「i」 (西 加奈子)を読んで
白いしるし、サラバ、ふくわらい、円卓に続き、西加奈子の書作を読むのは5冊目になる。著者の本は共通して主人公が奇抜な性格。その性格が、ある本では理解し難かったり、可愛らしくあったり、うらやましかったりした。そして、どうしようもない性格であっても、その人に転換期が訪れ、見事に成長(克服・自分を受け止める)していくのである。私は感情移入こそできないが、それらの過程に感動を覚えている。
本作においての主人公は、性格はこれまでになく控えめであったが、出自が特異であった。この奇抜過ぎない人と違う一面生に私は共感でき、これまでの西加奈子の作品の中で最も物語に入り込むことができた。
コンビニ人間(村田沙耶香)でもそうだったが、近年は「普通」でいることを強制させる一般人の"多数の力(ポピュリズム)"をひどく強く感じる。だからこそ自分の存在を否定してはいけない。人と違っても私はここにいてもいいんだという実感こそ必要なんだと諭してくれた。人間万事塞翁が馬、今起こっていることをありのまま受け止め、生を大切にしたいと強く思わせてくれた一冊であった。