読み終わった時、特殊な涙が出た【母影】

母の影と書いて母影(おもかげ)



ついにやっと、

大好きな大好きな

とても崇拝している尾崎世界観さんの

芥川賞候補にもなった「母影」を読みました…!




母影リンク↓

https://www.amazon.co.jp/母影-おもかげ-尾崎-世界観/dp/4103521422





今回も拙いまとまりのない言葉で

備忘録感覚で感想を書かせてください🥺






(ネタバレ注意)






となりのベッドで、またお母さんが知らないおじさんをマッサージして直してる。私はいつも通り、空いてる方のベッドで宿題の漢字ドリルをやりながら待ってた。

この一文から始まるこの話は


推定小学2年生〜3年生の「私」の目線で進んでく。




まず文章で年齢や学年をイメージさせることの出来る

尾崎さんは本当にすごいと思う。


例えば

本当のおばあちゃんじゃないおばあちゃんは、おばあちゃんとしても汚れてた。学校のぞうきんだって汚れたら捨てて新しくするんだから、もうこのおばあちゃんも捨てちゃえばいいのにって私はいつも思ってた。

シワシワで足腰も悪く

子供の「私」と比べて、随分と衰えたおばあちゃんのことを『捨てちゃえばいいのに』と思うところが

残酷であり、子供らしいとすごく思った。

この後にも何度か色んなおばあちゃんが出てくるけど、その度に『捨てちゃえばいいのに』と思ってる「私」の酷なところが可愛らしく見えた。





だけど「私」は知ろうとしてて、


お母さんの元へマッサージをしてもらいに来るおじさん達はみんなベッドに横になって変な声を出して、

その中にお母さんが飲み込まれそうになってて、

今にもひとつになろうとしてて、

そのお母さんの影を見つめてる「私」



「ある?」何かを探しにくるおじさん

昨日は「ない」と答え

今日は「ある」と答えるお母さん。




「言っていい?」と聞くおじさん、

言っていい?って言ってるのに何も言わないじゃないか。





そのカーテンの奥で、

おじさんとお母さんは恥ずかしいことをしてるって私は分かったって。





これを読んでいる私は大人だから、

お母さんが違法マッサージ店で働いてることも

ある?の意味がなんなのかも

言っていい?の意味がなんなのかも

それは全て分かってしまうけれど、

子供の「私」には分からなくて、

でも分かってしまって。

このことを、


「書けないけど読める漢字」と

表しててすごく納得した。




私は「私」のお母さんへの大好きな気持ち、

守りたい気持ち、疑う気持ち、変だと思う気持ち、


全てが痛いほど分かって、


その母影の向こうで

「私」が思う何倍も恥ずかしいことしてたとしても、


同級生に

『お前、死ねです』って殴られても

杏仁豆腐にアオちゃんのうんこを乗せられても

『変タイマッサージ』って言われても


「私」は耐えてて、


いや、耐えてる、というか、


きっと自分だったら今すぐにでも母に打ち明けたいし

誰かに助けを求めたい


けれど「私」を助けれる唯一の居場所であるお母さんは

知らないおじさんと知らないけど知ってる恥ずかしいことをしてて。


こんなにも孤独なことってあるのかなとか、

時々あるお母さんなりの「私」への気遣いとか、

なんかもう全部苦しくて、



ある時お母さんがお客さんに

無理やりされそうになった時に、

その母影をみた「私」が

お母さんを助けようとして、

お客さんが帰った後にカーテン越しにしがみついて、

その時にお母さんが泣いて。


きっと色んな人から心無いことを言われてきただろうし、自分が母親らしくないと悩んだことも絶対あるだろうし、

その涙で色んな感情が伝わってきて私まで泣いた。



どうしてこの2人にはこんなにも孤独で悲しい試練があるのだろうと、胸が痛くて仕方がなかった。




そして最後にやっと、やっと「私」が

お母さんに言いたかったことを口にして、

それが嬉しくて、苦しくて、

読み終わったのにずっと心に硬い何かが残って、

その余韻のまま

「私」の思いとお母さんの思いを考えていたら、

すごく泣けてきて、涙がすごい出てきちゃって、

なんで読み終わったのに泣いてるのか分からなくて、

こんな本に出会ったのは初めてだった。


きっと大人になったらお母さんの全てが分かるんだろうな。でも今は分からないんだろうな。わかってるけど、分からないんだろうな。


そう思えば思うほど、泣いてしまいました。




買って数時間で読破してしまった母影、

一生忘れない作品になりました。






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