夏限定 覇権大捲り獲得事件
S
今回は最初からネタバレありです。
最後まで見てない方はプラウザバックして
本編を全部視聴しましょう。
途中までじゃなくて全部です。
俺は思ってた
スイーツが好きな女子高生とそれに振り回される男子高校生。
日常に起きる謎を解決していくまったり日常アニメ。
最後はスケールを大きい事件にして心地の良い大団円。
スイートメモリーで全てわかった。これは全部偽り。
小佐内ゆきの策略。俺たちは手のひらで踊らされていた。
感想
氷菓で聞き馴染みのある米澤穂信が原作している今作品。物語は「何気ない日常の中にあるミステリー」を扱っていることだけが共通点であり他は対をなしておりどちらにも強烈な個性が宿っている。
氷菓では折木奉太郎と千反田えるの凸凹コンビであった。言うならば北風と太陽であろう。冷静冷徹な折木という北風を裏表ない明るさと真っすぐな知的好奇心で太陽のように照らす千反田える。寒い冬が終わり桜の花びらが吹き荒れる中でえるに頬を赤らめる折木で1期が終わるのは懐かしい。
一方で、今作品の小市民シリーズは全てが異なっていると過言ではない小鳩常悟朗と小佐内ゆきはどちらもトラウマを抱えており奥行きのある人間として描かれている。氷菓を評した言葉を借りるとしたら凸凸であり両者とも強烈な北風。そんな2人が織りなすストーリーは氷菓と比べると文学的である。画を見せるというより聞かせる作画である。謎解き場面はテンポの良い会話劇にリンクした素早い画面転換で躍動感を生む。氷菓が平面であれば小市民シリーズは立体と言えば良かろうか。序盤から氷菓の違いがくっきりと出ておりジェネリックに成り下がらない原作の強さと制作陣のセンスの良さが垣間見えており上品なアニメであった。
序盤から中盤にかけては小佐内ゆきが作成した小佐内スイーツセレクションを軸に日常に起きる小さなミステリーを解決していく1話完結型の構成。終盤にかけて不良グループに誘拐されるという2-3話構成で完結という穏やかな日常アニメであった。そうラスト2話までは。。。
まずはっきりというと今までのことが全てぶっ飛ぶ結末であった。端的に言うと、小佐内ゆきがとんでもない。口語で言うならエグイ。とんだ漆黒腹黒ヒロインであった。完璧に騙された。全ては策略の上の物語だったのである。振り返ると小佐内ゆきは出会った不幸はたとえ労力がかかってたしてもしっかりとカタにはめていたを思い出す。策略を巡らす知性と実行に移す胆力で完全に他の登場人物を圧倒していた。それを全部9話と10話でぶち上げたのだからただただ感服せざるを得ない。完全に見誤っていた。やっぱアニメって最高。
”互恵関係”という曖昧な男女関係で結ばれた小鳩常悟朗にも言及したい。ある意味で最大の裏切られをくらったかわいそうな存在にも見えるが、小市民であるためにエンジンブレーキをかけ続けている小鳩と対照的に搭載はされてはいるが簡単にタカが外れる小佐内ゆきに一種の憧れのような感情を持っていたのかもしれない。小鳩は小佐内ゆきより知性は追随または超越しており良き理解者になっていたが行動力では全く及ばなかった。物語の中でもほぼ全てのミステリーが堂島から持ち寄られている点からもうなずける。
氷菓の結末とは対照的に完全に袂を分かってしまった2人。小鳩が小市民から脱却できるか、小佐内ゆきの暴走をとめるのか。もう2期が待ち遠しい。
完全なる小市民への飛躍を始めて続編を座して待つ