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3人のレンガ職人の話に見る「志が育っていくプロセス」
ご存じですか? 3人のレンガ職人の話。私はこの話が好きで、研修や講演でよく引用します。
旅人が、ある町外れを歩いていると、一人の男が難しい顔をしてレンガを積んでいた。
旅人はその男のそばに立ち止まって尋ねた。
「ここでいったい何をしているのですか?」
「何って、レンガ積みに決まっているだろ。」
男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。
もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。
さきほどの男のようにつらそうには見えなかった
「ここでいったい何をしているのですか?」
「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。」
「大変ですね」
「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。」
また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいた。
「ここでいったい何をしているのですか?」
「俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」
「大変ですね」
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。
やはり、志を高く持って仕事に打ち込むと自分も周囲も活き活きとします。
この話の捉え方は、人によってさまざまです。ただ多くの場合、世の中には3種類の人間がいる、という捉え方だと思います。「やっぱり、2・6・2だよね」と分かったようなことを言ったりします。
私は、すこし違う捉え方をしています。この話は、志が育っていくプロセスを表しているのだと思うのです。つまり、3人目の男になるためのヒントが隠されています。
私たちは、最初から3人目の男のようにはなれません。最初は目の前の作業をやるだけです。そして、できることが増え、誰かの役に立てるようになります。そこで、少しステージが上がるのです。仕事の持つ意味が変わってきます。自分だけではなく、誰かのための仕事に変わっていくのです。
そして、仕事以外のライフイベントも起こります。例えば、家族ができます。すると、2人目の男のように、「家族を養うため」という目的が見出されます。だからますます頑張ります。
…で、ある時子供に聞かれるわけです。「お父さんは何のために仕事をしているの?」…と。でも「お前たちを養うためだよ」だと、ちょっとカッコつかない。
そこで考えるわけです。一体全体、俺は何のために働いているんだろう、と。そんな中、仕事を通じて多くの人からねぎらいや感謝の言葉をかけられます。それに応えるように仕事をすることで「そうだ、俺はみんなが喜ぶ大聖堂を作っているんだ」と思い至るのではないかと思うのです。
経営者は、事業の目的や大義を示さなくてはなりません。そして、示しているのに「社員が分かってくれない」と嘆いてもはじまりません。繰り返し語るしかないのです。また、社員が仕事ができるように能力を高めるサポートも必要です。仕事ができないうちは、仕事の喜びは得られません。その状況で、目的を語っても響かないのです。
そして何よりも、自らが志を高く持ち、世の役に立とうと努力し続け、お客様が喜ぶことを徹底して行う姿を示していくことが大切です。