意志を持って未来を洞察する
経営計画を考える際によくこの5つの質問を軸にします。
私たちの「ミッション」は何か
私たちの「お客様」は誰か
お客様が求める「価値」は何か
私たちの「成果」は何か
私たちの「計画」は何か
これはドラッカーによるものです。
ドラッカーの5つの質問が意味すること
経営者に求められるのは、「意志」を描き、示すことです。
その意志は、顧客の創造につながります。つまり、お客様に喜んでもらうことが企業の存在意義です。
それを目的として自社独自の強みで創意工夫をして「成果」を創出します。この成果は、お客様が望む価値を満たすことです。
そして、実行に移すための計画を立てます。計画がなくても実行はできますが、検証ができません。結果オーライでは続かないのです。
志を持つことで立ち現れるジレンマ
何よりも大切なのは、高い志を持つことです。
ただし、独りよがりでは成功しません。そのためには、世の中をよく知る必要があります。このため、経営戦略を立てる際には自社を取り巻く外部環境の分析が必要になります。
外部環境とは「自社がコントロールできないこと」がその定義です。そして、その情報を幅広く集めることが大切です。
なぜでしょうか?
「幅広く調べた方がチャンスが広がるから」でしょうか。確かにその通りですが、これだけだと不十分です。
「私たち人間にはバイアスがあるから」だと私は捉えています。
私たちは、自分たちの見たいものしか見ません。こうありたいという「意志」を持つがゆえに選択を誤るというジレンマがあります。
また、反証することが苦手です。自社の仮説に都合の良い情報を探そうとしてしまいます。これもまた「意志」や「思い」や「感情」があるからです。
経営会議をファシリテーションしていて悩ましいのは、「ちょっとロジックがあわない」「その話だと外部環境というより、内部環境の話」「どうも情緒的。定量的にしないと」などなど、お客様のアウトプットにつっこみを入れたくなることです。それが、なぜ悩ましいのか。それは、アウトプットが大人しくなってしまうからです。
ファシリテーションする上では、意志を持っているからこその裏返しなのか、単に見当違いになっているのかを見極めることが大切だといつも思います。
予測ではなく洞察
世の中は常に変わっていきます。同じ状態で留まっていることはあり得ません。だから確実に予測をしたくなります。もちろん、これも大切です。先が見えないまま歩いていてはケガをしてしまいます。
一方、それ以上に大切なのは、未来を洞察することです。洞察とは、意味を見出すことです。予測は、機械がしてくれます。もっといえば、機械の方が得意です。
私たち人間が、力を発揮すべきなのは洞察です。この時「意志」「思い」「感情」がその原動力となります。これらに蓋をせずに、でも、夢物語で終わらないようにしていく必要があります。
唯一無二の正解はありません。幅広い情報を素直に受け止めて、想定されるストーリーを描き、正解ではなく、「納得解」を見出す姿勢が大切です。
未来の機会を捉えるために
納得解を得るためにはどうしたら良いでしょうか。
行き当たりばったりに進めてもうまくいきません。検討の進め方をデザインすることが大切です。
状況によってアレンジをしますが、以下のような進め方をします。
①大前提として… 普段からの情報収集、蓄積
・新聞、本を読む
・社外の人と話をする
・お客様の声を聴く、お客様の立場に立つ
・ライバルを知る
②自社のミッション・ビジョン・ウェイに立ち返る
③自社の歴史を振返り、具体的な成果から自社の強みを見出す
④これからの外部環境で起こりうる変化を時系列で洗い出す
⑤その外部環境の変化が自社にとってどういう意味を持つのか議論し、言語化する
ドラッカーの質問で見たように「意志を持って、誰かに喜んでもらう事業をデザインし、実行して検証する」のが経営です。そのための実践的な進め方が上記の5つの流れとなります。
経営計画を検討する際の参考にしていただければ幸いです。