体も人間に回帰した。暗黒時代と呼ばれた中世が終わり、人間中心の近代はここから始まった。
意思決定の主体は変遷するものなのだ。つまり大昔は神に、現代では人間に。では未来においても人間自身が意思決定の主体として存在し続けるのだろうか?
否。おそらく未来においてはデータこそが僕たちの行動を規定するだろう。
例えばアンジェリーナ・ジョリーは遺伝子検査で乳がんに罹患する確率が高いと診断されたために乳房を切除した。現時点でなんら症状は出ていないにもかかわらずだ。この時点で遺伝子というデータによってアンジェリーナ・ジョリーの行動は規定されたと言える。
またFacebookはユーザーが押すイイねの傾向から性格分析を行った。
あるユーザーがクリックした「いいね!」10回分をコンピューターが分析した方が、その人の同僚よりも的確に性格を言い当てられることが示された。またコンピューターの性格判断能力は、「いいね!」70回分を与えられた場合で友人や同居人を、150回分で親や兄弟姉妹を、300回分で配偶者を上回った。(c)AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3036333
300回のイイね分析で配偶者よりも本人の性格を理解できるのならば、それ以上のイイね数で自分自身より自分のことを理解するAIが作られたとしても不思議ではない。
例えば、あるお昼時、ハンバーガーを食べるべきか、ラーメンを食べるべきか、悩むことがみんなもよくあると思う。(少なくとも僕には週3回ある。)
非常に悩ましく頭の体力を使う問題なのだが、そういった時に僕以上に僕のことを理解しているAIが「ハンバーガーを食べた方が良い」とアドバイスをしてくれるなら、どうだろう?
僕はおとなしくAIに従い、頭のリソースを節約した上で満足感も得られる。自分で自分の行動を決定したわけではないが、とてもハッピーな気分になれると思う。さながら天啓を得た神官のように。
つまりデータが神になるというのは、意思決定の主体が人間からデータをベースにしたAIになる、という話なのだ。
意思決定の主体の変遷
-大昔:神
-現代:人間
-未来:データ(AI)
ここでようやくタイトルを回収するが、データが神になる時代におけるデータサイエンティストの役割とは何か?それはまさに神託を授かる巫女のような存在になるであろう。
ところでAIというテクノロジーを少し分解すると「膨大なデータ」とそれに対して「解釈を与える機能」に分けられる。
AI = 「膨大なデータ」 × 「データに解釈を与える機能」
「膨大なデータ」はSNSを含むインターネットの発展、機械学習を用いた画像認識や音声認識の進歩により、入手することが可能になった。では「解釈を与える」テクノロジーは十分に育っているのだろうか?
実はこの「解釈を与える」テクノロジーは現時点においてもハードルが高く、ごく一部分でしか実現できていない。つまりデータはあっても、そのデータを解読するための巫女が足りないのだ。
データは21世紀の原油であると言われて久しいが、既にGAFAを始めとする、ありとあらゆる企業が至るところでデータを集めている。その流れは巨大IT企業にとどまらず、日本企業を含む一般企業にも浸透していくであろう。
しかし足りない。圧倒的に巫女が足りないのだ。
僕は元々マーケットの世界で生きて来たので、需要と供給に敏感だ。需要が膨大であるにも関わらず供給が少ない市場というのは非常に美味しい思いができる。下品な言葉で言い換えれば「儲かる」のだ。
データサイエンティストは「膨大なデータ」が蓄積される現代において、今後すべての企業で必要とされる神託の巫女だ。この大きな波をただ傍観するだけというのはもったいない。
乗るしかないのでは?このビッグウェーブに。
参考図書:ホモ・デウス
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07GGFY1JH/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i4
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