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「楽楽精算」のラクスが、「勘定奉行」のオービックに学ぶべきこと

日経新聞の記事。ラクスの話なのですが、オービックのすごさが改めて際立っています。

#日経COMEMO #NIKKEI

記事は、ラクスの成長が成熟期に入りつつあるというもの。伸びが鈍化しているということで、衰退しているということではありません。ただ、ラクスが手本にしているというオービックと比べてみると…

この開きはすごいですね。ラクスが…というよりオービックがすごい。どうやったらこのように労働生産性が高まるのでしょうか。

記事によると…

オービックの労働生産性は24年3月期に4927万円と上昇傾向が続く。採用は新卒のみで顧客への提案や活発なコミュニケーションができる人材を長期目線で育てて労働生産性を高めてきた。ラクスは改善傾向とはいえ976万円と1000万円に届かない。

さらりと書かれていますが、これは大きな特徴ですね。もちろん、ラスクも手を打とうとしています。

ラクスも手をこまぬいているわけではない。現場のリーダー候補ら優秀な人材を集め、営業ノウハウや商品・顧客の特性を他の社員に教える専門組織を昨春立ち上げ、営業効率を高める。既存客に販売管理サービス「楽楽販売」など他の商品を併売する営業に力を入れる。

稼いだマネーを人への投資に振り向けていこうというわけです。これ自体は問題ないですが、オービックと比べると短期的な施策となります。

また、既存の営業のノウハウの展開ということで、スキルレベルの話です。オービックの方は「顧客への提案や活発なコミュニケーション」とあります。前者と後者は似て非なる力です。オービックは、自社製品をいかに売るかではなく、いかにしてお客さまの役に立とうとするのか、という根本的な考え方を育てようとしているように見えます。

短期的にはスキルが必要なのは間違いありません。また、「楽楽精算」といったソリューションの強みを活かす意図も分かります。ただ、ある程度のところまで行けば成熟します。特にIT業界はいつもこの陳腐化との戦いです。ラクスも、成熟しつつあった市場に新しいプロダクトで入ってきました。

…となると、そのプロダクトをお客さまに提供していくことを通じて、地力ともいえる組織能力を高めることがカギを握ります。こちらの記事でもそのあたりが解説されています。

オービックが、中途採用をしないのは「社風」を大切にしているからとあります。冒頭の日経新聞の記事にあった「顧客への提案や活発なコミュニケーションができる」というのも社風に含まれるのでしょう。

こうした「社風」のような見えない資本が企業の成長には欠かせません。
最近、人的資本経営という言葉が使われますが、対比となる言葉は人的資源です。「資源」は使えば減るもの、「資本」は活用次第で成果につながり、かつさらに育っていくものです。

再び記事から引用です。

労働生産性は営業効率を示す「従業員1人あたり売上高」と売上高に対する付加価値の割合を示す「売上高付加価値率」に分解できる。従業員1人あたり売上高はオービックの5296万円に対して、ラクスは1499万円にとどまる。特需対応で採った中途社員に対して教育体制の整備が追いつかず22年3月期は773万円に下げていた。その後、営業効率の改善を図っているもののオービックとの差は大きい。

「特需対応で採った中途社員」という時点で人を「資源」と捉えていることが伺えます。それによってトップラインはあがったけど、組織能力は育たなかった、あるいは、これから育てる必要が生じたというところでしょう。

市場が成熟しただけではなく、短期的な結果を求めたがために成長を鈍化させてしまったのかもしれません。とはいえ、このあたりの判断は、難しいところです。成長期にあったラクスとすればその機会をさらに獲りに行ったわけです。それに、そこから人が育つということも十分あり得ます。

ただ、いまの製品を売るためのスキルやノウハウを求めるのか、それとも新たな機会を通じてお客さまの役に立とうとするマインドを育てようとしているのかでは、結果が大きく違ってきます。

ラクスがオービックをお手本にしているのだとしたら、見習うべきはビジネスモデルではなく、お客さまに対する考え方やその浸透のさせ方ではないでしょうか。

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