短歌投稿まとめ
●短歌ください(ダ・ヴィンチ)
先週と同じものかもしれぬ歯医者のネーム入りスリッパを履く(第128回『歯』)
帰省するバスターミナルの便座の焦げた跡から遠く離れて(第133回『煙草』)
ふくらんだ高速用の小銭入れでジャンボいちごを買ったっていい(第138回『財布』)
閉じられた黒いカーテンのすきまから盗み見る校庭の美しさ(第 回自由詠)
ピアニカのホースのみハーモニカのケースのみを売っているお店(第148回『幸福』)
女子はまだ「○○っていう人」と呼ぶ転校して二週間経つ(第 回自由詠)
夕闇にプレハブ小屋の公文式この先にあるタイムマシンは (2021/6『タイムマシン』)
帰り道月夜の下に回転をやめて「絵」になる床屋のポール 第165回自由詠(ダ・ヴィンチ2022/1)
●野性歌壇・俳壇(野性時代)
全然親しくなかったセブンイレブンの店員さんさようなら(加藤千恵選・佳作)
顔はよくわからないけど二人いる 夜行バスのカーテンを閉める(山田航選・佳作)
穴がある小指くらいのきれーな円そいつの上をホウキで掃く(山田航選・特選)
よいものをみせてもらったコンビニ弁当を食いきった空容器(山田航選・特選)
校庭へ避難しながら笑うきみ、きみは死なない恋は実らない(加藤千恵選・特選)
封筒をハサミで切ったきれはしがなかなか細い細くて茶色(山田航選・佳作)
一日につまらないこと多々浮かぶ 河井案里坊主似合いそう(山田航選・佳作)
ボタンだけ押されてひかる信号にだれもいなくておもそうな月(2021・5/加藤千恵選特選・山田航選佳作)
白銀の糸締めつける包茎の手術のあとの烟る朝勃ち【山田航選佳作】
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部屋からいつも見えてる細い電柱の先端に立つ日はこない(長嶋有選)
※野性俳壇の選者が短歌を、野性歌壇の選者が俳句を選ぶという企画が一度だけあった。
目高を見て水を見て目高を見る(長嶋有選)
背泳ぎの今か今かと天の罰(長嶋有選)
自転車の撤去あざやか鰯雲(長嶋有選)
ザギトワのマサル愛しやライラック
(野性時代2021年5月号)
野性俳壇・長嶋有特選
●短歌の時間(公募ガイド)
生活のはじのあたりが破裂する洗濯ばさみ白く乾けば
地球にはクドリャフカの掘った穴がひとつ残され冷えた陽はふる
●ねむらない樹・読者投稿欄
点滅するライトとはわかりあえない浅い夜の奥から自転車(永井祐選)
ウインドブレーカーのポッケの底をひっかいてる途中なんだから(永井祐選)
ぺたぺたと大きく回り下る坂あんパンのすきまがゆれている(野口あや子選)
この川動いてないような 靴底とスーパーカップを買って帰る(永井祐選)
秋深し、ルーマニアのブラウスの柄を一種類しか知りません(内山晶太選)
地べたへとレンチ的なものの音がしてしばらく静かな長崎県 /永井祐選
NHK短歌ほか
飼いいぬの耳遠くなり遠くなり雲の流れたその跡を聞く /大森静佳選・佳作
尿管の痛みを数字で問う看護師答える俺両方怒っている /寺井龍哉選・佳作
粉っぽいガードレールをまたぐとき草のにおいが固まって濃い /文芸選評/永井祐選