「楽楽精算」のラクスが、「勘定奉行」のオービックに学ぶべきこと
日経新聞の記事。ラクスの話なのですが、オービックのすごさが改めて際立っています。
記事は、ラクスの成長が成熟期に入りつつあるというもの。伸びが鈍化しているということで、衰退しているということではありません。ただ、ラクスが手本にしているというオービックと比べてみると…
この開きはすごいですね。ラクスが…というよりオービックがすごい。どうやったらこのように労働生産性が高まるのでしょうか。
記事によると…
さらりと書かれていますが、これは大きな特徴ですね。もちろん、ラスクも手を打とうとしています。
稼いだマネーを人への投資に振り向けていこうというわけです。これ自体は問題ないですが、オービックと比べると短期的な施策となります。
また、既存の営業のノウハウの展開ということで、スキルレベルの話です。オービックの方は「顧客への提案や活発なコミュニケーション」とあります。前者と後者は似て非なる力です。オービックは、自社製品をいかに売るかではなく、いかにしてお客さまの役に立とうとするのか、という根本的な考え方を育てようとしているように見えます。
短期的にはスキルが必要なのは間違いありません。また、「楽楽精算」といったソリューションの強みを活かす意図も分かります。ただ、ある程度のところまで行けば成熟します。特にIT業界はいつもこの陳腐化との戦いです。ラクスも、成熟しつつあった市場に新しいプロダクトで入ってきました。
…となると、そのプロダクトをお客さまに提供していくことを通じて、地力ともいえる組織能力を高めることがカギを握ります。こちらの記事でもそのあたりが解説されています。
オービックが、中途採用をしないのは「社風」を大切にしているからとあります。冒頭の日経新聞の記事にあった「顧客への提案や活発なコミュニケーションができる」というのも社風に含まれるのでしょう。
こうした「社風」のような見えない資本が企業の成長には欠かせません。
最近、人的資本経営という言葉が使われますが、対比となる言葉は人的資源です。「資源」は使えば減るもの、「資本」は活用次第で成果につながり、かつさらに育っていくものです。
再び記事から引用です。
「特需対応で採った中途社員」という時点で人を「資源」と捉えていることが伺えます。それによってトップラインはあがったけど、組織能力は育たなかった、あるいは、これから育てる必要が生じたというところでしょう。
市場が成熟しただけではなく、短期的な結果を求めたがために成長を鈍化させてしまったのかもしれません。とはいえ、このあたりの判断は、難しいところです。成長期にあったラクスとすればその機会をさらに獲りに行ったわけです。それに、そこから人が育つということも十分あり得ます。
ただ、いまの製品を売るためのスキルやノウハウを求めるのか、それとも新たな機会を通じてお客さまの役に立とうとするマインドを育てようとしているのかでは、結果が大きく違ってきます。
ラクスがオービックをお手本にしているのだとしたら、見習うべきはビジネスモデルではなく、お客さまに対する考え方やその浸透のさせ方ではないでしょうか。