Arctic Monkeys - The Car(2022)
前回の記事でも触れたアクモンの新作。AMについて書いたときは、初期の勢いと青さ的なものが失われているみたいなことを書いたが、今回のThe Carはそういったアクモンに対する勝手なイメージに完全に終止符を打ってくれた。巷では賛否両論だが、ぼくはめちゃくちゃ最高なアルバム、歴史に残る名盤じゃないか、と思っている。「賛否両論になる」ということは、映画でも音楽でも「傑作あるある」だし。
初期のアクモンを一種の「頂点」とした時、そのまったく正反対に位置する「頂点」がこのアルバムだと思った。ちなみにAMはその中間地点と思う(ゆえに、ある種の中途半端さを個人的には感じる)。初期と後期?のサウンド象の変化は、ビートルズの「アイドルライブバンド→スタジオ実験バンド」に似ている。
初期は衝動的なガレージロックだったが、The Carはオルタナティブロックをめちゃくちゃ煮詰めた味がする。つまり、あらゆるジャンルをロックと組み合わせて新しいオルタナティブを生み出す、という点において極まっている感じがする。組み合わされたジャンルは「ジャズ」「ソウル」「ファンク」「映画音楽」あたりで、ギターサウンドは残しつつ、シンセやドラムマシンやストリングスが大胆に使用されている。(ゆえに)彷彿とするアーティストは「レディへ」「ビートルズ」「ジョージ・クリントン or ファンカデリック」あたりだと感じたが、インタビューに記事にこの辺りは詳しい。👇
巷で賛否両論になっていると書いたが、「否」の意見はやはり最初に書いたような、初期サウンドとの違いについていけない、というものだ。本作は全編通してアップテンポの曲は皆無で、かなりしっとりとしているため、その意見はよくわかる。が、しかし、そういった期待感を持たずに聴けば、つまりアクモンなんだ!と思わずに聴けば、良さがわかるんじゃないか。とは正直言えない。
前述の通り、かなりいろんなジャンルを組み合わせるだけでなく、それぞれの組み合わせ方が無理なく、むしろ昇華されたものになっているだけでなく、サウンド面以外の話=ソングライティングの面でも「驚き」と「親しみ」を感じられるハーモニー/リズム/メロディを兼ね備えている。じっさい、ジャズの響きが隠し味的に/スパイス的に盛り込まれていて嬉しい。
が、経験則ではそういった実験的なことが極まっているアルバムは、いわゆる商業的なロックではないし、いわゆるポップさは反比例的に失われていくため、賛否両論になりやすい。『KID A』『Abbey Road』あたりも当時は賛否両輪だったし。映画でも音楽でも、ぼくはそういった作品に弱い。
ぼくの拙文のせいで「実験的なオルタナティブロック」くらいにしか表現できていないのが悔しい、、、繰り返しになるがソングライティングの面でも新鮮さを感じることができるのがぼくの加点ポイントだ。
例えば1曲目のこれ。イントロの~0:40から歌が入るまでの繋げ方など新鮮だし、美しいシネマティックなストリングスが素晴らしい。
1曲目でアルバムの雰囲気を掴んだ後にくる2曲目も最高だ。かっこいいイントロ→ファンカデリック的な泥臭いギターリフの曲かと思いきや、メロウさや不気味さもずっと漂い続ける超かっこいい曲だ。
4曲目も3拍子のソウルフルかつメロウな曲で、キャッチーさも感じる。0:49あたりのコード進行で見える風景がとてもいい。
キャッチーといえば5曲目も素晴らしい。本当に、老練?されたサウンドで、素晴らしいな・・・。いやしかし、アレックスの声でこういった曲を歌うとこうなるのか、、、思いもよらなかった。
最後に、何がいいって、個人的な名盤の条件である「短さ」だ。スローテンポな曲しかないためロックファンは聴くのに退屈するかもしれないという不安を感じそうだが、これまで書いている通り、飽きさせることはまずない上に、全体で10曲で37分という短さ!最高!
マジで名盤!!!
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