いつの時代でも「正解」に終わりはない
9/19(土)の日経新聞のオピニオン覧に『リバースメンタリング』という言葉が出てきました。通常、メンター制度は目上の人がメンターになるというものですが、その逆になっているというものです。経営幹部に対して、若手社員がメンター役になるわけですね。例えば、ITの知識やリテラシーは若手の方が高い。ならば、教えてもらいましょうということです。もちろん、これはITの知識に限りません。また、教える、教えられるというよりは、ランクを逆転させることでものが言いやすくなって、社内の風通しを良くすることが狙いのようです。
面白いことに(?)同じ日の日経新聞「私の履歴書」に役員と営業担当者のペア営業の話がでていました。アートコーポレーション名誉会長、寺田千代乃さんの連載です。
役員らと営業担当者とのペア営業には他にも思わぬ収穫があった。週末の土日を1カ月間、計8日一緒に回ることで様々な話ができ、立場を超えて距離が縮まった。組織が大きくなると、部署や年齢が違う者同士が話す機会はなかなかない。その後、研修で本社に来た社員が土産持参で役員にあいさつに来たり、頑張って成果を挙げた社員に役員がねぎらいの電話をかけるといった関係が生まれた。
会社が成長するなかで、幹部が現場のことが分からなくなってしまった。そのことでトラブルがあり、現場回帰のために行った施策が「ペア営業」でした。それが結果として、立場や部署を超えた関係性が生まれることにもなったという話です。これは、おそらく、幹部が原点に立ち返ろうと謙虚に学ぶ姿勢があったことが土台になっているように思います。通常の上司・部下の関係での同行営業は、上司側が教える、指導する前提になります。部下側の営業スキルは高まりますが、かえって距離感は広がってしまうかもしれません。
アートコーポレーションの取組みがうまくいったのは、社内の仲間から教えてもらうのではなく、お客様から共に学ぶ場を設定したことにあるように思います。
以前、お客様社内のリーダーを対象にインタビュー調査をしていて、「今の若い人たちは、自分たちのころと違って失敗できなくなった。苦労できなくなってかわいそうだ」という声がありました。会社が成熟してくると、社内に「正解」ができてしまう。だから、新人や若い人はまずはその正解を覚えることが求められる。自分なりに考えて実行し、そこから学ぶという体験ができないのがかわいそうだ、というわけです。
それを受けて、色々と考えさせるような施策を打ったりします。問題解決の研修を行ったり、その流れで職場課題の解決案を出させたりします。また、上司側にもそのフォローを求めます。部下の話をよく聞いて、考えさせるような質問をしてほしい、というわけです。 これはこれで、大切なことです。考える力や実行する力が身につきます。
しかし、もう一歩踏み込んで考えると、社内の「正解」がアップデートされていないことが問題であるように思います。インタビューでは、「挑戦しない若い人が増えた」という声もありました。これは良く考えると、若い人だけの問題ではありません。いまある「正解」にリーダー自体が安住してしまっていることが問題なのです。
「正解のない時代になった」と言われます。これは、テクノロジーが進化して、複雑なことも処理できるようになってきた結果、以前より、正解がない時代になったと錯覚しているだけです。いつの時代でも正解は作るもの、作り変えるものでした。謙虚に学ぶための工夫が、成功のカギを握るように思います。