代官山17番地|ハービー・山口
写真集について書くマガジン、4冊目はハービー・山口さん(以下、ハービーさん)の「代官山17番地」。
ハービーさんを知ったのは、いつの頃だっただろうか?
写真を始めたころ、雑誌「アサヒカメラ」の古本を買い漁り、たくさんの写真を見て好きなものは切り抜いてスクラップブッキングをしていた。
それを捲ってみると、LONDON CALLINGやPEACEが収められている。
暗室に入り、自分でフィルム現像やプリントをやるようになると、モノクロの作家の作品に興味が湧くのは自然な成り行き。
被写体への優しい眼差しとプリントトーンが素敵で、ハービーさんは好きな写真家の一人だった。
ハービーさんは、妻がキヤノンフォトグラファーズセッションでキャノン賞をいただいたご縁(審査員の一人がハービーさんだった)もあり、わたしたちにとって特別な写真家。
関西で写真展や講演会が開催されると、二人よくお邪魔して好きな写真集、そしてその中でも好きなカットにサインをもらったりもしてきた。
とある神戸での展覧会、いろいろなトラブルが重なりたまたま居合わせた私がハービーさんの作品をすべて壁に展示するという不思議な体験をしたこともある。
そのようなたくさんの思い出があり我が家にはほとんどの写真集・エッセイがあるのですが、今回はハービーさんの「代官山17番地」を取り上げたいと思う。
代官山17番地(1998年 アップリンク版)
後に、新編が発売されるのですが、こちらが元々の写真集。
その存在を知った時には入手困難な状況だったのですが、妻がどこかから手に入れてきたもの。
ローライフレックスで切り取られたスクエアなフレームに、同潤会アパートの時間の止まったような懐かしい雰囲気、他の作品にも共通する若者をはじめとする人々の直向きさや笑顔、そして希望が写し取られている。
印刷のトーンがとても軟調で、紙のさらりとした質感も相まって、とても古い写真集かのような印象を与える。
「代官山17番地ー写真家になる日ー」図録(2013年 JCIIフォトサロン)
こちらも妻が手に入れたもの、JCIIフォトサロンで写真展の図録。
先のアップリンクのものと比較し、黒が締まり、全体的にコントラストも高く、違った印象。展示を見ていないのでどのようなプリントトーンだったのかわからないけれど、あらためて眺めると、標準域で撮られた、素朴だけど整理された構図が美しい。
正方形というのは一番円に近い四角形。円とは真理であり、永遠の象徴でもある。同潤会アパートとそこに集う人々を収めたいという思いとクラシカルで物静かなローライフレックスというカメラの選択が、とてもいいなぁと思う。
新編 代官山17番地(2018年 スペースシャワーブックス版)
こちらが、20年ぶりにリニューアルされた新編の「代官山17番地」。
ダブルトーン印刷をしているのだろうか?モノクロームの階調が美しく、ヴァンヌーボっぽい紙のマチエールもしっかりと感じられる。
旧版から除かれたカットも多いけれど、新たに追加されたカットもあり、とてもいい風合いに仕上がっている。今調べてみたら、こちらももう手に入らないようです。
いろいろ調べていると、東京印書館のyoutube動画を発見(ダブルトーン&ニス引きって言ってますね)。こういう製版・印刷の話を聞けるのは楽しいですね(私は会社員時代に印刷業もやっている会社に所属していたので印刷が好きなんです)。
こうして、我が家にある3冊の「代官山17番地」。
写真は"それそのもの"も良いですが、紙に焼いたもの、そして書籍として製本されたものは写真というものをより味わい深いものにしてくれるので、写真をする身としてはカタチにすることにこだわっていきたい。
ということで、写真集を見ようの4冊目はハービー・山口さんの「代官山17番地」でした。
よければ、過去のもの合わせてご覧ください。