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朝の霜、地面。新しいという言葉がそれを想起させる。新しく生えてきた草。冬の寒さを越えた。
 
翅を動かすそのエネルギーと風によって。涼し気。活動を始める。朝を終わらせる。雲雀によって時間が進む。
 
空に向いている部品。寒いとか、冷たいとか、濡れてしまうとか、雪で重たいとか。屋根が文句を言うとしたらそれら。しかしその冬が終わって、春は苦しまない。
 
屋根も合唱も雲雀も皆空でつながっている。屋根が満足のうちに押し黙っているのに対し、合唱の声が風景を彩る。空を満たす。
 
相対的な静けさ。合唱の声は空に吸い込まれていくので、平行の位置、地面の別の位置にいるところには届かない。だからしずか。
 
上昇、唱が彩る。良いことづくめなかんじ。音もなく飛んでいく雲雀。速すぎてお供しない。
 
朝で、春で、始まりに満ちている。昔の希望を今も持ち続けているのか。春に感化されて語りだす。
 
文法が違う気がするが無視する。また巡ってきた。私の外から空が恵んでくれる。
 
空の支配。空が与えるがまま。雲雀の上昇の動きに対して、私はただ地面にいる。雲雀、土草は関係しているが私が孤立している。
 
暗い影が差す。隠されているもの。藪の向こう側に隠されているのは銀色で濃い青色とはまったく違うもの。
 
猫は雲雀に続く生きもの。それは何をもたらすのか。馬鹿にはちょうどいいか。猫好き特有の。
 
鈴はおそらく銀色。銀色が何か希望や青色とは相対するものとしてある。
 
春の日の歌
特になし。二つ、流れと恥ずかしさ。流れとは何の流れか。時の流れ。
 
空にはもしかしたら文明があるかもしれない。夏の大きい入道雲とかを見ると、そんな妄想が働くのもうなづける。空で流れるものと言えばやはり雲。淡いし。恥ずかしさとは関係ないが。
 
落ち着きがない。空を流れて千切れていく雲のように、心の中でも恥ずかしさが千切れては合流して、流れていく。
 
タバコの煙は雲に似ている。雲、タバコ、恥ずかしさ、この三つがもやもやしたものという性質でつながっている。流れ、散らかり、淡く、迷う。並列されている。
 
いや、もやもやではなくそれは「流れ」すべて流れていくもの。流れの裏側。川だとすれば川の流れで中にどんな魚がいるのかわからないような状態か。
 
山が形成されるのも空気の流れ、浸食によってである。それの行き着く場所としてのふもと。迷いがいつかは執着するところ。
 
見えない顔、流れが隠している愁い、自然と人間の心のシンクロ。流れとは動きであり、隠しているのは不動の何か。
 
喉は上がってくるものと下がっていくものの堰なのかもしれない。そこを通り越してしまえばあとは理解。うまく飲み込めないという比喩もあるし。
 
流れがまた強まる。ふくよかという言葉が、なだらかなふもとを持つ大きな山を想起させる。
 
夢はしかし流れるものではなく、これも上昇するもの。空の支配を通り越して、自由な境地へ至るもの。それも終着点がないが。
 
行き着く場所。平面のうごきである流れがふもとにいくだろうか。下がるとしたら喉を通り越すだろうか。空の上に行くとしたら、しかし無くなってしまうのでは。
 
食べ物を保存しておくところ。それは流れとは違って、秘匿しておくもの、動かしてはいけないもの。
 
それらと水車といういつまでも回り続ける、水の流れによって動き続けるものが同居する彼方、野原の果て。境目、
 
結局そこに行っても状況はあまり変わらないかもしれない。そこを通り越してずっと流れ続けるのかもしれない。特に水車があるのがそう思わせる。
 
夏の夜
かくされている。疲れを認識しているのはその隠している主体だけ。胸は身体の中心か。
 
いともたやすくその強固な胸、そしてそこに隠された疲れを通る。桜色の人影のようなもの。暗い胸の内、おそらく黒の中に桜の花びらが堕ちるように通る女。
 
桜の花びらを動かすものはやはり風である。風がなければただ下に落ちるだけで、それを通る、とは表さないし、胸は縦に張っているから。
 
夜は暗い胸の内と関係。暗いもの。そして疲れをもたらす労働の発生源。人の営みの現場である。
 
疲れというのはどこにも行くことはないが、恨みは矢印がある。対象がある。しかしその矢印の向かいところもわからないほどの、水田の底にたまる泥のように底なし。
 
巡ると通るが似ている。盆地が一段下がったところ。胸の内で水田の滓で。
 
胸と対極にある部位が足であるが、そこに何かを隠すことはできない。その女が羽田氏だったということか。胸の内に溜まるのが砂。
 
瞳が何なのか。部位の流れではあるが、脚と胸の中心にあるわけではない。
 
暗いものの代表か。水田の滓も夜空も暗い、上下黒いものに囲われている。
 
また脚では到達できない場所でもある。親の手を離れて遠くまで来てしまった。親がいない。指導者がいない、神がいないという共通主題。
 
花瓜が結局いまだにわからないが、最初は桜色の女であった。開いた瞳でよく観察してみるとそれは花瓜だった、ということか。変化のきっかけは何か。
 
銅羅の肩さと着物の柔らかない感じ。開始の合図。
 
靄をほめる余裕がある。暑いのは夏だから当然として、ゴングがよくわからない。
 
幼獣の歌
とにかく暗い。たよりない。孤独。臭い。寒い。集団の中に独り。
 
壺の中に囲われている。安全。幼い、一人ではまだ行動できない。守られている。草は幼さを導くための物。暗さが継続。壺の中。
 
壺の陶器の感じと火打石の硬い感じ。二つで一つ。暗い壺の中で、夜の中で明るくしようと自主的に行動した。自分の出来ることをした。
 
やはり冬か。火打石の暖かい空気とそれまであった壺の中の冷たい空気が混ざる。風がなるのは外の世界の怖さ。
 
結局一時的な明るさでしかない。優勢なのは冷たさのほうで、一瞬火打石で暖かくなっただけ。風が吹き飛ばした。再び暗がりが来て、暗い中でも見ようとしない。目を凝らさない。
 
カスタネットと火打石の類似。二つとも二つで一つの物。音が鳴るもの。月光は明るさ。火打石から出る火花の明るさ。
 
自分ではもう鳴らすつもりもない火打石。星が輝くことはない。二度目はない。可能性を抱えている。
 
壺に引きこもって何もしようとしない。一度失敗して次の挑戦をしようとしないことを自分で冒涜している。しかし神聖なものをけなす意味とは離れている。
 
らしい、壺の中から推測するだけ。それまでの詩行をすべてひっくるめて「思い出」という言葉の壺に入れる。ひと塊の幼獣。壺と一緒に。
 
風が幼獣の心の中では吹いている。それが雨を乾かしもするが、それが壺の外の風と同じ川知らない。波、心の揺れ。
 
誰にも触れられることがない。神聖になっていく幼獣。しかし幼獣自らは冒涜をしている。自信の神聖さをけなしている。思い出を大切にし過ぎている。
 
その意味で幼獣は奴隷でもあり王女でもある。正反対の要素を一挙に抱えているが、しかし壺の中である。
 
卵の殻がこれまた壺と似ている。外からやって来た貴公子。外の危ない世界からやって来た王子様。白雪姫みたいな、ラプンツェルみたいな。
 
外の世界の怖いもの一覧。白血球がよくわからないがこれも壺とか殻とかと似たものか。何かを抱えているもの。隠しているもの。
 
子どもの肉体という殻の中にはまた別の殻があって、それの代表としての白血球。それらが幼獣に三人称を与えてしまう。壺にこもっている自分を俯瞰してしまう。
 
思い出を一つにした心の中。塊がひとりでに熱を帯びていく、何かの前兆か。外へ飛び出す。
 
すべては昔の出来事。独り言はくすぶりがもたらした幼獣のもの。恐怖や冒涜などあらゆるものが合わさって発せられた独り言。
 
この小児
悪い妖精。空にはそんな危険なものが活きている。群れでいる。下を除いている。
 
空とは正反対に位置する一人の子供、赤ん坊ほどかもしれない。ただ二つが並んでいるだけなのに危険な香りがする。妖精たちが狙っている。
 
その雲はコボルト達が生み出したもの。子供に反応してか。大勢で息巻いて、往来のしるし、後に残すもの。
 
それが怖くて泣く、当然のこと。しかし黒い雲から雨が降る前に子供の眼から涙がでる。銀の駅は本来雨であったはずのもの。移動。
 
子供が泣くということは泣き声がするということで、大きな声でワイングラスを割るように、その子供の声で地球も割れてしまう。しかしこれはコボルトの目線か。地球を破壊しようとしている。
 
どこかに行ってしまえばいい。帰ってくることはない。二つ、そう言えば両親がいるはず。地球は子供の両親か。
 
洋行するのが父親の方だとしたら、もう片方は母親。そこへ腰かけるというのは。コボルトが見せようとしているのはその子供の両親の過去。親がどうしているのか。
 
腰かけて下を見ようとも気にしようともせずに青空を見る。今は黒い雲で覆われている空。それを眺めよう。
 
浜の空は陸の空よりも大きく見える。花崗は地球が割れたときにはもしかしたら見えるかもしれない。
 
これは子供が歩んでいく風景を表している。無事に成長した子供、あれだけ鳴いて居た子供が自立して、地球の色んな所を旅して最後には海の果てへ行き着いた。
 
冬の日の記憶
心優しい子供っぽい演出。小さい動物に関心を持つのはそうと決まっている。雀を手で、子供の小さい手で囲っている。すべてが小さい。
 
雀に気を配っている場合ではなかった。昼から夜というあまりにも短い時間。瞬間にしかし凝縮されている。生と死が。
 
すぐに死んだというのがより雀を手に取っていたその瞬間を際立たせる。朝は残酷にも来る。ひとりの子供が死んだことなど関係なしに。そして朝には雀もなくだろう。霜が弔っているのか。
 
伝達。ひとりの人間の死を知らしめようと、家族だけのものにはしないように。手に包んでおくのではなく、伝書鳩、鳥のように伝える。
 
母親の守護も虚しく。母親の愛が死んだ子供に行っていて、その子供が雀を愛していた。雀に凝縮されている。
 
父親は不在である。兄は父親に電報を打った。遠いところにいる。子供の死を知らない。無知の父。
 
雀、愛が凝縮されている雀はもしかしたら遠くへ飛んでいった。行き先もわからない航海に出ている父のところへ、たどり着くのか。
 
誰も立ち止まらない場所。通り過ぎていく場所。北風が子供のいた事実まで吹き飛ばす、白くしてしまう。しかしその風は雀が飛ぶのを助けているかもしれない。
 
井戸から水をくみ上げる。新しい生活が始まっている。
 
父親はどのように返事をするだろうか。しかし子供が二人いるということで、悲しみはそこまで深くないのだろうか。どれくらいの時差があるのだろうか。雀が往来している。父親の愛。
 
霜が母親の涙であり、冷たさであり、北風を呼び込んでいるもので、寒さが厳しくなっていく。温めようとしていた子供の愛。
 
子どもの死よりも仕事を優先しなければならない不幸。冷たさ。空へ吸い込まれた子供の命が霜になって降り返ってきている。
 
母親の安否は雀の行方と同じように不明。どこかへ飛んで行ってしまったのか。はたまた生き続けているのか。
 
兄は生活を続けている。父がいなくても叱る人、指導者がいる。母親の安否がわからなくても。弟の代わり。父親の代わり。母親の

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