もしも緑色の血が流れていたら
好きな映画がある。
定期的に見たくなる映画。
境遇は全く違えど、主人公の気持ちが痛いほど分かり、これを見るとモヤモヤした気持ちが少し消化されるような気がする。
自分や世界にうんざりしたとき、嘆くほどでもない鬱憤が溜まったとき、そんな虚しい夜に見たくなる。
最近、久しぶりにまたこの映画を見てみた。
なので今回はそれにまつわるお話。
この映画にはハッとさせられるような名言ばかりでてくる。
映画中にでてくる杉原(主人公)の言葉で、特に好きなものがある。
「俺、自分の肌の色が緑色だったらよかったのにって本気で思う時ありますよ、そしたら自分が在日ってことを忘れなくてすむし、怖いって思うやつはハナから近よってこないし」
主人公の杉原はいわゆる在日朝鮮人で、見た目は日本人となんら変わりないのに、自分が在日であることから多くの悩みを持っている。
差別や障壁、それで溜まる鬱憤や葛藤、歪で淡い青春、そんな映画。
僕も思う。
肌の色が緑色だったら楽なのにと。
いや、それは流石にシュレックすぎるか。
でも例えば血の色とか爪の色とか目の色とか、なんでもいいのだがみんなとは違う奇妙な何かがあれば楽だったのにと思う。
そうじゃないのであれば僕も「普通」で生まれたかった。
エッセイで何度か書いたことがあるが、自分の感覚がまわりと違いすぎて窮屈になるときがある。
昔、投稿したエッセイの言葉を借りよう。
『僕は、物心ついたときから周りと何かが違うという自覚があった。
圧倒的多数の人が、何の疑問を持たずに行うようなことに対して疑問を持ち、圧倒的多数の人とは違うことをしようとする。
しようとするというよりもそうしてしまう。
簡単に言うと価値観が違いすぎる。
理解や共感が得られないことばかりでうんざりする。
でも、他者に対して考えを強要したりはしない。
僕の方が変だという自覚はあるから。
だって、圧倒的少数の人なのだから。』
なんでみんなは普通にああいうことができるんだろう、僕にはできない、僕も普通側で生まれたかったなとつくづく思う。
例えば恋愛。
同年代は続々と結婚しているが、僕には考えられない。
僕が人を幸せにできるとは到底思えないから。
付き合っている彼女と旅行に行ったりお出かけしたり、そんな幸せそうな姿をSNSにあげたり、僕にはそれができない。
僕がしていると考えるだけでゾッとする、あんなことするぐらいなら彼女なんかいらないという結論に至る。
1番厄介なのがなんでゾッとするかが説明ができないというところ。
なんでかと聞かれても生まれつきとしか言いようがないのだ。
人種が違うというべきか。
人の恋愛話に全く共感ができなくて困る。
先日、友達とあるドラマを見た。
そのドラマの中で「アロマンティック」という言葉が出てきた。
そのとき、僕はこれかもしれないと思った。
アロマンティックというのは、簡単に言うと他人に対して恋愛感情を持てない人のこと。
マイノリティのひとつで、いわゆるLGBTとかのくくりといっしょ。
アロマンティックで困ることはたくさんあるが、人にアロマンティックと言ってももちろんピンとこないし、証明のしようがない。
なので、誰が見てもアロマンティックだと分かるような印がほしいのだ。
血の色とか爪の色とか。
僕の「普通」じゃない部分は何も恋愛に限った話しではない。
例えば、僕は全然許せるようなことでもまわりは怒ったり、僕は許せないがまわりは平然としていたりすることが多い。
僕は許容範囲が広くほんとにほとんどのことは許してしまうのだが、僕の友達が誰かから被害を受けている姿を目の当たりにすると無性にむかついてどうしようもなくなるときがある。
遊びだってそう。
普通の同世代が楽しんでいるようなことではあまり楽しめない。
お金の基準も全く違う。
僕はよく人に奢ったりしてしまうのだが「なんで奢ってくれるの?そんなにお金持ってるの?」と聞かれることがある。
その質問にハッとする。
こんなにジリ貧なのになんで僕は奢っているのだろうと。
そして考える。
結果、どうやら僕はお金の価値が人よりも低いのだなという答えに辿り着く。
いま説明した僕の「普通」じゃない部分はほんの一部。
他にもたくさんあるのだがまたの機会に。
そして、話しは急展開し芸人の話。
芸人は良い。
なんでも受け入れてくれるし話しが合う。
僕と同じような「普通」じゃない人ばかりなので居心地が良い。
恋愛や遊びやお金の価値観も、一般の人よりかは合う人が多い。
もちろんちゃんと変なやつもいるけれど、それもそれでいい。
とても優しい世界。
なんか見切り発車で好きな映画の話しを書いてみようと思ったが、けっきょく芸人の話になってしまった。
僕の普通じゃない部分を説明していると「ああ、だから僕は芸人になったんだな」と思ってしまっから、どうしても書きたかった。
生き辛いと思っているあなた、芸人になればその生き辛さも少しは解消されますよ。
でもおすすめはしません。
生き辛さと引き換えにとてつもない生活し辛さが待っているので。