
2024年12月施行改正法によるΔ9-THC新規制の概要と対応法について
本記事では、2024年12月施行の改正法により設けられた、CBD製品等におけるΔ9-THC残留限度値に関する「新規制」「新基準」について、概要や対応法を解説いたします。
1. 2024年12月12日施行のΔ9-THC残留限度値の概要
2024年12月12日より、日本の大麻取締法および麻薬及び向精神薬取締法の一部改正が施行され、製品中に残留するΔ9-THC(デルタ9-テトラヒドロカンナビノール)に残留限度値(規制値)が定められました。
これにより、CBD製品など大麻草由来成分を含む製品であっても、Δ9-THCの含有量が極めて微量で規制値以下であれば、麻薬として扱われずに流通が可能となりました。逆に、残留限度値を超えるΔ9-THCを含有する製品は「麻薬」に該当し、規制対象となりました。従来は明確な基準がなく検査機関が設けた限界値で不検出であれば実質的に流通していましたが、今回の法改正で初めて具体的な数値基準が設けられました。
新たな規制値は製品の形状に応じて、次の3区分に設定されています。各区分で許容されるΔ9-THC量はわずか10ppm、0.1ppm、1ppm以下と非常に厳しい値です。
油脂類・粉末状(常温で液体の植物油、粉末原料、粉末サプリメント等):10 ppm(10 mg/kg、0.001%)
油脂の定義:グリセリンと脂肪酸が結合した化合物およびそれに溶解したカンナビノイドの合計含有率が90%以上であるもの。
粉末の定義:日本薬局方における粗末(850μm)以下の粒度のもの。
水溶液状(清涼飲料水、化粧水など水に溶解・分散した液体):0.1 ppm(0.1 mg/kg、0.00001%)
水溶液の定義:粘度100mPa・s未満かつグリセリンと脂肪酸が結合した化合物の含有率10.0 %未満のもの。
その他(上記以外の固形物、半固形物、高粘度の混合物等全て):1 ppm(1 mg/kg、0.0001%)
2. 改正法による新規制に適した検査機器の利用法
検査機器は高性能なもの一つで万能というわけではなく、目的や規制に沿った使い分けや組み合わせができているか?という点が重要なポイントとなります。
従来の規制値ではHPLC-PDAという検査機器による検査・分析で対応可能でしたが、今回の改正法によるΔ9-THC、及び「みなし麻薬」として指定されたΔ9-THCAの低濃度検査を実施するには、LC-MS/MSの活用が必須となります。LC-MS/MSは極めて高い感度を備えており、今回のようなppmオーダーの微量のTHC検出に適しています。
一方で、植物由来CBD原料における高濃度のCBD含有量を測定する場合には、LC-MS/MSではピークの飽和やピークの重複等により正確な分析が難しくなるため、従来通りHPLC-PDAの活用が向いています。
まとめると、KCAラボの見解としては、今回の規制値におけるカンナビノイド製品の成分分析には、以下のような検査機器の使い分け・組み合わせが最適であると考えています。
LC-MS/MSにより、Δ9-THC及びΔ9-THCAを分析
HPLC-PDAにより、CBDをはじめとした植物由来カンナビノイドの含有量を測定
(必要に応じて)GC-MS/MSにより、指定薬物(合成カンナビノイド)の不検出を確認
3. Δ9-THC 新規制適合を確認するためのポイント
今回の改正法による新規制において、自社製品のΔ9-THC残留値を検査する際は、以下の点を確認して適合性を判断します。
製品区分ごとの規制値を適用:自社製品が油脂・粉末、水溶液、その他のどの区分かを特定し、該当する残留限度値(規制値)を適用します。分類に迷う場合、以下の厚労省のウェブサイトを参照してください。
限界値を確認:分析法の検出限界(LOD)や定量限界(LOQ)が十分に低いか確認します。特に「不検出(ND)」と報告された場合、その検査法の検出限界が規制値以下であるかをチェックします。
検査機器を確認: Δ9-THC及びΔ9-THCAに関して低濃度検査をするためにLC-MS/MSを活用しているか?を確認します。HPLC-PDAのみで、Δ9-THC及びΔ9-THCA等を検査している例も見受けられますが、(例外はあるものの)信頼できる検査結果となっていない可能性が高いです。
信頼できる検査機関の利用:ISO/IEC 17025を取得しているか?等の各種ポイントを満たした信頼できる分析機関による検査結果であるかどうかを確認します。検査機関パートナーの選び方に関する詳細については、こちらの記事をご参照ください。
4. COA(成分分析書)チェックポイント
検査後に分析機関から発行されるCOA(成分分析書)も、発行体によって様々なフォーマットがあります。日本において、特にカンナビノイド製品の輸入に際してCOAを活用する際、Δ9-THC 新規制適合の有無に加えて、以下ポイントが網羅されているかどうか確認することが必要です。以下、厚労省「CBDオイル等のCBD関連製品の輸入を検討されている方へ(2024年12月版)」より参照。
カンナビノイド製品における主成分や含有成分の分析結果を含む成分一覧
製品の形状の分類
1:油脂
2:粉末
3:水溶液
4:その他(その他に該当する場合には、具体的な形状を書いてください。例:グミ、クリーム等)
分析日又は成分分析書作成日
ロット(バッチ)番号など、輸入しようとする CBD 関連製品が特定できる番号
分析を行った施設の責任者の署名及び肩書き(役職名)
分析方法(例:LC-MS/MS、LC-QTOF-MS 等)
定量限界値(LOQ:Limit of Quantification)及び検出限界値(LOD:Limit of Detection)
5. まとめ
本記事では、2024年12月に施行された改正法によるカンナビノイド製品におけるΔ9-THC 新規制の概要と各種チェックポイントについて解説しました。ぜひ、本記事で紹介した検査機器の使い分け、新規制適合確認ポイント、COAチェックポイントをそれぞれ確認し、貴社製品の日本国内展開戦略にお役立てください。
KCAラボでは、改正法による新規制に対応したΔ9-THC検査も承っております。米国発のヘンプ・カンナビノイド専門の第三者検査機関として、ISO/IEC 17025認定、厚生労働省 指定外国検査機関の登録など、信頼性の高い検査体制を構築し、最新の検査機器と最先端の専門知識を備えたメンバーが事業者の皆様の様々なニーズにお応えします。
以下ご都合の良いチャネルから、是非お気軽にご相談ご連絡ください。

Website : https://kcalabs.co.jp
電話番号: 050-5806-3150
メールアドレス: japan@kcalabs.com
LINE公式アカウント: https://lin.ee/ZWQiA68
Xアカウント: https://twitter.com/kca_japan