その日のあぶく銭はその日に皆のために使う
先日のこと、僕のバイト先であるホテルでイベントが開かれることになった。
そのイベントというのは、ホテル内にあるバーでDJが音楽を流し、お酒を飲みながら来る者拒まずで楽しむという、言わばパリピのようなイベントだった。
僕はそういう空間があまり得意ではないので、最初は全く行く気がなかったのだが、バイト仲間の子が私もDJをやるので是非来てくださいとのことだったので、まあ顔を出すだけ出してやるかという軽い気持ちで行くことになった。
だが、いくらバイト先と言えど1人で行く勇気はなかったので、その同じバイト先で働いている芸人の同期を無理やり誘って、そいつとそのイベントに行くことになった。
イベントは夜の20時からだったので、同期とそれまで何をしようかという話しになり、僕たちは朝からパチスロのイベントに行くことになった。
この時点で1日2つのイベントに行くことが確定し、流石にこの日はイベントマンという名前を名乗ってもいいだろうと思った。
僕たち2人はイベントマン同士、言わばイベントブラザーズなのである。
ということで当日、イベントブラザーと朝9時に秋葉原で集合。
僕は前日に従兄弟とワインを飲みまくったということもあり、ベロ二日酔いでフラフラしながらなんとか現地に到着できた。
最寄りから秋葉原までの記憶は全くなく、なんなら朝の満員電車で息ができにずに一回死にかけた。
同期と合流してから軽く談笑し、9時半にパチスロの抽選をすると、同期が129番で僕が181番と、まあだいぶ絶妙な番号だった。
お互いお目当ての台に座れるか座れないかの瀬戸際、欲を言うなら2人並びで打ちたかったので、2人ともどの台に座ろうかと、入念に打ち合わせをした結果、スマスロの戦国乙女4を狙うことにした。
そして10時、いざ入店。
僕たちイベントブラザーズは一切の無駄のない動きとルートで戦国乙女の島に到着し、並びで台の確保に成功した。
すると同期が前日のデータを見て「やっぱりこっちの方がいいかも」と言い出したので、お互い1つずつ席をずれて座った。
この、台を1つずれたことが功を奏すか否か、ドキドキしながらスロットを打ち始めた。
すると打ち始めてから約10分、投資4000円で僕がフリーズ引いた。
戦国乙女のフリーズは16384分の1の確率で、スロットを知らない人に向けて詳しく説明すると、まあとにかくすごくてやばいことをしてしまった。
同期とスラムダンクばりのハイタッチをして肩を抱き合った後、店員さんがたまたま通りかかり「朝イチからフリーズやばいっすね、おめでとうございます」と満面の笑みで言ってくれた。
これはもう今日は勝ち確だなと、そんなことを言いながら同期と打ち進めていると、僕はあまり出玉を伸ばすことができず、1000枚ほどでAT(当たり)を終わらせてしまった。
ATを終わらせてから約15分後、出玉を400枚ほど減らしたところで、僕がまたフリーズを引いてしまった。
1日に2度フリーズを引くというすごさをスロットを知らない人に向けて詳しく説明すると、まあとにかくとんでもないことをしてしまった。
そこからはもうとにかく出ること出ること。
もう出すぎてメダルが増えることに何も感じなくなっている自分がいた。
ちなみに1番最初に席をずれる前に確保した台は全然出ていなかったので、席をずらしてくれた同期には感謝してもしきれないぐらいだ。
まあフリーズを2回も引いた僕の強運も素晴らしすぎるのだけれど。
結局、打ち終えたのは18時過ぎ。
僕は4000円投資の10030枚、同期は37000円投資の73枚だった。
今回は乗り打ちだったので、勝ち額は全て折半した。
僕は悲願の万枚を達成することができたので、同期よもっとがんばれやとかすら一切思わなく、清々しい気持ちで店を出た。
10年スロットをやってきて一回も万枚を達成したことがなかったので、僕のスロット人生にもう悔いはないなと、やっとこれでやめれるなと、諦めずに夢を追い続けているといつかは報われる日がくるのだなと、今パリオリンピックに出ている人たちもこのぐらいの気持ちなのかなと、ギャンブルとオリンピックを比べてしまうというアホな考えになるぐらい達成感に満ち溢れていた。
僕たちイベントブラザーズは、朝から何も食べていなかったので、バイト先のイベントまでに何か食べようということになった。
僕は大勝をおさめるとサムギョプることに決めているので、2人で韓国料理屋に入店。
勝利の美酒ならぬ勝利のマッコリを飲み、たくさんサムギョプってからほろ酔いで店を出た。
そしてバイト先へ直行。
イベントはとても盛り上がっており、前いたバイトの子やその友達たち、宿泊者や外国人観光客で賑わっていた。
きょう万枚をだしたことと前いたバイト先の子たちとの久々の再会、バイトリーダーとしてのメンツ等、色々なことが重なり、僕たちイベントブラザーズはシャンパンを6本ほど開けてしまった。
20時頃にふらっと行ってパッと顔を出して帰るつもりが、気付けば朝の3時になっていた。
俺は何をしよんや、何でいつもこうなるんや、もっと自分を制御しろよ、と自分を責めたくなったが、正直バイトリーダーとしてみんなが帰るまではいなくちゃいけないよなと思っていた節もあるので、まあ今回は仕方ないかと自分で自分をなだめてあげた。
そして3時半頃、まだ始発を待っているバイトの子たちがいたので、その子たちを引き連れて再度別の韓国料理屋に入店した。
1日で2度韓国料理屋に行くとは、もうこれは流石にコリアンマンと名乗ってもいいだろうと思った。
5人で始発まで飲み明かし、というか僕がその場をぶん回し、会計も僕が全て支払って店を出た。
申し訳なさそうにお金を差し出してくるバイトの子たちに対して、別に全員で1200円ぐらいだったからいいよ、とわかりやすすぎる嘘を咄嗟についてしまった。
そして6時頃電車に乗り帰路についた僕は、財布の中身を見て、
(、、俺ってきょう万枚出したんよね??)
とキョトンとしながら眠りについた。
その日入ったあぶく銭はその日にみんなのために使う。
だから明日も勝てる。
ギャンブルにではなく、人生という1日1日に勝つために、人生を楽しむために。
そんなことを思いながら、今日は競馬で28400円負けました。