【読書メモ】ワークマン式「しない経営」―4000億円の空白市場を切り拓いた秘密
ワークマンもこのコロナ禍で、結果がています。そんなワークマンの経営について、専務取締役である土屋哲雄さんが書いたのが、『ワークマン式「しない経営」』です。
印象に残ったことをひとつあげるとすれば
この本の中で印象に残ったのは下記の文章です。
私が目指したのは、全員参加型のデータ活用経営。イメージしたのはこんな会話があたりまえになる会社だ。
一般社員:「社長はAとおっしゃいますが、データを見る限りBですよ」
社 長:「そうか。じゃあBだな」
さらりと書いてありますが、ワークマンの創業は、1980年です。これほどの社歴がある会社で実現するのは簡単ではありません。上記に続いて以下のように書かれています。
行動原則にデータを置く会社。行動原則とは、社員が判断に迷ったときに立ち返るもの。全社的な判断基準がデータに変わるのだから、大げさではなく「企業風土の改革」と言えるだろう。
「エクセル経営」が注目されているワークマンですが、データを活用にするようになったから、さらに成長を遂げたという側面もあります。ただ、データを経営に導入することのハード面のハードルはずいぶん低くなっています。大切なのは、活用することです。実際に社員の行動になって表れない限り意味がないのです。とはいえ、これまでに根づいてきた行動を変えるのですから簡単ではありません。だから、この取組みは「企業風土の改革」というわけなのですね。
そこからあれこれ考えたこと
先日、ご訪問した会社様では、このコロナ禍で売上がやはり落ちているとのことでした。こちらも小売りのお客様です。社長様は、細かいところまでよく考える方です。月次の売上データを見て、分析を行っています。その内容をさらに詳しくお聴きすると、売上が好調だった月もありました。緊急事態宣言が解除された際の反動や、給付金の効果によるものです。そうした分析はできていますが、この後、どのように対応していくかというアクションが不十分です。
また、人口動態データに着目し、「次は団塊ジュニア世代の○○需要を…」といった仮説を持っています。しかし、よく考えるとこの話は1年半くらい前にも聴いたような気がします。あれこれ考えてはいるものの、実行に移されていないのです。
データに基づいて分析するのは大切です。それ以上に、次のアクションを決めて実行することが大切です。そうしない限り仮説は検証されません。また、やってみるから分かることの方がはるかに大きいのです。
全員参加型の仕掛けが変化に適応する会社をつくる
もう一つ大切なことは「全員参加型」であることです。いくらデータを示しても人は動きません。自ら考えて、やるべきことを自分で発見しないと「やろう」と思わないのです。ワークマンが、自前でエクセルを駆使してうまくいっているのは、自分で手を動かして考える仕掛けになっているからです。
長期の構想やビジョン、方針を示すことは、経営者が一番に大切すべきことです。一方で、それは自分以外の手で実行されないと結果が出ません。自分で手を動かして考える仕掛けを作ることで、変化に適応できる組織となり、その差がコロナ禍でより際立っているということだと思います。