僕の引っ越し物語
先々週のエッセイで、引越し先の内見に行った話を書いた。
そして先週の日曜日、ついに引っ越しをした。
怒涛の引っ越し作業に疲れ、まだその疲れがとれていないが、記憶が鮮明なうちに書いておこうと思う。
まずは引っ越しの前日のこと。
僕は朝からバイトがあり、帰ってきたのは22時頃だった。
この時点でまだ何も荷作りができておらず、何から始めたらいいのやら手付かずの状態だった。
22時でこの状態はやばいだろ、俺はほんとに明日引っ越すことができるのか、どうしよう。
とりあえず考えるのをやめ、5分ぐらい天井を見つめてみた。
ただただボーっと、思考を停止して。
だが、天井を見上げてみたところで何も状況は変わらなかった。
天井を見た後に部屋を見渡すと全てが片付いているという僕の淡い願いは叶わなかった。
とりあえず僕が普段かわいがっている後輩(僕のカバン持ち)に電話してみた。
「もしもし、お疲れ」
「お疲れ様です。どうしましたか?」
「明日引っ越しなんやけど全く何もできてないんよね」
「何してんすか」
「今からお前の実力で10人ぐらい助っ人呼べる?」
「えぇ、相方とか呼びましょうか?」
「いやそれはいいよ申し訳ないし」
「じゃあとりあえず自分いきますよ」
「ありがとう、待っとく」
話しがわかる後輩で良かった。
いやまあ別に僕が来てくれとお願いしたわけでもないし、あいつが勝手に今から行くって言っただけやし、全然ひとりでも片付ることはできたけど、とにかく話しがわかる後輩で良かった。
カバン持ちが到着するまでの間、僕はシャワーを浴びたり洗濯物をまわしたり、荷作りに関わることは一切何もしなかった。
すると、カバン持ちから電話がかかってきた。
「もう1人助っ人見つかりました!僕の同期です!」
いやいや、絶対3人もいらんやろ、持て余すし申し訳ないって、てか布団とか寝るとことかないし。
そのことをカバン持ちに伝えると「えぇ、もう向かってるらしいんで断れんすよ、すいません」と謝ってきた。
まあいいやと思い、のほほんと後輩が着くのを待っていた。
そしてカバン持ち後輩が到着。
僕の部屋の状況を見て「もう何してんすか!」とカバン持ちが語気を荒げていた。
普段あんなに僕に従順なカバン持ちが、今までで1番の荒い語気だった。
カバン持ちがお土産でビールを買ってきてくれていたので、とりあえず乾杯した。
ビールなんぞ買ってきてこいつやる気あんのか、と思ったけど今日まで片付けから逃げていた僕が言えたことではないので、言葉を押し殺してグビっとビールを流し込んだ。
そしてもう1人の後輩も到着。
「すいません遅れました」
「いやお前いらんて、やることないやろ」
「えぇ、バイト早上がりして来たのに何てこと言うんすか」
そんな会話をしながらとりあえず3人で乾杯。
この時点で23時をまわっており、どこから手をつけていいのやら3人で頭を抱えていた。
天井を見上げて呆然としている僕に後輩たちが、もうとりあえず取りかかりましょうと叱咤してきたので、仕方なく荷作りを始めることにした。
そこからの集中力は凄まじかった。
3人の超絶連携プレーでなんとか深夜3時頃に9割がた片付けが終わった。
カバン持ちがもう1人の後輩を連れてきてくれてほんとによかった、2人だとほんとに危ないところだった。
というかカバン持ちの方がポンコツすぎて、もう1人の方の後輩のおかげでなんとかやり終えたと言っても過言ではなかった。
そして、3時から3人で軽く飲んだあと、後輩2人には毛布4枚ぐらいだけ渡し雑魚寝してもらった。
そして朝の9時に起床。
僕のカバン持ちは一睡もできず、ウィスキーをロックで飲みまくったらしいので、寝不足の二日酔いで僕を起こしに来た。
とりあえず僕はハイエースをとりにレンタカー屋へ。
その間に後輩2人は引っ越しの準備を進めてもらった。
家に戻りハイエースを家の前につけると、後輩たちがほぼほぼ荷物を外に出してくれていて感激した。
そしてここで僕の同期が合流。
その同期は僕のことが大好きなので無償で手伝いに来てくれた。
4人の超絶連携プレーでハイエースに荷物を詰め込んだのだが、1往復でいく算段が明らかにハイエースのスペースが足りず、2往復することにした。
二子玉川から中目黒まで一旦、1往復目。
新居の方に後輩2人を置いて荷ほどきを頼み、僕と同期は再び旧居へ。
2回目のハイエース詰め込みの途中、暗雲が立ち込めてきた。
(、、あれ?これ2往復じゃ無理じゃね??)
どうしてもこの回で終わらせたかった僕たちは、ハイエース内でテトリスをしているかのように上手に詰め込んだ。
少しでも荷物を減らそうと、僕の家にカバン持ちが忘れていった靴下を捨ててやった。
ハイエースにパンッパンに荷物を詰め込み、なんとか2往復目で全ての荷物を運び出すことに成功した。
新居に着いてハイエースの扉を開けると、雪崩のように荷物が飛び出てきた。
僕のことが大好きな同期は、その雪崩を見て笑っていた。
一旦、荷物を全て外に運び出し、後輩2人に荷物の荷解きを念入りに頼んでから、僕と同期は二子玉川へハイエースを返しにいった。
ハイエースを返した後、電車で新居の方に戻ると、クタクタで目が虚ろになっている後輩ふたりが死にそうな顔でこちらを見つめてきた。
だいぶ荷解きが終わっていて、ギリ住めるくらいになっていたので「ありがとう!助かった!」と元気よく声をかけると、後輩ふたりが虚無の顔で「、、、ぅす」と言ってきた。
流石のカバン持ちも疲れすぎてこたえたらしい。
後輩ふたりに「これで飲みにでも行ってきて」と1万円を渡すと、カバン持ちじゃない方の後輩が速攻で5000円をカバン持ちに渡していた。
どうやら後輩はカバン持ちに借金をしているらしい。
それにしても先輩から飲みにでも行ってと言われて渡されたお金を目の前で借金返済に当てるか?と思ったが、今回の引っ越しMVPの後輩だったので、あまりそこは咎めなかった。
そのあと元同居人も合流し、5人でホルモン屋に行って食べて飲んで楽しい夜を過ごした。
ここからは後日談。
僕は荷解きをしたくなかったので、2日後に再びカバン持ちと同期を呼び、ほぼほぼの荷解きをしてもらった。
そのときもカバン持ちは虚ろな目で何も考えずひたすらに作業してくれた。
僕は今回の引っ越しで、自分1人じゃ何もできないことを知った。
ちなみに僕は引っ越し5回目だし、なんなら引っ越しのバイトもしたことあるのに、1番の役立たずだったと思う。
次引っ越すときは売れたとき。
ちゃんと業者に頼んででっかい家に引っ越そう。