第163話「 奇跡だよ」(解説)
高校生の男子が語り手のお話ね。
彼は友だちと雑談しているわ。
話題は、昨日あった交通事故のこと。
クラスメイトのフミヤくんが、自転車で車にぶつかる大事故を起こしちゃったんだって。
だけど、結果は無傷で済んだみたい。
「奇跡だよ」って語り手は喜んでいるわ。
友だちが無事で、何よりだったわねー。
……って思ったけれど、真実はそうじゃないみたい。
だって、お話の最後、語り手が言っているもの。
「結果的に無傷だったから許すけどさー。
オレの自転車借りて事故るんじゃねーよ」
つまり、奇跡的に無傷で済んだのは、
『フミヤくん』じゃなくて、
彼が乗っていた『自転車』のことだったのね……。
神の加護を受けられるような、ボランティア活動をしていたのも、
語り手だったんだわ。
フミヤくんは功徳も積まずに、ノーブレーキで坂をかけ下りて、
トラックとぶつかった。
目撃者曰く、彼は何メートルも空を舞ってしまったみたい。
このお話に書かれた内容だけでは、
フミヤくんの怪我の深刻さは分からないわ。
でも、自転車と同じように彼も無傷で済んだ、なんてことはなさそうね。
だってそうでしょ?
そんなに何度も起きることを、『奇跡』だなんて呼ばない筈だもの。
あとがき
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