佐藤さんちの塩
「おやつにしようか」
角張った餅をポリ袋から取り出し、アルミホイルを敷いてトースターの扉を閉めた。
「焦げないように見張ってて」
「ぼくは"看守"じゃないんだけど」
焼きつくさないためのタイマーじゃないの?彼はそう言いたげな表情で私を一瞥し、餅につける砂糖醤油を作りはじめた。
あまじょっぱいものが好きなひとは多い。彼は極端な性格の持ち主だから、甘いものは甘いもの、しょっぱいものはしょっぱいものと区別しているようだ。もし甘い党としょっぱい党が手を組むことになっても、意固地な彼はその手を払いのけるだろう。
「醤油に対してのぼーとくだね」
「私はやっぱり欲しくなるのよね」
「は?ぼくがいるのに?」
「あら、焼きもち?」
「ただの餅だよ。あ、焦げた」
これがぼくの気持ちですねー、なんてイタズラっ子のように舌を出し、焦げた餅を皿に移した。
素直じゃないひとは可愛い。あなただから、もっと可愛い。あなたが喜ばないから言わないけれど。
「うん、おいしい。今年もよろしくね」
「ん。今年もよろしく、おかーさん」
読んでいただき、いつもありがとうございます。とても嬉しいです!